研究課題/領域番号 |
23K01848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 客員研究員 (80159441)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 就労支援 / 生活困窮者自立支援法 / 就労機会の創出 / 就労困難者 / 柔軟な働き方 / 就労の場づくり |
研究開始時の研究の概要 |
最近、就労に困難を抱える人々への就労支援が注目されるようになり、生活困窮者自立支援法のなかに新たに就労支援の事業が導入された。就労支援は社会的包摂の観点から重要な意義をもつが、就労支援を受けても一般就労に結びつかないケースは少なくなく、被支援者の就労の場をいかに確保するかが、重要になっている。本研究では就労に困難を抱える人々にむけた「就労の場」をどのように確保するか、その課題について検討する。そのため、就労準備支援事業の「出口」の実態を把握するとともに、就労に困難を抱える人にむけた仕事の「切り出し」、就労の場の創出などの事例を調査し、就労困難者に適した働き方、また就労の場づくりの条件を考える。
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研究実績の概要 |
本研究は、生活困窮者自立支援法によって就労支援が事業化されたなかで、就労が困難な人々にむけて就労の場をどのように確保するか、その課題について検討することを目的とする。 就労支援は就労に困難を抱える人を対象にそれぞれの状態や特性等に対応した段階的な支援を行うことであるが、そうした支援にも関わらず一般就労に結びつくことが難しい人が多いことは、これまで認識されてきた。しかし、就労支援によって被支援者の状態に変化が出てくれば、それは支援の成果ともいえる。実際、生活困窮者自立支援制度による就労準備支援事業の効果について、支援団体による評価によれば「自立意欲の向上・改善」や「社会参加機会の増加」の効果が2~3割の団体で認識されている。一方、「一般就労開始」「就職活動開始」等就労面での効果は14~15%である。この事業は直接に就労に結びつけることが目的ではないが、このデータから就労支援の難しさがわかる。 また、就労準備支援事業利用者のその後の状況をみると、就職した者は21.4%と少ない一方、「自立支援相談機関の就労支援に至った」者は28.4%であり、引き続き就労支援を必要としている人が多い。さらに支援プランが終了後のつなぎ先をみると、福祉事務所が25.9%、障害者就労支援事業所が17.1%、その他の障害者支援機関・施設が12.2%であり、この事業は別の社会福祉サービスにつなげる役割を果たしているといえる。 一方、就労準備支援事業ではアセスメントや就労支援プログラム等は実施主体である自治体に任されているが、自治体ごとのバラつきが大きいという特徴をもつ。これにたいし韓国の就労支援政策では、参加者の労働能力のアセスメントにもとづき、就労維持型、社会サービス型、インターン型、市場参入型の4つに区別した自活事業を国の責任で提供することになっている。こうした仕組みは日本の就労支援政策にも参考になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、生活困窮者自立支援法の下での就労支援の目標や取り組み等の実態を明らかにし、日本の就労支援政策の特徴や政策課題を検討することを目的とした、先の研究プロジェクト「就労困難者にたいする就労支援の目標と成果の多面性、柔軟性に関する調査研究」(基盤研究(C)課題番号19K02236)を引き継ぎつつ、就労支援政策を通じて就労に困難を抱える人々にむけた「就労の場」をどのようにして確保してゆくか、その課題について検討することを目的としている。そこでの基本的論点は、就労にさまざまな困難を抱える人に適した働き方はどのようなものであり、そうした就労の場をいかにつくるか、その体制を検討することである。 本年度は、本研究プロジェクトの初年度であるが、先行する研究プロジェクトの取りまとめが遅れたため聞き取り調査は行えず、就労準備支援事業を利用した人々の支援後の状態の変化や就労状況等について、厚生労働省による就労準備支援事業の事業実績のデータで把握するなど、本研究の出発点となる、就労支援の「出口」の現状について整理することが中心になった。また、韓国の就労支援政策についての研究書、松江暁子『韓国の公的扶助』が刊行されたこと、そして韓国での研究交流の機会があったため、韓国の就労支援の仕組みや自活事業などについて理解を深めることができた。韓国の就労支援政策は、就労困難者にたいする日本の支援政策、とくにアセスメントや就労の場づくりに有益な示唆を与えていると考えられる。 次年度からは、就労支援に取り組む団体への聞き取りなどを通じて、就労に困難を抱える人々にむけた「就労の場」づくりの事例を集めるとともに就労の場づくりの課題について議論を進める計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、先行する研究プロジェクトの取りまとめが遅れたため、本研究の取り組みを十分に進めることができなかったが、次年度からは、就労支援団体への聞き取りなどを本格的に行い、就労支援の取り組み実態に即して、本研究の基本的論点である、就労に困難を抱える人に適した働き方はどのようなものであり、そうした就労の場をいかにつくり出すか、その体制について検討を進める予定である。 そのため、就労準備支援事業に取り組む自治体や受託団体への聞き取りを通じて、生活困窮者自立支援法の就労準備支援事業を利用した者の就労/不就労やその後の状況などについて事例を収集する。就労支援団体の就労機会拡大の取り組みについても把握する。そのうえで、一般就労に結びつく支援はどのようなものか、また一般就労を困難にしている要因は何か、就労支援スタッフへの聞き取りを行いたい。 その一方、職場体験などによって就労支援の被支援者を受け入れている企業やNPOなどにたいして、受け入れの経緯や体制、勤務の体制、仕事内容、受け入れによって生じた課題等について聞き取り調査を行う予定である。そのなかで、どのような働き方であれば就労が可能なのかについて、関係者の意見を聞く。 さらに、就労支援の被支援者にたいして、彼らにふさわしい仕事を「切り出す」工夫をしている支援団体や被支援者の受け入れ組織を探し、実際にどのように仕事を「切り出し」ているか、事例を調査する予定である。これらの調査を通じて、就労の場づくりの条件を考える。
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