研究課題/領域番号 |
23K02240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
石橋 尚子 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (90232339)
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研究分担者 |
大村 廉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10395163)
山崎 晃 広島文化学園大学, 学芸学部, 教授 (40106761)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 保育業務の可視化 / 保育者支援 / 保育職のやりがい / 離職の理由 / ウェアラブルセンサ / 保育者行動の自動認識 / 間接情報 / 保育者行動認識システム / IT技術 / AI技術 |
研究開始時の研究の概要 |
子どもの数はどんどん減っているのに、保育者(幼稚園教諭・保育士・認定こども園の保育教諭)が足りない。早期退職者や潜在保育者(免許・資格を持っていても保育職に就いていない者)が多いためである。その主因は、負担の大きい労働環境であると言われているが、見直すべき保育業務の内容や現状は、不明瞭で曖昧である。 そこで本研究では、保育者の声を聞く手法に先端技術(ウェアラブルセンサによる保育者行動の自動認識)を組み合わせ、保育業務を可視化することで、保育業務の適正化(合理化、ITC化、分業化等)の方向性を提案し、保育者支援を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、①保育者への質問紙調査に、②先端技術(ウェアラブルセンサによる保育者行動の自動認識)を組み合わせ、保育業務を可視化することで、③保育業務の適正化の方向性を提案することを目的としている。初年の本年度は、①と②の基盤づくりを行った。 ①の予備調査として、現職保育士195名を対象に質問紙調査を行った。保育士は、子どもが好き、子どもの頃からの夢、やりがいのある仕事であることを理由に保育職を選択し、給与の額、正規雇用か否か、通勤の利便性によって職場を選んでいる。99.5%の保育士が、子どもの成長が感じられたときや子どもとの信頼関係が深まったとき、保護者と一緒に子どもの成長を喜び合えたときに、保育職にやりがいを感じている。その一方で、95.4%の保育士が離職を考えたことがあると答えていて、仕事量の多さによる疲れと職場の人間関係の軋轢を訴える者の割合が高い。仕事量の削減と職場内の人間関係の緩和は、保育現場の喫緊の課題である。本調査については、石橋と山崎が日本教育心理学会(2024.9)で発表予定である。 ②については、2回の実験を通して保育者行動の自動認識精度を高めた。保育士の行動(ウェアラブルセンサによって加速度データを取得した39種類のうち、環境に設置したビデオにその映像が20秒以上同時に記録されていた行動21種類)について、加速度データだけでなく、ビデオデータから得られた体の関節情報を用いて認識を行った。Accuracy、F1-Scoreにおいて、加速度データ(ウェアラブルセンサのみ)の場合それぞれ0.929、0.934だったのに対し、ビデオデータ(環境設置)と組み合わせることで0.982、0.970とAccuracyでは約5%、F1-Scoreでは約3.5%精度が上昇した。本研究並びに関連研究については、大村を中心に学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を構成する3つの柱の内、まず取り組むべき2つの柱(①と②)について順調に研究を進めることができている。 ①現職並びに離職経験保育者への質問紙調査と聞き取り調査について:現職保育士への質問紙調査(予備調査)により、保育現場の環境(労働環境・ICT環境・人間関係等)や業務状況、保育者としての認識や悩みなどに関する調査項目についての基礎データを収集することができたことから、本調査の質問項目と調査手続きを確定することができた。令和6年度に予定している本調査の準備を大方整えることができた。 ②ウェアラブルセンサを用いた保育者行動認識による保育業務のデータ化について:ウェアラブルセンサによる加速度データに加え、ビデオデータから得られた体の関節情報を用いることで認識精度を高めることができたこと、同時に2名の保育士の加速度データを採取・分析することができたことから、「保育者行動認識システム」の構築が進み、次年度以降の活用の可能性を広げることができた。 以上に加え、ウェアラブルセンサ装着がもたらすストレスの有無を調べるために、唾液アミラーゼ活性(SAA)によるストレス評価法を用いて、センサ装着前後の保育士のストレス状況の測定を試みた。一定の測定効果がみられたことから、保育者が抱えるストレスの観点から保育業務を検討する、新たな視点を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
①現職並びに離職経験保育者への質問紙調査と聞き取り調査の実施:予備調査の結果を踏まえて、質問紙調査用紙を完成させ、椙山女学園大学教育学部卒業生(幼稚園教員免許・保育士資格取得者)約500 名と愛知県内の現職保育者を対象に、Webによる質問紙調査を行う。更に、質問紙調査協力者の中から聞き取り調査協力者を募り、保育業務の実態と改善方策についての詳細かつ具体的な情報を収集する。Webによる質問紙調査の実施、調査データの分析・検討は、石橋と山崎が共同で行う。 ②ウェアラブルセンサを用いた保育者行動認識による保育業務の継続的データ化:保育職経験2年未満の新人保育と経験10年以上のベテラン保育者を対象に、ウェアラブルセンサを用いた保育者行動の自動認識によるデータ化と、唾液アミラーゼ法による保育業務中のストレス測定を3年間継続して行う。調査時期と回数については、調査協力園並びに対象保育者と相談の上、決定する。現地調査とデータ分析は、石橋と大村が共同で行う。 ③分析結果のフィードバックと改善策の効果測定:②で得られた分析結果を調査対象保育者にフィードバックし、保育者自身による省察(自己評価)と改善への取り組みを促し、その効果を②の手法で測定・検証する。また、調査協力園に①と②の結果を逐次報告し、保育業務の現状に対する共通理解を図るとともに、園全体としての課題の掘り起こしとその解決策の検討に参画する。
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