研究課題/領域番号 |
23K01731
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 移民 / 非正規移民 / 社会運動 / ハンガーストライキ / フランス / 市民権 |
研究開始時の研究の概要 |
出入国管理の権限を持つ主権により、政治・社会的な生が否定され、あらゆる法的な保護の埒外に置かれる「剥き出しの生」たる非正規移民の運動が成功する理由を明らかにすることが本研究の目的である。具体的には、ハンガー・ストライキを手段として正規化を求める非正規移民の運動について調査を行う。国家が公共空間から排除する非正規移民が、主体性を奪われるどころか、ハンガー・ストライキにより、積極的な行為者として市民社会に包摂される過程を明らかにする。非正規移民の身体を武器とするハンガー・ストライキを、国境管理の場で作用する「生権力」への抵抗として分析し、国民国家による排除の論理と抵抗の可能性について理論化する。
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研究実績の概要 |
本年度は日本の非正規移民の社会運動について、インタビューによる調査を行った。とくに在留資格がないことで生活困窮状態にある非正規移民が社会に包摂される経路としての市民運動についての調査を行った。非正規移民は制度的には、政治、社会的にほとんどの権利を剥奪されている。いっぽう、これまで日本人の生活困窮者支援を行ってきた市民団体は、人権は普遍的なものであるという「常識」に日本における外国人の人権が、在留資格制度によって制限されているとは思わず支援にのりだす。 非正規移民は、本年度の研究フィールドである日本にかぎらず、移民受け入れ国では排除的な政策がとられるようになっている。非正規移民の正規化のもっとも有効な主張は、受け入れ国において就労しているという事実である。イタリアやフランスなど就労の実績をもって正規化する国も少なくない。日本の場合は、就労を禁じるだけではなく、規則を破ることで無期限に収容される可能性があるため、非正規移民は就労をためらうことになる。同様の理由から、正規化を求める当事者運動も活性化しにくい。 これら多面的な制度的排除ゆえに、市民社会の支援を受けなければ生き抜くことはできなくなるため、逆説的に、制度的に排除されればされるほど、市民社会には強固に包摂されることが仮説として導きだされた。しかし市民社会に包摂されていても、社会レベルにとどまっており、政治的な領域に表出しにくい。また市民社会での支援は、市民の共感に基づいているため、普遍的に誰にでも適用される保障もないし、保障することは不可能である。共感が、政治として表出する過程については、次年度以降の研究課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたインタビューや文献調査は順調に進展している。フランスにおいてもインタビューを実施すべく、対象者への予備的インタビューを行ったが、ハンガーストライキよりも、労働運動としてのストライキのほうが規模が大きく、政治的に有効であることがわかり、当初予定していたハンガーストライカーではなく、労働運動としてのストライキに参加した非正規移民当事者へのインタビューをすることになりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、ハンガーストライキについての調査はフランスにおいても継続するが、労働運動としてのストライキについても調査が必要と判明した。当初は労働運動の調査は予定していなかったが、労働総同盟(CGT)の関係者の協力を得て調査を進める準備をしている。
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