研究課題/領域番号 |
23K02024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田崎 裕二 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (90390434)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | マツタケ / 香気生合成機構 / 桂皮酸メチル / 1-オクテン-3-オール / 桂皮酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼ / ジデオキシゲナーゼ / 遺伝子発現 / 酵素化学的性質 / マツタケの香り / 1オクテン3オール / 香気生合成酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
マツタケの主要な香気成分は桂皮酸メチルと1オクテン3オールである.しかし,これらの香気成分の生合成酵素の機能について不明な点が多いため,生合成機構の全貌は明らかになっていない.マツタケのCCMTの組換えタンパク質を産出し,酵素化学的性質を調べて機能を解明し,桂皮酸メチル生合成機構を明らかにする.また,1オクテン3オール生合成に関わると推測されるDOXの組換えタンパク質を産出し,酵素化学的性質を調べてDOXの機能を解明する.さらに,ヒラタケでマツタケのCCMTとDOXを発現させ,それらが香気の生成に関与することを確かめる.
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研究実績の概要 |
マツタケの特徴香である桂皮酸メチルは,マツタケとその近縁種のみで検出される.しかし,それ以外のキノコにも桂皮酸メチル生合成に関わるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)とその基質(フェニルアラニン,Phe)は存在する.そこで,桂皮酸メチル生合成に関わるもう一つの酵素である桂皮酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼ(CCMT)の機能を解明し,マツタケとその近縁種のみで桂皮酸メチルが検出される要因を明らかにする.また,マツタケの全体の香りに関わる1-オクテン-3-オール生合成への関与が推測されるジオキシゲナーゼ(DOX)の機能を解明し,マツタケの香りが収穫後に減少する理由を明らかにする.そこで,本研究では,CCMTとDOXの酵素化学的性質と発現様式を調べて,それらの酵素の機能を解明する. 2023年度においては,マツタケCCMTの2つの候補遺伝子の塩基配列を決定した後,それらのcDNAを用いて組換えタンパク質を産出した.しかし,それらの組換えタンパク質にCCMT活性は検出されなかった.一方,マツタケの3つのDOX遺伝子のcDNAを用いて産出した組換えDOXの2つで,DOX活性が検出され,酵素化学的性質についての知見を得た.また,マツタケの菌糸体と子実体において,3つのDOX遺伝子の発現様式と1-オクテン-3-オール量を調べ,これらに相関関係がないことを見出した.これらの結果は,マツタケにおけるDOXの機能の解明に貢献し,マツタケの全体の香りが収穫後に減少する要因を解き明かす大きな手掛かりとなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画②『組換えCCMT・DOXタンパク質の産出と性質化』において,大腸菌発現系を用いて産出した各組換えタンパク質の活性を測定した.2つの組換えCCMTでは,活性が検出されなかった.3つの組換えDOX(rTmDOX1,rTmDOX2,rTmDOX3)では,rTmDOX1とrTmDOX2のみで活性が検出された.一方,rTmDOX1とrTmDOX2の精製後,活性はほとんど検出されなかったため,大腸菌粗酵素液を用いて酵素化学的性質を調べた.rTmDOX1はpH 5.0~7.0,rTmDOX2はpH 6.0~7.5で高い活性を示した.また,rTmDOX1は30℃,rTmDOX2は25℃で最も高い活性を示した. 計画③『マツタケ菌糸体と子実体中のCCMT・DOXの基質の定量』においては,2023年がマツタケが不作の年で,長野産マツタケが購入できなかったため,マツタケ菌糸体と子実体に存在するCCMTとDOXの基質を定量は,2024年度に実施する. 計画④『CCMTとDOXの遺伝子の発現量の測定』において,3つのDOX遺伝子のmRNA量をリアルタイムRT-PCR法で測定した.子実体の生長過程と子実体の各部位において,それぞれの遺伝子の発現様式は異なっていたため,それぞれの機能に違いがある可能性が示唆された.また,収穫後保存した子実体では,3つのDOX遺伝子の発現量はいずれも減少する傾向にあった.さらに,香気成分1-オクテン-3-オールの材料リノール酸が供給された菌糸体では,3つのDOX遺伝子の発現量はいずれも減少した.これらの結果より,3つのDOX遺伝子の発現量と1-オクテン-3-オール量との間に,相関関係は見出せなかった. 上記のように,DOX遺伝子に関する研究は計画通りに進んでいるが,CCMT遺伝子の単離ができていないため,組換えCCMTの作出とCCMT遺伝子の発現量測定も完了していない.
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今後の研究の推進方策 |
マツタケ全体の香りに関わる1-オクテン-3-オールの生合成機構を解明するため,2024年度においては,組換えDOXの酵素化学的性質を明らかにする.また,マツタケの菌糸体と子実体中のCCMT・DOXの基質を定量して,それぞれの生成物である桂皮酸メチルと1-オクテン-3-オールとの関係を明らかにする.さらに,マツタケにおけるDOXの発現量をタンパク質レベルで調べて,1-オクテン-3-オールの生合成との関係を明らかにする.これらの目的を達成するため,以下の研究の実施を予定している.また,CCMT遺伝子の関する研究内容は,下記の内容を遂行しながら,再検討する. 計画②『組換えCCMT・DOXタンパク質の産出と性質化』 2023年度から継続して,大腸菌発現系を用いて産出した組換えDOXの酵素化学的性質を明らかにする. 計画③『マツタケ菌糸体と子実体中のCCMT・DOXの基質の定量』 マツタケの菌糸体と子実体に存在するCCMTの基質PheとDOXの基質リノール酸を定量し,それぞれの生成物である桂皮酸メチルと1-オクテン-3-オールとの関係を明らかにする.Pheとリノール酸の定量は,GC及びGC-MSを用いて行う. 計画④『CCMTとDOXの遺伝子の発現量の測定』 上記の計画②における3つのDOX(TmDOX1,TmDOX2,TmDOX3)のタンパク質を定量するため,ウェスタンブロットを行う.抗体はポリクローナル抗体を外部委託で作製する.試料には,昨年度にmRNAの定量に用いた子実体・菌糸体を用いる.これにより,子実体と菌糸体における各酵素タンパク質の存在の量,場所,時期,誘導といった発現様式がタンパク質レベルで分かる.
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