研究課題/領域番号 |
23K01788
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
ウィックストラム 由有夏 武庫川女子大学短期大学部, 英語キャリア・コミュニケーション学科, 准教授 (10714280)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 在日コリアン女性 / 育児 / ソーシャルキャピタル / インターセクショナリティ / ネットワーク / ケア / アイデンティティ / 在日コリアン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ライフストーリー・インタビューを通し、育児過程において母親である在日コリアン女性がどのような人間関係を保有し、その中でどのような子育てにおける相互ケアが存在するかという事と、それによって女性たちがどのようにアイデンティティを(再)構築しているのかという事の関係性を深く考察し、日本におけるマイノリティ女性の現状をインターセクショナリティ(交差性・複合差別)(Crenshaw 1989; Collins 2016)の視点から明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で、在日コリアン女性が必要とする育児サポートを十分に生み出す社会関係を構築することが難しいケースにおいて、次の3つの文脈が女性たちの育児背景にあることが明らかになった。(1) 親族間のネットワークが弱くなり、文化的行事が中止・縮小され、他者と「身内」関係を結べる機会が減少している。さらに子育ての過剰な負担を女性に与えるとき、この不均衡さは子育てが生活に占める割合の増大を指し、他者との社会関係の発展が阻まれる。(2) 子供の養育に関する意思決定には、女性自身の民族的経験や生き方を回顧する行為を伴う。 その際に差別経験など子供が同じネガティブな経験をしないで済むための回避手段が取られる。結果的に、子のための選択肢が狭まるケースがある。また、そのような経験が追憶され在日コリアン女性のアイデンティティの再構築が行われる。(3) 子育ての中で、在日コリアン女性は民族、ジェンダー、ナショナリティなど複合的な抑圧の軸に置かれる自身の存在を(再)認識させられる。とくに、民族性に関わる子供の教育方針や差別の問題に直面した際に、同じ境遇の相談相手が見つかりにくいケースなどが挙げられる。 それに対し、育児困難が緩和されている場合には、次の3つのいずれかの社会的条件が存在していることが明らかになった。(1) 複数の「ママ友」を中心に近所づきあいが確立されており、必要な時には相互に助け合う体制が整っている。つまりソーシャルキャピタルの醸成がされている。 (2) 配偶者や身近な親族との育児サポートの提供・享受がルーティーン化されている、配偶者との育児家事の分担が(納得済みで)確立している、または育児に伴うタスクの責任が明確に分散していることが挙げられる。(3) 差別問題に悩む経験がほぼなく、周辺の日本国籍の日本人とも親しい関係性が形成されている場合も、育児の困難を軽減されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査協力者(インタビューウィー)は現在子育てをする女性がほとんどであり、ペイドワークに携わる女性も多い。そのため、調査者とのスケジュール調整が難航することもあり、インタビュー数が当初の目標数にわずかに達していない。しかし、各インタビューは3-4時間と長時間におよび、女性たちとのインタビューによる対話から、より深い探究が出来ていると考える。さらに、「在日コリアン人権フォーラム」や「アプロ女性ネット」が開催するイベント参加を通じ、在日コリアンの人々が日本社会において直面する困難や課題、および在日コリアン女性たちの生き方や育児の現状について学んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きライフストーリー・インタビューにより、在日コリアン女性(母親)に聞き取り調査を行い、育児の実態を把握したい。また、大阪生野区にあり、多くの在日コリアンや文化言語の異なる幼児が通う保育園にて、そこで実践されている「民族保育」について保育士の先生方から学びたいと考えている。さらに、大阪地域で開催される「在日コリアン人権フォーラム」や「アプロ女性ネット」が開催するイベントや研究会などに可能な限り出席する予定である。
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