研究課題/領域番号 |
23K02079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大和 真希子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (60555879)
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研究分担者 |
松友 一雄 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (90324136)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 小学校 / 児童の自己効力感 / 学級経営 / 教師の認識 / 授業における教師の見とり / 教師の介入 / 授業実践力 / 教師の見とりと介入 |
研究開始時の研究の概要 |
(1)教師の学級づくりと児童理解に関する分析・考察(インタビュー、参与観察)①学級経営の意図・方向性の抽出、②学級の教室環境の特徴や目的の抽出、③児童個人・集団の現状や変容、成長を捉える教師の認識の抽出 (2)授業計画力・実践力と(1)の関連の分析・考察(指導案検討、授業観察)①授業計画、児童に対する見取り・介入との関連性の分析、②学習効果と生活場面における児童の自己効力感や所属意識等との関連の析出 (3)学習と生活場面の往還に対する総合的考察(フィールドノーツ、参与観察、教諭との情報共有)児童の変容、学習・生活場面の往還を変容させた要因の析出、学級規模の違いによる特質の解明
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、児童の自己効力感を高める教師の力量として、思考・認識を深める授業実践と学級経営との往還を捉え、その具体的な要因や生成状況を明らかにすることである。そのための方向性としては、①教師が目指す学級経営の方向性や児童に期待する力量、その形成過程を抽出し、それらが②授業中の教師の具体的なコミュニケーション(見取りと介入)、そして効果的な学習場面(思考が誘発される場面や話し合いの場面)とどのように結びつくのかを分析・考察することを目指している。 本研究の初年度(2023年度)は、まず、上記①を進めるための起点として、複数の公立小学校での複数の教師と継続的なかかわりをもちながら、学級担任の経験が豊富であり、かつ、学級経営に長けている教師のクラスでの参与観察や教師へのインタビューを行った。それらを通して、学級経営の具体的要素としては、「教師自身がもつ児童に対する認識(児童観)」、「目指す学級の姿・現在の学級の状況認識(学級観)」、「児童に期待する力」、「学級目標などの環境づくりの見通しや工夫」などを明らかにした。次年度(2024年度)に向けて、それらの要素が児童の生活状況や変容にどう結びつくのかを、考察しつつある。 2023年度での大きな成果としては、特に4年生以降の学年において、教師の「児童観」「学級観」といった認識的側面や環境的側面が、児童個人の変容や集団意識に大きな影響を与えること明らかにできた点である。自我や他者意識が芽生える中学年以降、児童は、学級目標等の環境的側面を教師がどのような意図で整え、充実させようとしているのかを見極めることもできつつある。この成果をもとに、2024年は、さらに教師の認識や学級環境の作用をより詳細に捉えつつ、授業計画と授業内の見取り・介入との関連の分析に着手する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の進捗状況としては、研究計画時のとおり、小学校での参与観察とインタビュー に着手し、教師の学級経営の意図や児童観(個々人の特性の把握や期待、個人・集団としての成長や変容、関係性の捉え方)の具体を明らかにすることができた。 調査対象校・学年としては、福井県内(鯖江市惜陰小学校・あわら市芦原小学校・大野市有終東小学校・高槻市立竹の内小学校)であり、特に中~高学年のクラスに焦点化したデータ収集を行った。調査時期は5~11月であり、計10回にわたった。 調査において明らかにできたのは次の3つである。 (1)各教師が持つ学級経営の意図・ねらい・方向性の抽出について:特に4年生のクラ スでは、他者意識の芽生えと自我の葛藤が課題となるため、自分の成果や努力が可視化できるクラスをつくろうとしいたことが明らかとなった。(2)学級の教室環境(学級目標や生活・学習に関わる掲示物)の特徴や目的の抽出:高学年では、学校のリーダーや児童たちのモデルとなることを目指した生活面の目標が多く抽出できた。また、学習面での環境についても、抽象的な言葉や表現と生活経験を結びながら、多くの語彙の獲得を意識できる掲示が多く用いられていたことが明らかにできた。(3)児童個人・集団の現状や変容、成長を捉える教師の認識(児童観)の抽出:(2)のような環境が充実することで、児童が集団への意識を常にもつだけでなく、(1)のように、努力のプロセスを重視してもらえる学級にいることで自信をもてるようになることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、初年度にある程度、明らかにできた学級経営の諸要素の特質や児童に与える影響を整理し、授業の計画力・実践能力との関連の分析・考察(指導案検討、授業観察)に着手する。 まず、上記で述べた、学級経営の方針や教師が目指すべき方向性、学級の環境(掲示や学級通信等)、児童の変容や教師の認識の3要素と、授業計画・児童に対する見取り・介入との関連性の分析を行う。特に、学級経営の意図・ねらい・方向性や、児童観・学級観という認識的側面が、授業における児童に対する見とりや解釈にどのように関連するのかを、詳細に分析する。そして、授業での個々の学習者の学びが、いかに集団の学びを生み出しているのかを分析する。 そして、授業における教師の見とりや介入による学習効果の詳細を明らかにしながら、それらが、生活場面における児童の変容(自己効力感、所属意識、他者との協力関係)とどう結びつくのかを明らかにしていく。具体的には、学習場面で高まる協働性や思考活動が、学級生活での児童の自己効力感、学級への所属意識、他者意識や対話の質をどのように変え、その変容が「集団」の成熟にどう結実するのかを分析する。 2023年度同様、公立小学校で継続的に参与観察とインタビュー調査を行う。授業計画に関する資料収集と教師へのインタビューを行い、授業中は、ビデオカメラ3台による多方向からの記録(教師・学習者・教室全体)を実施し、授業後には、再度、授業者とのカンファレンスにおける対話データを集積していく。
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