研究課題/領域番号 |
23K01949
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
打保 由佳 中部学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (70458412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 障害者運動史 / ソーシャルアクション / 社会的排除 / ライフヒストリー法 / 障害者運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、長野県上田市の障害者運動団体での実践経験と2015年より同団体を対象に実施しているインタビュー調査から導き出したソーシャルアクションを行う上での視点を着想とし、先行研究とは異なる手法「ライフヒストリー法」を用いて、ソーシャルアクションに関する研究を試みる。理論研究ではアメリカの「合意/闘争・葛藤モデル」を考察した上で、新たに日本のソーシャルワーカー養成に適応する理論として提示された「協働モデル」を批判的に検証し、調査研究ではライフヒストリー法を用いて「長野県上田市の障害者運動40年の記録」を作成する。以上、理論と調査研究から先行研究とは異なる視点を持つ新たなモデルの構築を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は差別による権利侵害の社会的責任を問い、抑圧構造の変革を求めるソーシャルアクションの根幹を改めて提示し、社会的排除論を視角とした「障害者運動史」の分析から、協働モデルを批判的に検証することを目的に取り組んでいる。 理論研究としては、日本のソーシャルワーカー養成において、ソーシャルアクションの新たなモデルとして提起された協働モデルを取り上げ、ワーカーが判断能力の低下によりニーズを表出できない、また、既存の制度で対象とならない人々の権利を擁護するための代弁機能を担い、法改正や創設のために行政交渉を行う技術であることが強調されている。しかし、筆者はこのモデルが制度・政策の構造的変化を促すことを重視するあまり、社会構造が生み出す社会問題を捉える視点が弱くなり、構造的な変革を視野に入れたソーシャルアクションの機能を果たせないことを考察した。 調査研究では、障害者運動史の全体を構成するために障害者運動家Aさんへのインタビューを実施し、ライフヒストリーを作成した(これまで未執筆箇所であった1980年代後半~2000年代を作成し、研究会誌『語りの地平 vol8』(2023年11月刊行)の研究ノートとして掲載)。 社会的排除を視点にライフヒストリーを見ると、施策として障害者差別をなくし、共生社会を目指す方向がとられる一方で、社会の人々に根付いている差別意識は簡単になくならないこと、行政交渉によって制度を改正、創設したとしても、障害者の地域移行を阻む問題が発生することが明らかとなった。従って、協働モデルが強調する行政交渉では、法改正や創設をなし得ることができたとしても、問題を引き起こしている社会の人々の差別意識は解消されず根本的な原因が残ることが指摘できる。そのため、協働モデルの考え方では、ソーシャルアクションが本来持つべき核となる機能を果たせないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究として、日本におけるソーシャルアクションの先行研究を収集し、既存の研究における課題を整理することができた。また、調査研究としては、これまで未執筆箇所であった障害者運動家Aさんのライフヒストリーの1980年代後半~2000年代を作成し、研究会誌『語りの地平 vol8』(2023年11月刊行)の研究ノートとして投稿し、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
現在、社会変革を視野に入れたソーシャルワークが、ソーシャルアクションのみならず、支援をする上での視点として、クリティカルソーシャルワーク・ラディカルソーシャルワーク・マクロソーシャルワークといったように多数登場している。そこで、今後は、各々のソーシャルワークに関する理論的な構造と開発にかかわる歴史的背景を整理することを課題とする。 また、調査研究としては、障害者運動史を作成するため、運動にかかわった人びとへのインタビューを実施する(11名を予定し、中部学院大学中部学院大学短期大学部倫理審査にて承認済)。
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