研究課題/領域番号 |
23K01795
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三隅 一百 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80190627)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 地域コミュニティ / 社会関係資本 / フリーライダー / 災害 / 公共財 / コモンズ / コミュニティ |
研究開始時の研究の概要 |
地域生活に不可欠な地域共有物の管理に関わる社会システムを地域コミュニティとして捉える。また、個々の地域共有物に対応する部分的社会システムを、コミュニティモジュールという。都市化社会の地域コミュニティを捉えるために、住民が部分的に様々な地域共有物の管理に関与するような、管理の分業や分担が混合したコミュニティモジュール複合を想定する。この概念枠組みのもとで、2016年に地震災害があった熊本市で市民意識調査を実施し、災害に関わる地域共有物を軸に、フリーライダーの温存が地域共有物の互恵的な供給を促し、社会関係資本として機能する条件を、実証的に探究する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、住民が部分的に様々な地域共有物の管理に関与するような形態で都市化社会の地域コミュニティを捉え、災害に焦点をおきつつ、フリーライダーの温存が社会関係資本として機能する条件を実証的に探究することである。 地域コミュニティは、地域生活に不可欠な地域共有物の管理に関わる社会システムとして捉えられる。それにより、住民が部分的に様々な地域共有物の管理に関与する分業や分担の有り様を、管理への協力という行動水準で分析することができる。令和5年度は、この地域コミュニティ概念の分析枠組み整備を実証的に進めた。データは、前回の研究課題で実施した熊本調査等の既存の社会調査データを使用した。 これにより、一般化された互酬性の規範が地域共有物管理への協力を促す、社会関係資本としての普遍的な効果をもつことがわかった。この規範が高い社会では、ある地域共有物管理のフリーライダーが別の地域共有物管理で協力する蓋然性が高くなるといえる。一方、従来の研究で着目されてきた一般的信頼については、協力を促す普遍的な効果は認められなかった。正負両面をもつ地域社会信頼については、ただ乗りよりは協力を促す可能性が確認された。 また、協力行動を阻害する要因として、災害に関わる社会的脆弱性、とくに異なる災害の累積が強める社会的脆弱性を析出する方法を吟味した。具体的には震災ないし水害とコロナ禍の災害累積が、社会階層とどのように関連するかを分析し、とくに精神的な面で個々の災害とは異なる累積効果があることがわかった。 数理モデルとして、社会ネットワークとゲーム理論を融合した公共財供給モデルを検討したが、定式化には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閾値を組み込んだ合理的選択理論で、地域共有物管理への協力を捉える理論枠組みは一定の整備をみた。数理モデルないしシミュレーションによる理論の精緻化は検討途上であるが、社会調査による実証は現状の理論枠組みの下で可能だと考えている。そのための分析枠組みもある程度整えることができた。 研究の経過発表については、幸いコロナ禍の影響も弱まり国際学会2件を含む諸学会での研究報告を予定通りに行って、有益なコメントを得て研究を進めることができた。論文も2本、これも有益なコメントを得て公表し、今後研究を進める足場固めを行うことができた。 また、本研究と本務での研究を関係づけて熊本以外の水害被災地の調査も進め、異なる災害、地域特性を考慮しながら地域コミュニティを比較分析する意義を、再認識することができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り令和6年度に社会調査を実施し、地域コミュニティにおけるフリーライダーの社会関係資本としての可能性を、実証的に検討する。当初の予定では調査対象を熊本市にしていたが、災害の種類や地域特性による地域コミュニティの多様なあり方を考慮しながら比較分析を行う方が有効であると判断し、九州の範囲で社会調査を実施したい。範囲を九州とするのは、申請者がこれまでの研究を通してある程度個々の地域の様子をつかめるからである。予算制約の中で、できるだけ精度の高いデータを得るために、モニターから無作為抽出する形でのインターネット質問紙調査を実施する予定である。 令和6年度の内にできる限りデータ分析を進め、途中成果を学会等で報告して国際的なレビューを受けながら研究を進める。数理モデルないしシミュレーションの援用も引き続き検討するが、理論全体の定式化というよりは、データ分析結果の説明に焦点をおいたモデリングの可能性を検討していく。
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