研究課題/領域番号 |
23K01932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小西 祐馬 長崎大学, 教育学部, 准教授 (90433458)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 子どもの貧困 / 乳幼児期の貧困 / 不平等 / 保育 / 就学前 / 子育て支援 |
研究開始時の研究の概要 |
「子どもの貧困」が社会問題化して久しいが、「乳幼児期の貧困」についてはまだ研究は少なく、実践においても早期発見・早期対応は困難な状況が続いている。本研究の目的は、貧困状況にある乳幼児とその家族が直面している困難はどのようなものであり、誰が・いつ・どのように支援すれば問題の解決につながるのかを明らかにすることである。そのために、①乳幼児を抱える家族の貧困と複合的困難のあらわれ方、②保育所・子育て支援施設・保健センター等の「貧困」に対する認識とかかわりの現状について明らかにしたうえで、③乳幼児を育てる家族への支援はどのようなあるべきかを検討する。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度は、先行研究・関連研究の収集とその検討、調査計画の立案、加えて「北海道・札幌市子どもの生活実態調査」のデータを用いた論文(小西2024)の執筆等を進めてきた。この論文においては、2歳児または5歳児を育てる保護者約5,000人から得られた調査結果を分析し、乳幼児を養育する家族の所得・生活・子育てにおける貧困・不平等の一端について、以下の通り明らかにした。①乳幼児期においては、学童期以降に比べて貧困・所得格差の拡大状況は緩やかながら、10~15%もの家族が貧困線を下回る所得水準のもとで生活していると推測された。貯金なし・借金・生活(衣食住)の困窮・支払いの滞納も広範囲に見られた。また、コロナ禍により、特に低所得層が失業や収入減少に直面していた。②上記のような経済的困窮状況が乳幼児を育てる親に対して不安やストレスを高め、親の健康状態の悪化までもがもたらされていることが示唆された。こうした不安・悩みを緩和する可能性のある社会的つながりについても、低所得層ほど断たれていること(=社会的孤立)がわずかながら推測された。そして、コロナ禍によって、精神的な落ち込みや感情的になってしまう場面も、低所得層の親ほど多くなっていた。③乳幼児への直接的な影響という点では本調査で得られた知見は多くはないが、コロナウイルス感染拡大との関連から、2歳児・5歳児に大きな影響がもたらされていることが確認できた。 乳幼児期における貧困状況については研究成果の蓄積がほとんどなされていない中、今年度の上記の実績は問題の解明に一歩近づく成果だったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究・関連研究の整理と量的データの分析を予定通り行った。ただ、乳幼児を育てる保護者へのインタビュー調査計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
保護者への質的調査を通して「乳幼児期の貧困とは何か」を明らかにする。また、保育所は、貧困が広がる現状においてどのような役割を担っているのかを捉えた上で、保育士がどのような認識を持っているのか、保育所において貧困はどのようにあらわれているのか等を明らかにする。保育士・支援者に貧困はどのように見えているのか、貧困にある保護者をどのように捉えているのかを検討する。「受容」「共感」が必要とはいうものの、そこには難しさがあるのではないか。保育所・子育て支援機関での質的調査を通して明らかにする。 以上の保護者への調査、保育士・支援者への調査で得られた結果を総合的に分析したうえで、保育所が貧困対策においてはたす機能・役割、その他の子育て支援機関の機能・役割を検討する。保育所・幼稚園・認定こども園・子育て支援センター・行政等の連携について検討し、新たな社会的支援の方策を構想する。
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