研究課題/領域番号 |
23K01692
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
春日部 光紀 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (10336414)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 複会計システム / 公益事業会社 / 資本勘定 / 収益勘定 / 一般貸借対照表 |
研究開始時の研究の概要 |
個別企業を対象とする事例研究は、詳細な分析が可能となる反面、事例研究全体を包括する全体的評価がなされない場合が多い。仮に全体的評価がなされたとしても、暗黙のうちに現在の状態を完成形とみなし、過去は現在への単なる道程として解釈される傾向にある。また既存研究は、現在の状態への進化を効率性という観点から分析するのが通常である。 本研究は、従前の会計史研究とは異なり、同型化概念を援用して個別企業の会計実務を包括的に検討することで、複会計の変化要因を特定し、理論分析を行う点に特徴がある。個別企業は各々独自の特徴を有するが、いわば事例分析を縦糸、理論分析を横糸として組み合わせる研究を構想している。
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研究実績の概要 |
本年度は、19世紀ロンドンにおけるガス会社の会計実務を、一次史料を中心として分析した。具体的には、1833年に非法定会社として設立されたロンドン・ガス・ライト・カンパニーを研究対象とした。同社は、1844年に議会特別法を取得して法定会社となっているが、非法定会社であった1833年から1843年までは、洗練された規定を備えていたものの、実効性に欠けていた。株主による統治が十分ではなかったため、取締役は自分たちに有利な会社運営を行うことができた。 しかし1844年以降、取締役は株主の要求に応えざるを得なくなっていく。株主の要望により設置された委員会報告書によると、監査範囲の拡大と継続的情報開示が必要であると結論づけている。取締役は、これ以降、株主の利益を考慮した経営を行うようになる。株主への開示書類として、複会計システムによる様式を選択した。複会計システムは、固定資産の実在性や資本と利益の峻別等、公益事業会社にとって重要な要素を明瞭に開示するのに適していたが、採用にあたっては他社の会計実務やや法令を参考にしたと思われる。その際、模倣的同型化という単一方向へのベクトルのみが観察されるわけではない。社会という複雑なネットワーク、あるいは同社がおかれれた環境の中で、自社に適合した最適な会計実務を構築していく複雑な過程として分析することができた。研究成果は、The 45th Annual Congress of the European Accounting Association, 24th-26th May 2023において報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ロンドン・ガス・ライト・カンパニーを対象として、分析を開始した。一次史料にもとづく実証研究は、史料の入手可能性に大きく影響を受けるが、ある程度の史料を入手済みであるため、研究活動を間断なく行うことができている。 古い文献は本務校の附属図書館のみでは対応できないが、現物を入手する必要性はないため相互貸借やコピー依頼を積極的に活用し、最小限の図書を購入した。
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今後の研究の推進方策 |
国内外を含めて、史料の所在は確認済みである。アメリカ鉄道会社の史料は、国内では大阪産業大学と明治大学図書館にかなりの所蔵数がある。イギリスのガス・水道会社に関しては、The National Archives(UK)、British Library、大学図書館等に所蔵されている。コロナ以降、海外に渡航できず入館証が失効しているが、過去の利用実績があるため、再発行の手続きを含めてスムーズな現地調査が可能である。複会計様式で会計報告書を作成していたか否かは、現地調査をしなければ特定できない。特に海外はコピー依頼代がかなり高額なため、現地調査を行ったうえで必要な資料を特定し、依頼を行っていく。
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