研究課題/領域番号 |
23K01710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉田 智也 中央大学, 商学部, 教授 (90456286)
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研究分担者 |
小澤 康裕 立教大学, 経済学部, 准教授 (50362819)
中村 亮介 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40549713)
塚原 慎 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (90806374)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 新収益認識基準 / 会計処理 / 企業行動 / 帳簿記録 / 会計基準 / 新収益認識会計基準 / 企業会計基準第29号 / 基準変更の影響 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,従来の収益認識基準と新収益認識基準との相違を理論的に検討し,新基準の適用により生じた企業行動の変化を洗い出し,その上で,会計処理,財務諸表作成,監査等の諸領域ごとの影響について検討する。具体的には,先行研究のレビューを中心に新収益認識基準の適用により生じうる企業行動の変化の洗い出しと検討を行うとともに,今後を見据えて新収益認識基準の適用によって生じうる企業行動の変化の影響を明らかにするため実証的論点の提示を行う。そして,基準が及ぼす実際の金額的影響度合いについて,公表財務諸表の数値をもとに分析を行うとともに,上場企業および監査法人に対するアンケート調査を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,わが国における新収益認識基準の適用に際し,会計処理,財務諸表作成,監査等の実務において,どのような影響が生じたかについて,理論・実証の面から総合的に検討することである。具体的には,新収益認識基準の適用後に会計処理ならびに企業行動に変化が生じたかどうかについて,上場企業および監査法人に対するアンケート調査を行い,得られた調査結果に基づき,財務会計・監査領域の理論的・実証的分析を行う。 上記の目的にしたがい,研究初年度である2023年は,アンケート調査表の素案を作成した。具体的には,アンケート調査において,「新収益認識基準の導入によって,貴社にどの程度,追加的な時間や手間が生じたか。財務諸表の作成者として,新収益認識基準の導入によって貴社にどの程度のベネフィットが生じたか。財務諸表の作成者として,財務諸表の利用者(たとえば株主や債権者)にとって,新収益認識基準が導入されることは,どの程度のベネフィットがあったと評価するか。新収益認識基準の導入によって,貴社の損益計算書の金額にどのような変化が生じたと考えるか。「重要性等に関する代替的な取扱い」の適用範囲について,どのように考えるか。」といった質問項目を設定する予定であるが,2019年に実施したアンケート調査と比較可能な形となり,基準導入前後で企業の考え方・行動にどのような変化が生じたかが,把握できるはずである。 また,研究代表者である吉田が,商品の在庫管理等に利用される商品有高帳の記録と会計基準の諸規定の関係を考察し,「収益認識に関する会計基準」が想定する会計情報を作成するための基礎となる帳簿記録がどのように記帳されるべきなのかについてを分析し,『會計』第204巻第1号に単著論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケート調査項目を検討するにあたって,新収益認識基準の適用による影響額を(株)アイ・エヌ情報センターが提供するデータベースeolを用いて手収集し,2022年3月期決算企業の多くが有価証券報告書で明らかにしているその影響額を分析した結果,それほど大きな影響がなかったことがわかり,アンケート調査表の素案を見直すことを決定した。さらに,調査対象の企業を拡大し,どのような業種において影響が大きかったのか,基準設定におけるデュー・プロセスの中でコメントレターを提出する企業にどのような特性があったのかなどを明らかにする予定である。 また,監査法人のパートナーなどにインタビュー調査をおこない,財務諸表の信頼性を担保する監査人および企業の財務報告をより適切なものにするアドバイザー等にとって,新収益認識基準の導入・適用がどのような影響を及ぼしているのかについて明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの分析により新収益認識基準が財務諸表に与える影響について整理してきたが,こうした金額的影響額を及ぼした基準導入が利害関係者に与えるコストとベネフィットを論じるにあたっては,さらなる検証が必要となる。 まず,基準適用に伴い,経営者に裁量的行動が生じる余地があるのかを検討したい。たとえば変動対価を伴う取引について,会計上の見積り(最頻値や期待値の利用)が収益額の測定に入る余地が増えるのであれば,基準による変化は経営者の裁量的行動に影響を及ぼすかもしれないからである。そのため,基準適用前後での裁量的発生高の大きさの差異を観察するような研究が考えられる。 また,有価証券報告書における開示パターンにはばらつきがあることから,それが何に起因しているかを検討したい。開示パターンが異なることは,企業間で財務報告の質に差異が生じていることを意味し,財務諸表利用者間の情報の非対称性を増大させる可能性がある。 さらに,新収益認識基準の適用により,会計情報の比較可能性が向上したかどうかも確認しなければならない。近年では比較可能性の代理変数が開発されているため,これらの指標を用いることで,基準導入が所期の目的を果たしているかを検証することができるだろう。 上記の分析と並行して,上場企業や監査法人に対して実施する予定のアンケート調査表の内容を再検討した上で,パイロットテストを実施したい。
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