研究課題/領域番号 |
23K02070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
周 一川 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (00303008)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 中国人日本留学 / 東京帝国大学 / 京都帝国大学 / 中国人留学生 / 特別講習会 / 大学院の門戸開放 / 留日学生統計 / 日華学会 / 帝国大学 / 留学教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、帝国大学における留学政策と中国人留学生の実態、その留学の背景、中国社会と近代教育への役割、および歴史的な位置づけを明らかにするものである。 今まで系統的に研究されたことのなかった東京帝国大学と京都帝国大学の中国人留学生のデータを精査した上で、その全体像を描き出し、両帝大の留学生政策の相違からそれぞれの留学生教育の特徴及び留学生の動向(人数、専攻、在籍身分など)との関連性を見つけ出したい。また、留学生の帰国後の行方を追跡し、中国社会、特に教育界に与えた影響などを分析する。この研究により、中国人留学生を通じて日本帝国大学の国際的な役割についての一側面を解明することができる。
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研究実績の概要 |
本研究は、各帝国大学における中国人留学生の実態、その留学の背景、中国社会と近代教育への役割、および歴史的な位置づけを明らかにしようとするものである。特にこれまで系統的に研究されていない東京帝国大学と京都帝国大学の中国人留学生のデータを精査した上で、その全体像を描き出し、それぞれの特徴を見つけ出していきたい。今年度は、その実態及び特徴などを明らかにするために、両帝大の中国人留学生に関する資料収集とデータ整理を中心に作業を進め、同時にデータの解析も行った。主な成果は以下の三つである。 ①名簿リストの作成:『東京帝国大学一覧』、『京都帝国大学一覧』、日華学会編『中国人留学生名簿』(1927-1944年、18冊)の「東京帝国大学」と「京都帝国大学」に該当する部分から関連データを抽出して整合し、昭和期における両帝国大学の「中国人留学生名簿」を作成した。 ②資料収集:中国の上海図書館などで帰国後の留学生について関連資料を収集した結果、複数の元留学生の帰国後の行方が判明した。他に東京大学文書館、国会図書館、アジア歴史研究センターなどで関連資料を収集した。 ③論文の執筆:本研究の研究成果の一つとして「京都帝国大学における中国人留学生データの解析 ―昭和初期(1927-1937年)の入学者を中心に―」(神奈川大学『人文学研究所報』、No.71、2024年3月)という論文で発信した。また「東京帝国大学における中国人留学生データの解析 ―昭和初期(1927-1937年)の入学者を中心に―」という論文は執筆中である。 本年度の名簿整理及び基礎的データの解析により、昭和期における東京帝国大学及び京都帝国大学の中国人留学生の全体像と特徴がほぼ明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費に採択される前すでに中国人帝国大学に関する研究を始め、日華学会編『中国人留学生名簿』(1927-1944年)の複写を完成させて、二つの論文(「帝国大学における中国人留学生(1927-1937年)―人数・専攻・類別―」(日本大学理工学部『一般教育教室彙報』第108号、2020年4月;「帝国大学における中国人女子留学生(1924-1944年)―データ解読と事例分析―」神奈川大学人文学研究所《人文学研究所報》No.68,2022年)を発表した。 2023年度に科研費に採択されてから、本格的に資料収集と両帝大の留学生名簿のデータの整理を開始した。国会図書館のデジタルコレクションから各年度『東京大学一覧』と『東京帝国大学要覧』及び『京都帝国大学一覧』をダウンロードし、まずそれらの資料にある「学生及生徒姓名」から昭和期各年度中国人留学生を抽出して、リストを作成した。さらに、国内外の図書館(国会図書館、上海図書館、東京帝大文書館など)にて両帝大の留学生政策に関する資料及び留学生の留学中と帰国の行方に関する資料を収集した。 それらの基礎的データを整理して他の文献資料との照合を行った結果、両帝大昭和期における中国人留学生の全体像がほぼ明らかになった。そのデータ解析の一部は、「京都帝国大学における中国人留学生データの解析 ―昭和初期(1927-1937年)の入学者を中心に―」という論文で発表した。また、現在執筆中の「東京帝国大学における中国人留学生データの解析 ―昭和初期(1927-1937年)の入学者を中心に―」は、2024年度に投稿する予定である。 他に明治大正期の各年度『京都帝国大学一覧』の「学生及生徒姓名」から、中国人留学生を抽出し、データ入力は完成したのだが、そのリストの整理と統合などはまだ進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昭和期における両帝大の中国人留学生の基礎的名簿整理と昭和初期のデータ解析を中心に研究を行なってきたが、次年度には明治大正期を中心に両帝大の中国人留学生データの整理、資料調査を進めていきたい。 引き続き、明治大正期の京都帝国大学の中国人留学生リストの整理と統合を進めていくと同時に、同時期の各年度『東京帝国大学一覧』・『東京帝国大学要覧』の「学生及生徒姓名」から、中国人留学生を抽出し、東京帝国大学中国人留学生名簿を作成する予定である。 他には両帝大の留学生政策に関する資料を収集しながら、中国人留学生の回想録からも関連事例を集める。両帝大の明治大正期における中国人留学生の全体像を「明治大正期における東京帝国大学の中国人留学生」(暫定)と 「明治大正期における京都帝国大学の中国人留学生」(暫定)という論文にまとめる。 東京帝国大学と京都帝国大学の中国人留学生全体像と両帝大の各時期の留学生政策が明らかになった時点で、両帝大の各側面の相違もはっきり見えてくるのではあるまいか。更に、中国人留学生を通じて日本帝国大学の国際的な役割についての一側面を解明することができるだろう。この研究で明らかにした過去の経験や教訓は、今後の日本高等教育機関の留学生教育、そして良好な日中関係を築いていく上で役立つに違いない。 数年後に一連の研究成果を『帝国大学における中国人留学生 ―東京帝国大学と京都帝国大学を中心に―』という書物にまとめることができればと考えている。
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