研究課題/領域番号 |
23K01860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
中嶌 洋 中京大学, 現代社会学部, 教授 (00531857)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 養老 / 老人福祉 / 理念的枠組みの転換 / 許容率 / 老人福祉費 / 家庭養護婦派遣事業 / 老人家庭奉仕員制度 / 老人福祉法 / 森 幹郎 / 瀬戸新太郎 |
研究開始時の研究の概要 |
家庭養護婦派遣事業の普及過程や、地方の先例が法制度化に与えた影響については未解明なままであり、人々の人生を左右する法制度化に至る背景や影響の解明という大きな課題が残されている。本研究では、「家庭養護婦派遣事業」が「老人家庭奉仕員制度」へと転換していく過程に着目し、1950年代から1960年代を主な対象時期とする。同事業の普及過程及び政策形成への連動の究明に焦点化し、次の3点を研究課題とする。課題①1950年代の家庭養護婦派遣事業の実態の解明、課題②1950年代後半における同事業の地方自治体・関連組織への普及の検討、課題③1960年代前半における旧労働省・旧厚生省等による同事業の摂取の究明。
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研究実績の概要 |
【論文】 中嶌洋「森幹郎の老人福祉対策技術指導派遣(1966年6月1日~14日)を通して見た沖縄県老人福祉施 策の位置」『社會科學研究』 44(2) 93-115ページ,2024年.中嶌洋「日本・印度・中国・台湾・韓国における『孝(孝道)・敬老・養老』の 国際比較研究 」『社會科學研究』 44(2) 63-92ページ,2024年.中嶌洋「森 幹郎における海外視察研修(1963年7月~8月;1969年2月~10月)の行程と成果の検証 」『社会学論集』 (23) 23-43ページ,2024年.中嶌洋「『老人福祉』理念はどのように考想されたのか」『社会学論集』 (23) 45-60ページ,2024年.
【学会発表】 中嶌洋「森 幹郎の老人福祉対策技術指導派遣(1966年6月1日~14日)を通して見た沖縄県老人福祉施策の位置――1960年代の地方の老人福祉行政への照射」社会事業史学会全国大会(第51回)於 淑徳大学 2023年5月13日.中嶌洋「敬老思想の転換に潜む共同体的相互扶助と『官民一体』の構図――戦後老人福祉施策の歴史的検証」社会政策学会春季大会(第146回)於 立教大学 2023年6月4日.中嶌洋「『老人福祉』理念はどのように考想されたのか――第2回~第6回社会福祉審議会小委員会(1962年5月4日~7月31日)の議論を中心に」日本介護福祉学会全国大会(第31回)於 大阪人間科学大学 2023年9月10日.中嶌洋「日本・印度・中国・台湾・韓国における『孝(孝道)・敬老・養老』の国際比較研究―日本は何を摂取し何を放棄したのか」中国社会史学会慈善史学会(第3回) 於 中国海洋大学(中華人民共和国青島市) 2023年10月14日.中嶌洋「森 幹郎における海外視察研修(1963年7月~8月;1969年2月~10月)の行程と成果の検証――老人福祉法成立直後に海外から受けた影響に着目して」日本社会福祉学会秋季大会(第71回)於 武蔵野大学 2023年10月15日.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,長野県上田市で発祥したとされる家庭養護婦派遣事業がいかにして国の老人家庭奉仕員制度へと発展したのかを解明することを目的とし,その経緯についての史資料を収集・分析している.とりわけ,1960年代前半頃から見られた「老人福祉」への気運が,従前の保護施策の継続や「老親扶養主義」が内包されつつ展開したことで,内実と隔たる形で「養老」から「老人福祉」への理念的枠組みの転換が模索されていたことが一つの要点となると考え,この点を掘り下げた.研究方法は,財政調査会編(1951-1984)『國の予算』各年をはじめ,各種厚生行政関連資料を分析した.その結果,理念転換の実質的効果は1970年代に入り見られ,物事への自明視や理念転換への不問という態度が,理念上のみならず,社会の周縁に留め置かれた高齢者や生活困難をも滞留させること,人々は支配的な価値観が創造した像に収斂されやすく,対抗心や異存をもちにくいこと,理想像からはみ出した一部の無理解な高齢者への処遇が理念的枠組みの転換という方便により,より厳格になる可能性があることが明かされた.
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今後の研究の推進方策 |
理念的研究では,複層的視点の下,客観的データを基に,理念と実態との往復による省察が求められる.今後の研究課題としては,「老人福祉の時代」の一つの旗印にされていた老人福祉法成立(1963年)の背後に隠されていた政治戦略や政策的意図を精査することである.具体的には,瀬戸新太郎,森幹郎,伊部英男など,ある一部の熱心な関係者たちが関与していたとされるが(John Creighton Campbell=三浦・坂田 1995:155-6),決して厚生官僚への着目のみで把握できるものではない.なかでも,官僚主導でのとり組み以前に主導権を握っていたとされる自由民主党政務調査会・老齢対策部会などの政治家の思想及びその背景を手がかりにしつつ,「老人福祉」理念そのものの形成過程を探究し,その上で,「養老」から「老人福祉」への理念的枠組みの転換の実相についてさらに掘り下げていきたい.
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