研究課題/領域番号 |
23K01619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
土橋 力也 立命館大学, 経営学部, 教授 (00588923)
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研究分担者 |
富樫 佳織 京都精華大学, メディア表現学部, 准教授 (20802630)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | デジタルプラットフォーム / 既存企業の戦略 / マルチホーミング / シングルホーミング / デジタルイノベーション / 既存企業 / プラットフォーム |
研究開始時の研究の概要 |
情報技術の進展によりデジタル・プラットフォーム(以下、デジタルPF)が急成長し、既存の非デジタル企業との競争が激しくなっている。先行研究では「デジタルPFがどのようなビジネスモデルを持ち、なぜ競争優位を獲得しているのか」を中心的に分析してきた。その一方で「デジタルPFの誕生に対して、従来型の既存企業はどのように対応するべきか」については十分に分析されてこなかった。 そこで本研究は、既存企業の「第3の戦略」の可能性を示し、デジタルPFに対する既存企業の対抗戦略を明らかにする。「第3の戦略」とは、新規デジタルPFに所属しながら、自らデジタルPFを構築するという新しい戦略である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、既存企業のデジタルPFに対する既存企業の対抗戦略を明らかにすることである。この目的に基づいて、本年度では垂直統合型の既存企業である放送局が新たなデジタルPFに対してどのような対抗戦略をとっているのかを調査した。垂直統合型の既存企業の場合、新規デジタル流通PFに対応するかは難しくなる。テレビ局や新聞社など、新規デジタル流通PFの影響を受けている業界の既存企業は、生産と流通の両方を行う垂直統合型の既存企業である。対応が困難となる理由は、下流の部分(放送)では新規デジタル流通PFと競争しているにも関わらず、上流の部分(コンテンツプロバイダー)では協調しているからである。 関係者に対するインタビューや、有価証券報告書などの二次資料、在京キー局で放送されたドラマ番組のリストなどのデータもとに、2001年から2022年までの約20年間における放送業界の事例を分析した。その結果、デジタル流通PFの参入に対して放送局が独自の動画配信PFを構築し、コンテンツの囲い込みやマルチホーミングを通じて対応していることを明らかにした。本研究の理論的貢献は、垂直統合型の既存企業が、デジタル流通PFという新たなビジネスモデルに対応することの難しさを明らかにしたことである。対応が困難である理由は、既存企業がジレンマを抱えているからだと考えられる。それは、マルチホーミングによってコンテンツを外販することで多くの利益を獲得できる一方で、コンテンツの外販によってライバルPFの品揃えが豊富になり、そのライバルPFがより強くなってしまうことにある。 上記の内容を論文にまとめて投稿した結果、「組織科学」に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究計画においては、「分析フレームワークの精緻化とデータ整理」を行う予定であった。共同研究者とともに、プラットフォームやビジネスモデルに関する先行研究をサーベイした。さらに、動画配信プラットフォームで配信された番組のリストなどのデータを整理した。これらすべて完了したため、今年度の研究計画は「おおむね順調に進んでいる」と考えられる。さらに、本年度では分析を進めて学術論文として査読付き雑誌に投稿し、採択された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性は以下の3つである。第1は、映画業界における既存企業のデジタルPFへの対抗戦略を分析することである。本年度では、日本の放送局について分析を実施して成果を出すことができた。その枠組みを発展させるために、映画業界における既存企業の戦略を分析することは有用であると考えられる。映画業界のそれぞれの企業が、動画配信プラットフォームに対してどのようにコンテンツを出し分けしているのか、また、マルチホーミングとシングルホーミングをどのようにマネジメントしているのかについて分析する予定である。そのためのデータも収集しつつある。 第2は、日本の放送局だけでなく、海外の放送局の対応について分析を拡張することである。デジタルPFの影響力は、日本だけでなく海外においても高まっており、既存企業である放送局は戦略的に対応する必要がある。とくに、韓国においては日本とは異なる課題が発生していることが日本の放送局へのインタビュー調査から明らかになった。そこで、韓国の放送業界においても分析を拡張する可能性を検討している。 第3は、音楽業界の分析である。音楽配信PFの誕生が、コンテンツプロバイダーに対してどのような影響を与えたのかを、レコード会社やクリエイターの視点から分析する。2023年度はこの分析のためのデータ収集の準備を行ったので、今後はデータを収集して分析を実施する。
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