研究課題/領域番号 |
23K01801
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大林 真也 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (10791767)
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研究分担者 |
稲垣 佑典 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (30734503)
瀧川 裕貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60456340)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マクロ社会学実験 / 動的ネットワーク分析 / 地位階層性 / 政治的分極化 / 分極化 / オンライン実験 / ビッグデータ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、マクロ社会学実験や最新の計算社会科学的手法によって、オンライン社会における秩序問題のメカニズムを解明することを目的とする。具体的には、オンライン掲示板を模したwebサイトを作り、そこに被験者を集め、コメントの書き込みやコメントへの評価を行ってもらう実験をおこなう。さまざまに実験条件を変えることにより、その掲示板において、階層性ができあがったり、平等なコミュニティができあがったり、あるいは分断されたコミュニティができあがるなど、マクロな帰結を観察することを通じて、そのような集合的な帰結が創発するメカニズムを解明すること試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、デジタル空間において人々がどのように相互行為の秩序を形成しているのか、をマクロ社会学実験を通じて明らかにすることが目的である。Yahoo!掲示板のようなオンライン掲示板においては、しばしば人々のコメントは荒れがちであったり、極端に評価が偏っていたりという現象が観察され、意見の過激化や分極化を引き起こしていると指摘される。本研究では、そのようなオンライン掲示板において、人々の意見が過激化したりする要因はなんなのかということを明らかにすることが目的である。そのため、Yahoo!掲示板を模倣したオンライン掲示板を作り、そこに被験者を集め、書き込みや評価といった相互行為を行ってもらうマクロ社会学実験を行う。本年度は、マクロ社会学実験を実施することはできなかったが、それ以前に行った同様のマクロ社会学実験のデータ分析を行い次のようなことを明らかにした。匿名掲示板では、非匿名の掲示板と比べて、コメントの毒性値が平均的に高くなった。また、否定的評価と肯定的評価が蓄積していくメカニズムを動的ネットワーク分析で分析したところ、まず、否定的評価については、非匿名条件の方が、ランキングという累積的評価の影響を受けやすいことがわかった。これは否定的評価については社会的な累積が発生し、それが相互行為の秩序を形成するという行為と社会構造のフィードバックが見られることを意味する。一方で、肯定的評価についてはそのような累積的効果は見られなかった。先行研究でよく見られる累積的効果がなぜ見られなかったのかを明らかにするのは今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に実施する予定だったマクロ社会学実験のが実施できなかった。その理由は、オンライン掲示板における、人々の行為についての先行研究や理論の整理が遅れ、仮説を立てることが遅れたためである。そのため、実験のセッティングを決めるのが遅れ、それを実装することが本年度中には困難になった。ただし実験のセッティングは本年度中に決めることができたので、次年度はそれを速やかに実装に移し、実験を実施することが可能と思われる。そのため、研究の遅れは致命的なものではなく、軽微なものと考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記に記載したような、以前の実験の分析から明らかになった、肯定的評価と否定的評価の非対称性についてなぜそのような行動パターンが見られるのかというメカニズムを明らかにすることが今後の研究の一つの課題である。そのために、まずは以前の実験参加者に聞き取り調査を行い、個人の動機を明らかにする。次にその行為を引き起こすような実験上のセッティングを作り上げ、その行為が本当に非対称性を引き起こす原因になっているのかという仮説を検証する。また、そのような個人の動機が、理論上どのように位置づけられるのかを明確にするために、オンライン空間における象徴的行為理論の理論的検討を行う。次年度はこのように仮説の構築と検証を速やかに行い、理論的検討に入る予定である。またその結果を、日本心理学会、数理社会学会、計算社会学会など異なる分野の学会で発表し、それぞれどのような評価を受けるのかを確認しつつ、有益なコメントをもらい、さらなる研究の発展に役立てたい。
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