研究課題/領域番号 |
23K02094
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
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研究分担者 |
武 小燕 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (00634578)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 政治教育 / 憲法教育 / 市民科 / オーストリア / ドイツ / プロイセン / バイエルン / バーデン / 比較教育史 / 中国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,憲法教育がどのように開始され,また発展したのかという視点から,19世紀以降のドイツ(プロイセン,バーデン,バイエルン,東ドイツ)とオーストリアを比較し,さらに両国を,文化ないし政治体制において異質性の高い日本ならびに中国と比較するという二段階の比較分析を行うことで,近代国家にとって憲法と学校教育が持つ意味の共通性と差異を明らかにしようとするものである。具体的には,各国における主要な憲法典の内容,それらの教育課程ならびに教科書における扱われ方を,それぞれの時期における社会的・政治的背景と結びつけて把握し,その歴史的理解の妥当性を,比較という作業を通じて高めることを目指している。
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研究実績の概要 |
19世紀後半から20世紀初頭のドイツとオーストリアにおける憲法に関する教育について基礎的なデータを獲得するため,研究計画のとおり,前者についてはプロイセン,バイエルン,バーデンの3つの王国をとりあげ,また後者については,ハプスブルク帝国のいわゆる帝冠領に注目して,中等教育を中心に市民科(Buergerkunde),郷土科(Vaterlandskunde)ならびに歴史科の教科書と,同時期の両国で政治教育を論じた書籍・論文を収集した。 教科書の分析からは,20世紀初頭には各地で内容的に共通性の高い市民科教科書が出現したことが確認され,そこからは市民には国家制度や法律についての基礎的知識が必要との認識の広がりが推測される一方,憲法(典)への注目は必ずしも高くはない様子がうかがわれた。 他方,当時の政治教育関係文献については,代表的な論者としてドイツのリュールマン(Paul Ruehlmann, 1875-1933)とオーストリアのフライシュナー(Ludwig Fleischner, 1858-?)に注目し,両者が,それぞれ自国の政治教育の状況をフランスやスイス等の他のヨーロッパ諸国と比較してどのように理解していたのかの分析に着手した。 その結果,両者とも20世紀初頭の時点で,自国における市民意識の発達の遅れを認識し,国家制度と法律に関する知識の獲得を促すことで問題状況を克服しようとしていた様子が確認されると同時に,同様の問題意識は,両国において広範囲に共有されていた様子が推測された。 総じて19世紀後半の時点では政治教育の展開に違いが顕著だったが,20世紀に入る頃には,当時の議論と新たに登場した教材を見るかぎり,かなりの共通性が形成されていたと考えて良いものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツ(プロイセン,バーデン,バイエルン)とオーストリアについての資料調査ならびにその分析は予定通りに実施できており,そこでは研究計画時に想定していなかった発見もあるなど,とりあえず満足できるだけの結果が得られている。それに基づき,2024年6月に日本比較教育学会において,これまでの研究成果の発表を行なう。 他方,同時期の日本と中国の研究については,研究代表者ならびに分担者の研究時間の制約から具体的な作業に遅れが生じており,そのため,現時点では,着手することが予定していたドイツ・オーストリアの事例との比較検討が実現できていない。 以上をふまえると,研究の進捗状況は,想定していたよりも進んでいる部分もあるとは言え,全体的に見れば,やや遅れていると言わざるを得ないだろう。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツとオーストリアについては,基本的に,すでに収集した資料・文献の分析を続けると同時に,その過程で新たに重要性を認められた文献を収集し,読み進めていきたい。なお,これまでの研究から,当時の教員新聞・雑誌に多くのザクセンの教員が政治教育関連の投稿をしていることが判明しており,さらに本研究が注目しているリュールマンもザクセンの出身であることから,これまで注目してきたプロイセン,バーデン,バイエルンに加えてザクセンを新たな研究対象に加えることを検討する。 他方,ドイツとオーストリアの状況の比較から得られた視点を活かしつつ,初年度に十分に実行できなかった,日本と中国における政治教育開始期の状況について分析を進める。まずは教材の分析から開始する予定である。
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