研究課題/領域番号 |
23K01683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾子 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (20746614)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 公会計 / 財務報告 / 地方議会 / 予算 / 決算 |
研究開始時の研究の概要 |
地方議会の予算審議では原案可決が殆どであり、審議過程において十分に財務情報が活用されていない。このことにつき、柴・佐藤が2018年に全国地方議会議長を対象に実施した実態調査では、地方議会に提供される財務情報と地方議会の情報ニーズのミスマッチや財務情報の理解可能性が課題として挙げられると同時に、地方議員にそもそも情報ニーズがあるのかという根源的な疑問が呈された(柴・佐藤2019)。そこで、本研究では選挙当選を重要な目標とする議員行動と、議員による財務情報活用の関係性を分析するための理論的枠組みについて考察したうえで、地方議会における財務情報活用を促進する要素につき研究する。
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研究実績の概要 |
本研究は、地方議会の予算・決算審議における財務情報活用促進のためには、予算・決算にかかわる制度的分析のみならず、議員の特性を分析の枠踏みに取り込む必要があるとの認識のもと、理論的枠組みを整理し、財務情報の活用促進要素を明らかにすることを目的としている。本年度は主に文献研究を中心に、議員の財務情報活用プロセスにおける、政治的要因、制度的要因の関係につき整理した。①アジェンダの発生と情報ニーズの認識、②情報の有用性の認識、③情報の理解、④情報の活用、という財務情報活用プロセスにおいて、アジェンダの発生から情報ニーズの認識に至るプロセスに制度的制約は無く、政治的要因の影響を大きく受ける。また、地方議会において、この過程の意思決定主体は議会を構成する議員という個であることから、議員行動論の視点を分析の枠組みに織り込むことは重要である。つまり、財務情報活用促進のためには、議員行動において重視される有権者への応答性にかかわる要因と、開示媒体の理解可能性等の制度的要因の接合点を明らかにする必要がある。埼玉県寄居町などは、議員が自ら重要な政策課題を取材し、有権者の注目度の高い広報誌を編集することが、議員活動と有権者への応答性(議員行動論上のインセンティブ)を結び付ける要因となっている。次年度実施予定の実態調査では、財務情報活用においても、こうした広報媒体が誘因となりうるかも含め、議員行動における有権者への応答性と、財務活用プロセスにおける接合点となり得る要素を抽出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、理論的枠組みの整理および地方議員の予算・決算審議に関するヒアリング調査を通じて、次年度の地方議会を対象とした実態調査の準備の年と位置付けている。理論的枠組みについては、その研究成果を"Utilization of financial information at Local Councils and behavior of Council members"として2023年6月に早稲田大学で開催されたCIGAR Conferenceにおいて報告している。また、ヒアリング調査に関しては、早稲田大学パブリックサービス研究所議員部会への参加(計4回)を通じて東京都渋谷区、新宿区、板橋区、東村山市、山梨県甲府市の地方議会議員らから有用な情報を得ることができた。なお、今年度は英国の事例研究も実施する予定であったが、準備の遅れならびに旅費高騰を鑑み次年度以降に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、地方議会の財務情報活用の実態および促進要因を探るため、地方議会を対象とした実態調査を実施する。ここでは、有権者への応答性(政策応答性、サービス応答性、分配応答性、象徴的応答性、Eulau and Carp1977, Hamamoto2019)を検証する要素と、予算・決算にかかわる制度的要素(議会に提供される財務・非財務情報、利用機会、理解可能性等)の関係を検証する。また、地方議会における財務情報活用に関する実態調査は2013年の山本・小林による調査、2018年の柴・佐藤による調査等に限られるため、本調査では地方議会における財務・非財務データの利用実態や利用機会にかかわる基礎データの収集も実施する。具体的には財務・非財務情報を利用する議会の予算・決算の審議形態(委員会の設置形態、審議内容の棲み分け等)、審議に利用する情報、審議結果(原案可決、否決、修正動議、意見書の提出など)のほか、政治的属性(政党、会派の状況等)などである。
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