研究課題/領域番号 |
23K01784
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
南川 文里 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (60398427)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 多文化主義 / 市民権 / シティズンシップ / 複数国籍 / アファーマティブ・アクション / アメリカ合衆国 / 国籍 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アメリカ合衆国における人種や性にもとづく少数者や移民・難民の権利保障の枠組として、多文化市民権がいかに成立してきたのか、歴史的な文脈とその現代的課題を論じる。多文化市民権は、少数者による社会運動や異議申し立てによって権利課題となり、司法・立法過程において制度化され、現実世界の政治的制約のもとで実践されてきた。本研究では、多文化市民権を構成する5つのテーマ(①出生地主義、②先住権、③性的市民権、④複数市民権、⑤非正規移民の権利)を取り上げ、「アメリカ市民権」がいかに歴史的に複数文化の対立と共存を内包して成立し、少数者の権利をめぐる枠組を形づくってきたかを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、計画の初年度ということで、多文化市民権論について、多文化主義論、シティズンシップ(市民権)論、福祉国家論などの基本的な文献や、アメリカにおける公共政策の変遷についてまとめた歴史研究などを取り上げ、その理論的展開の整理を行った。実証的な研究としては、①日系アメリカ人における市民権と国籍概念の歴史的研究、②アファーマティブ・アクション政策の歴史的展開と現状を取り上げ、調査を進めた。まず、①については8月にカリフォルニア大学ロスアンジェルス校および南カリフォルニア大学のスペシャル・コレクションにおいて史料調査を行い、20世紀後半期における市民権・国籍政策の変化と日系人社会の対応について精査した。とくに、1950年代における複数国籍政策の展開と日系人社会の対応、1980年代におけるリトルトーキョー地区再開発における、市民・企業・国家の関係性の検討などについて、研究成果の整理と発表の準備を進めた。②については、2023年6月にアメリカ連邦最高裁がハーバード大学等における人種を考慮した入学選抜(アファーマティブ・アクション)の禁止判決を下したことを受け、「異なった扱い」を含む多文化市民権の具体的な一例として、アファーマティブ・アクション政策を取り上げ、その歴史的展開と現状について調査と研究報告を行った。また、このテーマについて一般向けの著書を出版し、研究成果の一般への還元を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は順調に進展している。在米日系人社会を題材として、エスニック・マイノリティにとっての多文化市民権のあり方を、地域の多人種性と出身国のトランスナショナルな紐帯との関係を中心にまとめる研究については、既存の研究蓄積に新しい史料調査の内容を加えることで、研究成果として発表する準備を整えることができた。今年度はアファーマティブ・アクション政策をめぐる研究には着手しない予定であったが、連邦最高裁判決を受けて、社会的関心が高まったことを受けて、急遽一般書としての出版を決定し、その準備を進めた。一方で、今年着手する予定であった、性的少数者と多文化市民権をめぐるテーマについては、アファーマティブ・アクション研究の一環として一部カバーしたが、2024年度以降に本格的に取り上げることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究計画としては、多文化市民権論の理論的な再構築について、ウィル・キムリッカの議論の批判的再読をインターセクショナリティ論や制度的変容論の観点から行い、本研究の理論枠組を提示する。この枠組をふまえて、具体的に3つのプロジェクトを進める。①在米日系コミュニティの市民権を地域の多人種関係と日本とのトランスナショナルな結びつきのなかに位置づける研究については、これまでの研究蓄積をもとに研究書としての出版準備を進める。②多文化主義政策としてのアファーマティブ・アクションの変遷については、これを一般向けの書籍として出版する予定である。③性的少数者としての女性にとっての多文化市民権というテーマについて、8月に史料収集・現地調査を行う予定である。具体的には、公民権法の女性への対象拡張がもたらした変化を、連邦政府機関・地方政府・女性団体への調査をもとに明らかにする予定である。
|