研究課題/領域番号 |
23K01753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
阿久澤 麻理子 大阪公立大学, 人権問題研究センター, 教授 (20305692)
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研究分担者 |
高田 一宏 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (80273564)
石川 結加 大阪芸術大学, 芸術学部, 准教授 (60805688)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 部落差別 / 人権意識調査 / 現代的レイシズム / カラーブラインドレイシズム / New Racisms |
研究開始時の研究の概要 |
国際人権条約上の差別の定義を要約すると「人の属性・特性を理由に、区別・排除を行い、人権の享有・行使を妨害すること」である。言うまでもなく「区別・排除・妨害する」のは、差別「する側」で、差別は「する側」の恣意により作り変えられ、変容する。部落差別も。あからさまな蔑みが日常の対人関係の中で表現れる場面は減少したが、以前と異なる差別言説(「差別はもう深刻な問題ではないのに、差別がある、ある、と主張して過剰な特権を要求している」「福祉に甘え、依存している」など)が代わって表面化している。本研究は、部落差別の変容を、「新しいレイシズム」研究の視点からとらえ直し、検討を加えるものである。
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研究実績の概要 |
2023年度途中より、新たな研究分担者1名を加え、3人体制で研究をスタートした本年度は、3年次早々に調査(数量調査は確定しているが、その他の方法も含めて検討中)を実施するための準備段階にあたる研究を進めた。 1. いわゆる「古典的(old-fashion)な差別」「新しい差別(New Racismsと記されるように複数ある)」の視点から、部落差別言説を検討した。2人の講師を招いての学習会を行い(「近代における部落差別言説の変遷」「在日コリアンに対する、新しいレイシズム言説」について)を通じて、古い/新しいという概念は、二分法で説明できるものではなく、たとえば「こわい」という言説も(一見古くからあるようでありながら)、米騒動の責任を部落に転嫁するために権力側が作り出した「暴虐性のイメージ」と深く関わり、近代以降に生まれてきた概念であることなどがわかり、部落差別言説の変容じたいにも、長い歴史があることがわかった。また、「古い」「新しい」とは、時間的な推移を示すというよりは、差別言説の質的なちがいを示すものとして理解された。 2. Bonilla-Silva (2017) Racism without Racistsを読了し、カラーブラインドレイシズムの概念を検討するとともに、それが日本における「寝た子を起こすな」という概念とどのように重なるのかについても議論を重ねた。 3. 人権施策が進展するとあからさまな差別はリアルな社会生活の中では「見えにくく」なる。アンケート調査では補足しづらい回避的レイシズムを把握する方法について検討した(インタビュー、IATなど)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次は、概念整理、すなわち部落差別における「古典的」「新しい」差別とは何か、を明確にするための学習会を主に予定していたので、そのとおりに実行した。①部落差別における「古典的差別とは何か」を歴史学の視点から黒川みどり氏から、②部落差別における「現代的差別とは何か」を社会心理学の視点から高史明氏から(在日コリアンに対する現代的レイシズムの研究を紹介していただいた)、③部落差別における「マジョリティ特権とは何か」を心理学の視点から出口真紀子氏から、それぞれご講義をいただいた。従来行われてきた人権意識調査(国、自治体による)では、部落差別は対人関係の中で表出する「見下し」や排除(発言や、態度、行動による)として想定されており、②③の視点が十分に盛り込まれてこなかったので、これらを測定する方法についても検討を始めたところである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、三年次に予定している意識調査(大学生等を対象としたアンケート調査)のための調査票作成を進めるため、検討を重ねる。なお、アンケート以外にも、フォーカスグループ、もしくはアフィニティグループ(racial affinity groupを応用する) を組んでそこでのディスカッションを記録するなどの手法が使えないかを検討する。アンケート調査は「タテマエ」の回答の収集にすぎないのではないか、という批判もあり、例えば回避的レイシズムや、カラーブラインドレイシズムの把握、測定を試みて来た先行研究を検討する。 なお、研究代表者個人としては、各地の人権意識調査のうち、データ使用が可能なものについて、再集計を行い、新たな言説、および態度の表出について、計量的にも把握する。
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