研究課題/領域番号 |
23K01748
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梅村 麦生 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (70758557)
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研究分担者 |
畠中 茉莉子 三重大学, 人文学部, 講師 (60910685)
池田 直樹 神戸大学, 国際文化学研究科, 助教 (40931788)
若狹 優 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (60885127)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 社会学的言い訳 / 社会学的説明 / 社会学的帰属理論 / 自己責任論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、社会学に対して社会学の非専門家から寄せられてきた「社会学的言い訳」批判に対して、社会学はどのように応答することができるのかという問いを前提として、(1)20世紀末以降に社会学の専門家内外から向けられている「社会学的言い訳」批判の理路と影響を明らかにし、(2)それに対して社会学の側からのより良い応答可能性を呈示することを目的とする。本研究では特に、既存の研究で関連づけられてこなかった社会学的帰属理論の観点から、この論争の双方の主張とその理路を包括的に捉え、社会学に対する意義を分析する。
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研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる2023年度は、(1)「社会学的言い訳」批判の言説について、アメリカとイギリスの新右派と新保守主義の犯罪学と政治思想、さらにイギリスとフランスの新左派の政治思想と社会政策における初期の展開を辿り、社会学的帰属理論の観点から検討したうえで、(2)同じ枠組みに基づき、それと関連する「社会学的説明」批判とその応答の観点から、①アメリカにおけるポスト社会構築主義の社会理論、②フランスの社会学古典における正義論、③20世紀前半ドイツの社交性論、④現代ドイツの宗教の「個人化」論と「私化」論の論争、⑤戦後日本の社会思想における保守主義の分化、⑥ソーシャルメディアにおける「フェイクニュース」言説という各事例を検討した。 現時点で特に明らかになったこととして、「社会学的言い訳」批判や「社会学的説明」批判の諸言説に共通するのは、いずれもそれらの言説が名指す対象の社会学的言説における遂行的側面と非対称性に批判を向けている一方で、まさにそのことで「社会学的言い訳」批判や「社会学的説明」批判それ自体の遂行的側面と非対称性を覆い隠すことに寄与している、という側面である。そのことは特に「言い訳」という言葉がもたらす、〈「言い訳」を指摘されている側/「言い訳」を指摘している側〉の道徳的非対称性に顕著に現れている。それに加えて、〈個人的なもの〉と〈社会的なもの〉との関わりという、社会学始まって以来の問題系が、現代社会の諸領域における論争にそのまま見出される、ということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は研究代表者・共同研究者・研究協力者によって複数回の研究会合を実施し、議論を深めるとともに、『社会学雑誌』40号(神戸大学社会学研究会、2023年12月刊)の「特集1 社会学的説明か「社会学的言い訳」か:個人と社会をめぐる現代の議論から」で共同研究の成果として、各研究者による論考を刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年度目にあたる2024年度も、ひきつづき「社会学的言い訳」および「社会学的説明」に対して批判をおこなっている諸言説を検討するとともに、社会学の側からの応答の可能性を追究する。 検討の対象として、(1)米欧の新保守主義と新自由主義における自己責任論、(2)独墺仏の古典的社会理論と自由主義、(3)現代日本の社会思想における保守主義、(4)ソーシャルメディア上の社会学批判の言説、等を取り上げる。また今日における「社会学的言い訳」批判の類例として、「キャンセルカルチャー」批判なども検討の素材として考慮する。
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