研究課題/領域番号 |
23K01688
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
中村 恒彦 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (50368388)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 会計ステレオタイプ / 性別職務分離 / 事務員 / 会計人 / 主婦 / 簿記係 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では、内部事務を担当する女性事務員と家計簿を担当する主婦のイメージが日本の会計ステレオタイプに与えている影響を検討する。女性事務員や主婦の会計ステレオタイプは戦後日本の企業社会特有の性別職務分離として第二次世界大戦後の1億総中流社会の到来とともに普及したと考えられる。本研究は、簿記や家計簿の技術には大きな違いがないにもかかわらず、社会的文脈の相違によって、会計が男性的あるいは女性的とみなされる背景を明らかにするだろう。
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研究実績の概要 |
研究計画によれば、2023(令和5)年度は、会計ステレオタイプの一般的なイメージを集めることであった。この目的についてはおおむね計画通りに進捗している。たとえば、社会的なニュースで話題を集めた『セクシー田中さん』も経理部に勤務する女性事務職員を取り上げた作品であった。「地味で老けてて、暗くて猫背でさー、なんかよく一人で、ブツブツブツブツ言ってるし・・・」という紹介の仕方も興味深いところである。 2023年度については、論文執筆と学会発表の一件ずつの研究実績をあげている。論文執筆では、「会計人に対する簿記係イメージの固着性に関する研究―Hatfield [1924]を手がかりにして―」というテーマで会計史学会年報第41号に投稿した。本論文では、アメリカで最初に会計学の教授となったH. R. Hatfield教授の1924年の論文が会計人に対するスティグマの問題を取り上げ、研究の必要性を訴えたことを明らかにしている。当時は簿記係と会計人との差があいまいな時代であったが、当該スティグマはその後の時代でも引き続き取り上げられ続けている。すなわち、簿記係が虚像になった時代でも、ステレオタイプのなかでは簿記係が生き続けていることを明らかにした。 一方、学会発表では、会計理論学会第38回全国大会の統一論題において「学際的・批判的会計研究と会計ステレオタイプ研究」というテーマで発表した。本発表では、日本ではいまだ馴染みのない空想上の登場人物に関する研究が欧米圏の批判系有力ジャーナル誌において積極的に掲載されていることを紹介した。会計ステレオタイプ研究は、方法論的な優位性を武器に、会計の専門職化やジェンダーに関する問題に切り込んでいる。メディア作品における何気ない表現が会計の重要課題と結びついている証左であろう。本研究発表については、査読を経ての学会誌への投稿を進めており、研究初期時点における研究成果をあげることができるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度については、会計ステレオタイプの一般的なイメージを集めるとともに、会計ステレオタイプ研究の必要性についても発表の機会を得ることができた。経理部の女性事務職員を表面上のペルソナとして取り上げる作品の露出があり、その研究を知ってもらう好機に恵まれている。一方で、会計ステレオタイプ研究は、いまだ趣味的・エッセイ的な誤解も多いため、この部分に注力して研究の必要性を訴える必要性も痛感している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画どおり、2024(令和5)年度および2025(令和6)年度は、戦後日本の女性事務員や主婦に関する実像から小説や映画や川柳や流行語などの虚像がどのように現れたかを検討する。これによって、いまだ趣味的・エッセイ的な誤解を少しでも軽減できるのではないかと考えている。欧米圏の研究においてもその科学性を訴えるためにその歴史を紐解くことが行われており、さらに会計の専門職化やジェンダーとの問題との接点を明らかにしている。
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