研究課題/領域番号 |
23K02341
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
下村 岳人 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (90782508)
|
研究分担者 |
岡部 恭幸 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70425057)
近藤 裕 奈良教育大学, 数学教育講座, 教授 (80551035)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 算数科授業 / 合意形成 / 志向性理論 / 発話行為論 / 学習指導モデル |
研究開始時の研究の概要 |
近年,算数科授業では,子ども同士話し合わせたり.活動させたりすることを重視した活動協働的な学びが求められてきた.ただし,そこでは子どもたち一人ひとりが仲間の考え方をどのように受け止め,合意形成が図られていたかという点からの議論は十分になされてきていない現状がある。 本研究は,これまでの能力育成に関する研究の延長線上に位置づき,算数科における「合意形成を図る力」の育成を意図した具体的な学習指導モデルを開発し,その効果を事例と共に明らかにすることを目的とする。 本モデルの開発は,形骸化した授業の改善に直結するだ けでなく,近年注目を集める「令和の日本型学校教育」の具体的な提案が期待できる。
|
研究実績の概要 |
今年度は,本研究課題の初年度ということもあり,4年間の研究計画について整理するとともに初年度に実施すべき内容の遂行にあたった.具体的な内容としては,先行研究の概観することから研究課題の焦点化を図ったうえで調査を実施した.そして,調査結果から得られた知見をもとに,2度の学会発表を行った. 本研究は,これまでの日本学術振興会科学研究費補助金による研究の発展的な位置づけにあたる.これまでの交渉する力の育成を目指した学習指導モデルの開発では(課題番号:JP20K140021),主としてJ.Searleの発話行為論(Speech act theory)を視座とすることから,算数科授業にみる数学的交渉の様相を捉えることを試みてきた.今年度は,J. Searleの発話行為論の研究を深化させる過程で提案された志向性理論について概観し,それを視座に授業内でみられる相互作用,もしくは合意形成の過程について考察することを試みた. 検討した理論枠組みにもとづき調査を行い,そこでの質問紙への記述内容もしくは発話内容から,志向性を抽出できたことは本年度の成果であったと考えられる.また.その研究内容については,日本数学教育学会秋期研究大会と,日本科学教育学会第2回研究会において報告を行った. さらに,今年度は研究体制を強化することも試みた.内容としては,研究分担者との部会を3回,研究協力者との協議を4回,それぞれ開催ことができた.特に,研究協力者との協議では,算数科授業における合意形成の特徴及び,その実際場面についての踏み込んだ協議を行うことができ,本研究の進展に係るお大きな推進力となった.次年度はより調査数を増やすことを計画しているため,引き続き研究分担者と研究協力者との協議を経ることから,本研究の知見を一つでも多く得られることを目指したい.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の進捗状況は,「おおむね順調に進展している」と捉えており,その根拠は以下3点である. 第一に,今年度の研究計画と実施状況との関連についてである.今年度の主な目標は,本研究課題に掲げている学習指導モデルの開発を行うにあたり,合意形成を図る力における水準設定を行うことであった.そこで今年度は,J.Searleの志向性理論及び. J. Masonの自他の納得に関する研究を視座とすることから水準設定の構築を試みた.また,調査を実施するとともに,その結果への考察を通す中で合意形成を図る力の水準に係る試案を作成することができた. 第二に,研究成果の発信についてである.本研究から得られた知見については,日本数学教育学会の第56回秋期研究大会と2023年度日本科学教育学会第2回研究大会にて,学会発表を行った.特に,日本数学教育学会は,数学教育に関する国内最大規模の会員数をほこる学会であり,当日の発表でも多くの意見や指摘を得ることができた.ここで得られた示唆は,今後の研究を進展させていくうえで欠くことができないものであったと考えられる. 第三に,研究体制の強化に関する点である.今年度は初年度ということもあり,研究体制を整備することも課題としていた.その点に関して,想定よりも多くの研究協力者を得ることができたのは成果であったと考えられる.そして,それらの協力者とは,会合を年間に4回開催し,そこでの議論をもとに調査を計画・実施するに至った.また,調査結果についてもまとめることから,共著での論文執筆及び,学会発表へと発展もみせた.さらに,最後の会合では次年度の調査計画までを行えており,次年度の予定にある,授業デザインシートの開発を着手し始めている. 以上を根拠とすることから,今年度は,おおむね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度の重点的な研究の推進方策は,以下3点である. 第一に,理論枠組みを精緻に捉え直すことである.現在までのところでは,水準設定の構築に向けた理論枠組みの検討を行ってきた.その結果,現在のところで試案までを作成することができた.ただしこれは,本研究課題期間中,絶えず検証を要するものでもある.そして,それに伴い理論枠組みの検討も絶えず必要となるものでもあると考える.今年度は,語用論や協調性理論に関する研究を概観することを予定しており,それらを踏まえたうえで,より信頼性のある水準設定の構築に努める. 第二に,授業デザインシートの開発である.本点は,今年度の最優先課題として計画しているものであるが,昨年度から開発を始められたのは,昨年度の成果であった.しかし,これについても複数回の検証を必要とするものであるため,今年度はそれに着手する必要がある.その具体的な実現に向けて,学校現場で働く研究協力者との会合を,今年度も4回開催する予定としている.そして,この会合の中で次回の調査計画を行うとともに,分析作業を行っていく. 第三に,研究成果の発信についてである.今年度も研究成果については発信し,そこでの意見を聴取することから研究の進展に努める.具体的な今年度の研究発表は,国際学会(ICME15),国内学会(日本数学教育学会第57回秋期研究大会,2024年度日本科学教育学会研究会)を予定している.また,そこでの意見も踏まえながら,論文としてもまとめ公表していくことも計画している. 以上3点が,今年度の研究における主な推進方策である.
|