研究課題/領域番号 |
23K02008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
平松 紀代子 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (80290211)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 子育て環境 / 育児文化 / 育児情報 / 育児情報源 / 少子化 / わらべ唄 / 育児困難感 |
研究開始時の研究の概要 |
1990年代から多様な施策により子育て環境は改善されてきたが、育児困難感が軽減されたとは言えない状況ある。育児負担は減るはずの状況で、なぜ育児困難感が軽減されないのだろうか。なぜ現代では子育て支援が必要なのか、歴史的視座から子育て環境の現代的特徴の析出を試みる。 次に、育児の不安や負担を乗り越え子育てを楽しめる環境を模索するために、0歳から2歳の第1子の親を対象にアンケート調査を行い、育児を楽しめる子育て環境の条件を探る。さらにグループインタビューと個別インタビューを実施し、子育て環境を改善するためのニーズアセスメントを行い、今後の子育て支援策展望の鍵となる知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
社会的な子育て支援策がなくても育児は営まれてきたが、なぜ現代では子育て支援が不可欠なのかその根本的問いに向き合い、望ましい子育て環境に求められる条件を探ることを試み次の3点の知見を得た。 1)近代以降人口転換を経験すると同時に、育児負担は母親に偏り、選択的に意思決定されるライフイベントとなった。統計データをみると出生力は1920年代から少産化となり、戦後のベビーブーム直後から少子化傾向であったが、1990年代に認知されるまでタイムラグがあり、当該社会の動向を客観的に認知する困難さが示された。国民生活白書の記述をたどると、少子化傾向とは逆にベビーブーマーに対する養育教育ニーズへの対応が注目されていた。また近年の女性就労率の上昇の内訳は非正規雇用の増加によるものである状況だけでなく、1950年代の方が女性就労率は高い事実があり、耳にする限定的な情報に捉われず長期的時間軸で俯瞰的に物事をみる重要性が示された。 2)育児情報に関わる先行研究をまとめ、2018年に実施したアンケート調査のデータを分析し「育児情報源と育児情報の獲得状況」を執筆した。インターネットが普及した現代ではWEB・SNSがマルチな情報源であるが、育児に関しては今なお人を介した情報伝承が求められていること、両親や子育て仲間に頼れない場合に保健師が代替的役割を担っていることが示された。 3)育児や生活の知恵を口承したわらべ歌に注目し、岩手県遠野市を訪れた。わらべ唄を伝承研究した阿部ヤエ氏の資料には、文字を持たなかった人に子育ての方法や生き方、庶民の歴史を伝えた歴史的日本文化が示されていた。注目すべきは、わらべ唄は体験や遊びを通して知恵を子どもに授けるもので、五感を働かせ生きる喜びを感じながら知識を授ける手法とされていることである。育児情報があふれる現代でも、知識だけではない情報伝承の手段を模索する必要があろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた研究概要は大きくわけて4点に大別される。子育て環境の変遷に関わるデータ収集および社会文化的側面から子育ての様子を歴史的調査する2点については、概ね順調に進展している。統計データを収集して得た知見について、現在「現代の少子化傾向を客観的に把握する試み(仮)」と題して論文としてまとめている途上である。社会文化的側面からのアプローチのために、岩手県遠野市を訪問して資料を収集し、わらべ唄を切り口に知恵の伝承についての知見を得た。もともとは婦人雑誌、育児雑誌の記述からどのような生活、文化、価値観のなかで育児されてきたのかを把握しようと計画していたが、切り口を明確にすることを意図して国民生活白書を通して育児や少子化傾向に関する記述を辿った。 3点目の育児情報に関して先行研究をレビューしつつ、2018年に実施したアンケート調査のデータをあらためて分析しなおし「育児情報源と育児情報の獲得状況」として論文にまとめた。その成果を次年度の調査研究に活かして調査項目を検討しているところである。 4点目の改正された育児休業制度については、概要を整理し育児休業取得率の推移等の現状把握を試みた。さらに、次年度実施予定の子育て環境に関するアンケート調査に育児休業関連の項目を入れるにあたり、プレ調査と位置付けてこれから親世代となる大学生における育児休業に対する意識調査を実施し、現在そのデータを分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り子育て環境に関するアンケート調査を調査会社に委託して実施予定である。本研究を進める中で男性の意識を把握することの重要性を示す知見が得られたことから、予定していた調査対象を男女半数ずつを指定して実施することを検討中である。 アンケート調査項目については、基本的属性、親となる前の体験、育児困難感尺度あるいは子育て観尺度、育児情報源、育児情報の獲得状況、育児休業に関する質問項目で構成するよていである。しかしながら物価高騰ゆえに当初得ていた見積金額での実施が困難であることが予想されるため、研究課題に即して調査項目を再度精査する。 調査会社に委託後データを回収するまでの期間には、さらにその後実施予定の子育て環境に関するニーズアセスメントのグループインタビュー実施に向けて準備を行う。グループインタビューは半構造化面接の形で実施するが、その内容を検討する。
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