研究課題/領域番号 |
23K01701
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高橋 隆幸 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (50326071)
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研究分担者 |
野間 幹晴 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80347286)
成川 旦人 福島学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90974767)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 税務会計 / 会計学 / 租税法 / 役員給与 |
研究開始時の研究の概要 |
平成28年度および29年度税制改正によって、企業にとっては従来からのストック・オプションに加えて、自社株報酬(譲渡制限付株式報酬・ユニット型・株式交付信託)も損金に算入することができるようになりました。これらの株式報酬は、会計基準では勤務期間中の複数年度にわたって費用計上されますが、税務上の損金算入は勤務期間の終了後であり、費用計上よりも損金算入のタイミングが遅れるため、他の形態の報酬に比べると税務上は不利な形態の報酬形態であるといえます。本研究は、これらの株式報酬の採否の決定要因および企業の課税状態(税負担)との関係を分析するとともに、株式報酬の採用が企業業績に影響するのか否かを分析します。
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研究実績の概要 |
私たちの研究テーマは、「株式報酬の税務をめぐる実証研究」です。株式報酬のうち株式を対価にする給与は、平成28年度および29年度の一連の税制改正によって導入された新しい制度であり、このうち特に役員に対する株式報酬を研究対象とします。今回の株式報酬制度の導入は、役員給与の税制における平成18年度改正以来の大幅な改正ですが、現在までのところ税務会計分野では本格的な実証研究が行われていない状況です。私たちは令和5年度において、一連の税制改正後のデータを用いて、役員における株式報酬(ストック・オプションおよび自社株報酬)の採否の決定要因分析を行い、その分析結果を、論文「平成28年・29年度税制改正で導入された株式報酬の決定要因」として公表しました。分析の結果として、報酬委員会設置会社および報酬総額一億円超の役員がいる企業が株式報酬を採用する傾向があることを明らかにしました。一方で、ストック・オプションおよび自社株報酬は、現金による役員給与と比べると税務上は企業にとって不利な報酬形態であるため、税負担の重い企業は株式報酬を採用しない傾向があると予想して分析しました。なぜならば、ストック・オプションであっても自社株報酬であっても株式報酬は、会計基準では勤務期間中の複数年度にわたって費用計上されますが、税務上の損金算入は勤務期間の終了後であり、費用計上よりも損金算入のタイミングが遅れるため、他の形態の報酬に比べると税務上は不利な形態の報酬形態であるといえるからです。しかし、分析の結果は、企業の課税状態との間には統計的に有意な関係を検出しませんでした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、3年間の研究期間の初年度でした。日本とアメリカのストック・オプションおよび自社株報酬に関する税制を比較検討し、大筋において非常に類似した税制であることを確認しました。日本では、比較的新しい制度であることから、先行研究の蓄積がまだまだであることを考慮し、アメリカにおける先行研究を調査しました。そして、アメリカの先行研究における研究課題や分析モデルが日本においても応用可能であることを確認したうえで、実証分析を行っております。これまでの進捗状況は、おおむね順調であると考えます。
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今後の研究の推進方策 |
私たちは、役員給与におけるストック・オプションおよび自社株報酬の決定要因分析を行いましたが、株式報酬の採否と企業の課税状態(税負担)の間には統計的に有意な関係を検出しませんでした。先行研究では、アメリカ企業を対象に実証分析をし、ストック・オプションであるならば、オプション付与時ではなく、従業員(役員)が権利行使するまで、損金算入のタイミングが遅れることから、税負担の重い企業はストック・オプションを採用しない傾向にあることを明らかにしているので、私たちの分析結果はアメリカ企業の分析結果とは異なる結果になっています。考えられる可能性としては、日本企業には役員給与の決定において、税負担よりも重要視している要素があるかもしれないということです。あるいは、日本企業のストック・オプションには、1円ストック・オプションや、事後交付型のストック・オプション(オプション交付日の翌日から権利行使期間が開始するタイプのストック・オプション)など多様なストック・オプションがあり、実証分析にこの多様性を組み入れる必要があるのかもしれません。残りの研究期間で、この解明に努めたいと考えています。
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