研究課題/領域番号 |
23K02272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
臼井 奈緒 佛教大学, 教育学部, 准教授 (90634311)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ドイツの音楽科教科書 / 絵譜 / 歌 / 保育 / 幼児 / 楽譜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,かつて「絵譜」が用いられ,淘汰された学校音楽教育から幼児教育へと対象を移し,保育現場や家庭における“幼児のための楽譜”としての「絵譜」の活用をめざした基礎的研究を行う。具体的にはドイツから西欧諸国に伝播した絵譜の発展経緯を,音楽科教科書や楽譜集の文献調査によって明らかにし,それらを踏まえて日本の幼児教育における絵譜の新たな活用方法を提案する。同時に「絵譜」をとおして歌を視覚的にも味わうことにより,幼児により深い音楽の理解を促し,歌唱活動を発展させることで,音楽教育の導入期の質的転換を図ろうとするものである。
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研究実績の概要 |
絵譜による歌曲集はGrueger兄弟によって1927年にドイツで出版されたが、それ以降のドイツの音楽科教科書に、Gruegerの考案した絵譜の形式が見られるかを調べるため、東西ドイツの歴代の教科書を多く所蔵するベルリンの教育史研究図書館で資料収集を行った。その結果、ドイツでは絵譜の形式が教科書の中に積極的に取り入れられた形跡が見られず、挿絵と五線譜の役割が関連・融合している例は一例も見当たらなかった。本調査により、ドイツでは、作家Grueger個人のオリジナリティーによる歌絵本として絵譜が発展を遂げたことが明らかとなった。 一方、フィンランドの現地調査で収集した教科書や音楽教本には、その一部に絵譜の使用が確認できた。フィンランドで収集した文献の整理は今年度中にできなかったが、フィンランドでの独自の絵譜の変容と活用の実際をこれから明らかにしていきたい。 また、フィンランドにおいて絵譜の作成指導や活用を30年来行っている幼児音楽教育の指導者Raija Perko氏を招聘し、2024年3月28日に申請者の勤務校である佛教大学において、在学生(対面開催)と現職保育者ら(オンライン開催)を対象とした公開講座を実施した。両国間の幼児教育における音楽活動の意義や内容について、研究交流を行い、絵譜の作り手である本学学生にもそれらを公開講座という形で共有することで、さらなる絵譜の発展や音楽活動の向上を促した。またそれらの実践報告を論文等の形で発表することも視野に入れている。 さらに日本での保育現場における調査として、K幼稚園・認定こども園Kにおける絵譜を用いた歌唱指導実践の様子を視察した。当該園の歌唱指導・音楽活動における保育者へのインタビュー調査をもとに、2024年度には一私立園の音楽活動・歌唱活動の変遷や課題等の実態を明らかにしたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査による資料収集や、インタビュー調査は順調に進んでいるが、分析、論文執筆については、これからさらに時間を割き、学会発表や学会誌等での公表を進めていく予定である。 国内での絵譜の活用ついては、大学での授業の他に、保育現場や研修会、コンサート等で普及に努めているが、こちらは可能な範囲で地道に進めていく。 絵譜の活用を促進するために作成したHP「絵譜の森」では、だれでも絵譜を無料でダウンロードできる仕組みとなっているが、これまでのダウンロード状況からは周知が不十分であることが考えられる。こちらもさらなる活用に繋がるよう、検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
大学の授業における絵譜の作成では、学生が互いに刺激し合い、立体的な動きを再現できる布素材のタペストリーのような絵譜など、アイディアに富んだ作品が多く生み出されている。学生のオリジナル絵譜制作への意欲の向上を促すため、学生の作品を保育現場で実際に活用してもらうような機会を増やす方策を検討していきたい。 同時に保育現場での絵譜の活用を検討していく前提として、保育現場での歌唱指導の実際や、歌唱指導を行う保育者の抱える課題やニーズを明らかにしていくことも重要であると考える。そのため、保育現場とも連携をとりながら、絵譜の活用の様子を調査していきたい。 また、国外での幼児音楽教育の動向にも目を向け、歌唱指導という狭義の枠組にとらわれず、幼児の音楽体験としてのあり方を模索し、その中での絵譜の意味を再確認していきたい。
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