研究課題/領域番号 |
23K02265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
是枝 喜代治 東洋大学, 福祉社会デザイン学部, 教授 (70321594)
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研究分担者 |
杉田 記代子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (80171156)
田尻 由起 東京成徳短期大学, その他部局等, 助教 (90802249)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 就学前療育 / 自閉スペクトラム症(ASD) / 発達支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、就学前療育機関を利用する自閉スペクトラム症(ASD)及びその近縁障害のある児童への支援の充実を図り、地域性を生かした有機的な小学校等への移行支援モデルを提案することである。本目的を達成するために、児童発達支援センターや行政機関と連携を図りながら、児童発達支援事業所等へのアンケート調査、就学前療育に先進的に取り組む国内外のヒアリング調査を実施し、ASD児を主な対象とする「支援マニュアル」の作成と検証、地域性を生かした「移行支援モデル」の提案を推進していく。これらの知見を総合的に勘案し、就学前療育機関におけるASD及びその近縁障害のある児童への支援の充実に資することを意図している。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、就学前療育機関を利用する自閉スペクトラム症(ASD)及びその近縁障害のある児童への支援の充実を図り、地域性を生かした有機的な小学校等への移行支援モデルを提案することである。 初年(2023)度は、今後のアンケート調査の実施及び移行支援マニュアルの作成を見据え、東京都北区及び神奈川県川崎市にある児童発達支援センター(計3機関)に対する訪問調査を実施し、児童発達支援センターが現在抱えている課題や今後の在り方等について分析した。いずれの機関においても、今後の児童福祉法の改正等を見据え、センターが担うべき役割に関する模索や自閉スペクトラム症(ASD)児等の発達障害のある子どもの割合が高く、対応を検討していることなどが明らかとなった。 また、海外の現地調査として、イタリアのインクルーシブ保育を実践している幼稚園等を訪問し、障害のある子ども達の支援の実情について視察した。さらに、研究代表者が継続的に関わる埼玉県内の保育所において、担当保育士を交えたコンサルテーションを実施した。在園児の中には児童発達支援事業所等を併用する児童も複数在園し、保護者及び園長の了解のもと、対象児に関する事例分析を進めながら、小学校等への移行支援モデル作成の一助とする予定である。 次年(2024)度は、前年度の研究成果を基に、地方の複数の児童発達支援センター及び児童発達支援事業所等への多面的な実地調査を進めると共に、インクルーシブ教育(保育)の観点から、首都圏の保育所等を対象とするアンケート調査(800機関程度を予定)を実施し、保育所等におけるASD児の保育・療育の実態を把握していく予定である。また、回答者の中からインタビューへの協力者を募り、小学校等に移行する際の連絡調整等についての支援事例を分析し、移行支援マニュアル作成の一助とする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、首都圏における児童発達支援事業等の現状を探るため、東京都北区及び神奈川県川崎市にある児童発達支援センター(計3機関)に対するインタビュー調査を実施し、児童発達支援センターが現在抱える課題や今後の在り方等について質的な分析を行った。ヒアリングの結果、いずれの機関においても、今後の児童福祉法の改正等を見据え、児童発達支援センターが今後担うべき役割(例:センターが管轄する地域の児童発達支援事業所等への指導・助言、困難ケースに対する対応、家庭支援の充実等)に対して様々模索している状況にあることや、受給者証を取得してセンターを利用する自閉スペクトラム症(ASD)児の利用の割合が高いこと、また、そのためにグループやメンバー構成、さらには療育の内容や基礎的環境の整備(ASD児に配慮した場面の構造化(視覚的構造化)、ICTの活用、児童の特性に合わせた自作教材の作成など)を工夫しながら、日々の療育を進めている現状等が示された。これらの内容を参考にしながら、次年度に実施するアンケート調査項目等の検討を進めていく予定である。 また、海外視察として、イタリアのインクルーシブ教育(保育)を実践している幼稚園等を訪問し、海外の実情についての理解を深めた。この実地調査の結果については、次年度の大学紀要等にまとめていく予定である。 さらに、研究代表者が継続的に関わってきた埼玉県内の民間の保育所において、ASD児を含む発達障害等の可能性のある幼児に対して、担当保育士を交えたコンサルテーションを並行して実施してきた。この中で、保育所と合わせて、週に数回程度、児童発達支援事業所を併用している複数の児童を取り上げ、保護者及び園長の了解のもと、事例分析を進めていく予定である。こうした事例分析を参考に、研究目的の一つに挙げている小学校等への移行支援モデル作成の一助としていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、主に2つの研究を進めていく予定である。1つ目は、今年度実施した児童発達支援センター(3機関)へのインタビュー調査や現在進めている保育所における複数の対象児の事例分析を参考に、地方における児童発達支援センター(首都圏以外の地域(群馬県を検討中))や児童発達支援事業所(首都圏と地方の両方)へのインタビュー調査を新たに実施しながら、地域性の相違による児童発達支援事業の実際を比較・検討していく予定である。2つ目は、「障害者の権利に関する条約」への批准(2014年)から急速に発展してきた「インクルーシブ教育(保育)」の観点から、幼稚園・保育所等と児童発達支援事業所を併用している障害のある児童(ASD等の軽度な発達障害を含む)に対する支援や配慮の現状を探るため、主に首都圏近郊の保育所等を対象としたアンケート調査(800機関程度)を実施し、保育所等におけるインクルーシブ教育(保育)の現状や園内におけるASD児等に対する配慮事項、さらには小学校への移行支援に関する対応(児童に関する文書等の送付、対面での情報交換の実施、卒園後のフォローアップ等)について、その実情を把握していく予定である。また、アンケート調査の回答者の中から、インタビューへの協力者を募り、特に保育所の年中の段階から小学校に移行する際の取り組み状況について、事例分析を基に検討し、移行支援マニュアルの作成に役立てていく予定である。同様に、日本とは異なるシステムで運用されている海外の就学前機関(米国を検討中)を訪問し、小学校への移行支援等の実情を探りながら、より充実した移行支援マニュアルの作成を検討していきたい。
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