研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症児の支援では,保護者は多様なニーズを抱いており,支援者がニーズに沿った支援を提供する効果が示されている。しかし,心理援助職による保護者面接にて,保護者のニーズを測定する手段は確立されていない。そこで本研究では,保護者面接に特化したニーズを定量化する尺度を開発する。さらに,保護者の主訴や児の発達特性,親子を取り巻く環境ごとに,心理援助職が保護者のニーズに沿った介入を行うためのモデルを提案する。本研究を通して,保護者による子育て支援の継続的な利用可能性を高めることを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は,クライエントの選好を測定する尺度である,日本語版C-NIP(Cooper-Norcross Inventory of Preference)の信頼性・妥当性に関する検証を進めた。 まず,一般成人に対する2度のオンライン質問紙調査を実施(調査1:663名, 調査2:136名)した。その結果,原版と同様の4因子構造が確認された。また,一定程度の基準関連妥当性および再検査信頼性が認められた。以上の結果については,日本心理学会で発表済みであり,学会誌への投稿準備を進めている。 続いて,日本語版C-NIPの臨床的妥当性について検証するために,個人心理療法および保護者面接の利用経験の有無の違いによる,日本語版C-NIPの得点への影響についての検証を進めた。オンライン質問紙調査を実施した。調査では,個人心理療法および保護者面接の利用経験の有無・回答者自身の抑うつ傾向・保護者面接の対象となった児童の発達特性の程度等について尋ねた上で,日本語版C-NIPへの回答を求めた。その結果,計836名(利用経験なし群218名,個人心理療法のみ群207名,保護者面接のみ群201名,個人心理療法および保護者面接の利用経験あり群210名)から回答が得られた。今後,詳細な結果について分析を進め,学会での発表および学術誌への投稿を進めていく。 以上の研究と並行して,クライエントの具体的な選好を扱ったテーマとして,援助者の自己開示に対するクライエントの選好に関する調査を実施し,結果の公表を進めた。具体的には,援助者の自己開示に対する選好および恐れの定性的な把握(鈴木他,2023),援助者の自己開示に対する選好と関連する心理的傾向の検証(鈴木・佐々木,2023a),および社交不安傾向との援助者の自己開示に対する選好との関連(鈴木・佐々木,2023b)について,学会誌に投稿し,公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,本研究課題のテーマである,自閉スペクトラム症児の保護者との面接における,クライエントの選好について検証していく。半構造化面接を実施するためのインタビューガイドの作成,および調査実施施設での調査協力依頼の実施を迅速に進めた上で,速やかに調査を開始していく。
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