研究課題/領域番号 |
23K01898
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
大橋 千里 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60462131)
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研究分担者 |
秋口 俊輔 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50462130)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | COPD / 遠隔 / 健康支援 / 在宅患者 / 通いの場 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに我々は外出や社会参加の機会が減少する在宅高齢COPD患者の体調を遠隔で管理する健康支援システムを構築し実用性について検証した。これまでの研究成果をもとに、在宅高齢COPD患者を対象としたリモートによる「通いの場」づくりを目的に以下の2点について取り組む。 1.患者が安心して運動ができる環境と居場所づくりの実現による介護予防・フレイル対策を行うための地域包括ケアシステムの構築。 2. 医療福祉現場での短期・長期実装実験を通じ、患者の病状、身体活動性、運動耐容能、QOL、フレイルリスクの変化から遠隔による地域包括システムの実用性と有効性についての検証。
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研究実績の概要 |
当該年度は、まず以前開発した既存の在宅高齢COPD患者のための遠隔健康モニタリングシステムの再構築に取り組んだ。本システムの患者が使用するディバイスとして新たにスマートウォッチ(Apple Watch)を追加し、Apple Watchとペアリングするためにメインディバイスをタブレット端末(iPad)からスマートフォン(iPhone)に切り替えた。それにより、患者は今後日々の健康チェックをiPhoneにて実施できるようになった。また、Apple Watchを追加したことで患者の歩数、消費カロリー、脈拍数、Apple Watch独自の血中酸素ウェルネスのデータの取得が可能となり、それらのデータを健康チェックの回答と一緒にデータサーバへ送信する機能を追加した。これにより、支援者は遠隔からでも患者の健康に関する多様な情報をiPadにて確認することが可能となった。 また、在宅患者らと支援者によるリモートでの「通いの場」や「運動」の実施を想定し、患者の5秒毎の脈拍数を支援者はPCにてリアルタイムで確認できるアプリケーションを新たに構築した。次年度はCOPD患者の病状を遠隔から多面的に評価するために、脈拍数に加えて一定時間で自動取得する血中酸素ウェルネスのデータも遠隔のPCにてリアルタイムで確認できる機能を追加することを目指す。 高齢者のフレイル予防には文化活動など人との関わりを伴う社会参加が重要である。しかし、特に酸素療法を実施している在宅COPD患者にとって外出を伴う社会参加は容易ではない。そこで、コロナ禍を含む4年間私たちが継続して毎日測定した在宅COPD患者の身体活動量および定期的に評価した健康関連QOLのデータをもとに、本研究が取り組んでいる在宅高齢COPD患者を対象とした遠隔健康モニタリングシステムとリモートによる「通いの場」の必要性について、論文および国内学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、以前に我々が開発した双方のiPadで患者と支援者を繋ぐ在宅高齢COPD患者のための遠隔健康支援システムの再構築に取り組んだ。おおむね計画通り実行することができたが、一部新規機能の追加に遅れが生じた。 まず患者側システムの構築についての進捗状況である。患者用システムの新規ディバイスとしてApple Watchを追加した。それに伴いApple WatchとペアリングするためにiPhoneをiPadに替わるメインディバイスとし、新たにiPhone版アプリケーションを構築した。以前のアプリケーションでは、患者は6項目からなる健康チェックの入力に加え、別途腰部装着型の活動量計で測定した歩数と消費エネルギーのデータを健康チェックの画面上に手入力をしなければならなかった。よって、誤入力の予防、操作の簡易化のためにApple Watchで計測したデータ(歩数、脈拍数、消費カロリー、血中酸素ウェルネス)を健康チェック画面に表示するとともに、データサーバ送信できるようにした。加えて同アプリケーションにカレンダー機能を追加し、指定した日のデータをグラフ表示できるようにした。 支援者側システムについての進捗状況は以下のとおりである。当該年度は支援者側のiPadアプリケーションは大幅な変更は行っていないが、追加した計測項目(脈拍数、血中酸素ウェルネス)のデータもグラフ表示できるようにした。利用対象となるCOPD患者は高齢者が多く、独居の患者の割合も低くない。そこで、患者のシステム利用頻度や脈拍数、血中酸素ウェルネスなどの支援者側のシステムに表示される患者データから体調の変化等を判断し、警告を表示する「独居患者見守りアラート機能」の追加を当該年度は実施することができなかった。よって、次年度はこの機能の追加を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず遠隔健康モニタリングシステムの機能の拡張に取り組む。患者側アプリケーションでは、現時点のプロトタイプの表示画面を実際に高齢患者に確認していただき、表示方法や操作方法についての意見を集約し、必要に応じてブラッシュアップする。支援者側アプリケーションについては、当該年度に実施できなかった「独居患者見守りアラート機能」の追加を試みる。加えて、患者側アプリケーションから送信されたデータの取得と、当該年度に追加した項目(脈拍数、血中酸素ウェルネス)のデータも含めたグラフ表示機能の拡張に取り組む。 また、次年度はこれまでに再構築したプロトタイプのシステムについて3か月間の短期実装実験を行う。まず、研究協力機関である長野県内の東長野病院、飯綱病院に通院する在宅高齢COPD患者に対してインフォームドコンセントを実施し、同意を得た患者に対し事前測定を行う。次年度の研究対象患者は3名を予定している。事前測定項目は、腰部装着型の活動量計を用いた2週間の身体活動量(身体強度別活動時間、歩数)、質問紙「SF-36」を用いた健康関連QOLを測定する。患者の肺機能および病態に関するデータについては、両病院の承諾を得て提供してもうこととなっている。実装実験期間中の3か月間、および事後の2週間まで継続して活動量計による身体活動量の測定を実施する。そして、事後直後に健康関連QOLの測定を実施するとともに、患者から本システムの使用感に関するアンケート調査を実施する。短期実装実験後に再度本システムのブラシュアップを行った後に、6か月間の長期実装実験の実施に向けた準備を進める。これらの研究結果をまとめ、次年度は国内学会にて2件成果報告をする予定である。 なお、本研究を遂行するにあたり、富山大学病院、東長野病院、飯綱病院および富山高専の倫理委員会にて承認を得ている。
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