研究課題/領域番号 |
23K01721
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 摂子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70323813)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ハンナ・アーレント / ホロコースト研究 / 判断力 / 社会科学 / 全体主義 / 判断 / 実在感覚 / 経験社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ハンナ・アーレントの思想、特に正不正の判断をめぐるアーレント後期の議論に着目し、これまでのアーレント研究を概観した上で、アーレントの全体主義理解を経験社会学の視点から読み解く試みである。この研究を通じ、アーレントが全体主義支配に見出した事実/虚偽の境界の消去、および現実感覚の破壊に関する議論が、現代社会における「事実」の危機に通底することを示し、事実を扱う経験社会学が担うべき公共的役割について新たな知見を示す。
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研究実績の概要 |
1年目となる2023年度は、主にアーレント原著及びアーレント研究の文献調査から、アーレント全体主義理解における「事実」の位相の変遷を跡付ける作業をおこなった。同時に、在外研修期間を利用し、米国にて英語圏を中心とするホロコーストの関する基本文献の収集をおこなった。文献研究としては、実証歴史学を中心にアーレント以降の全体主義・ホロコースト研究を精査し、アーレントによる全体主義理解を経験的社会科学の系譜に位置付けるための準備を進めた。特に、第二次世界大戦中から戦後にかけて隆盛した大衆論とアーレントの『全体主義の起源』との理論的乖離に着目し、全体主義理解をめぐるアーレントの関心の焦点が、大衆の熱狂ではなく、絶滅収容所およびそれを可能にした官僚制に置かれていたことを確認した。 なお、今年度の成果は、下記の論文にまとめられている。 「アーレント全体主義理解における事実の位相:経験社会学との接続をめぐって」Arendt Platz 8号,2-14頁, 2024年3月. また、探索的作業を進めるなかで、アーレントの提示した「共通感覚」概念が、思想史の系譜からみて特殊な位置付けをもつことを確認し、共通感覚の系譜からアーレント思想の特異性を明らかにするという新たな課題を設定した。この課題は本研究から得られる知見のさらなる深化を可能にするものであり、またこれまでアーレント研究においてほとんど着目されてこなかった論点であることから、国際的にみても重要な視座と考えられる。この課題についても、今後論文としてまとめられるよう作業を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、4ー8月が申請者の在外研修期間と重なっており、ある程度まとまった時間を研究に充当できたため、おおむね当初の研究計画の内容すべてを終えることができた。また、「共通感覚の系譜におけるアーレントの位置付け」という新たな課題を確認できた点で、当初の計画以上の進展がみられたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き当初の研究計画にしたがって研究を進める。特に「共通感覚の系譜」を捉え直す作業のなかで、アーレントとともにカントの「判断力批判」に含まれる「共通感覚」の位置付けにも着目し、共通感覚概念を基線としてカントとアーレントとの差異を捉える。アーレントが独自の判断力論を構築する中でどのようにカントを継承し、またカントの圏域から離脱したかを明らかにする。それによって、カントからの偏差においてアーレント思想の独自性を明らかにするという本研究の最終目的に漸近したい。
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