研究課題/領域番号 |
23K02365
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
猪本 修 九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (50332250)
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研究分担者 |
石原 諭 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (60263414)
山本 将也 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 助教 (80826834)
小川 修史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90508459)
高野 美由紀 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70295666)
森 誠子 九州産業大学, 基礎教育センター, 准教授 (20615356)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | ユニバーサル・デザイン / 発達障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 感覚過敏 / 脳波 / 教科教育 / 教材演示法 / 可視化・可聴化 |
研究開始時の研究の概要 |
発達障害をもつ児童・生徒に対する特別支援教育においては,インクルーシブ教育の考え方に基づく通常学級での協働学習のあり方が模索されている。発達障害児・生徒が通常学級において,定型発達児・生徒と分け隔てなく学ぶには解決すべき問題がいくつかある。その一つがインクルーシブ教育の考え方による教科教材と教授法の確立である。本研究は自閉症スペクトラム障害 (ASD) などの特性のある学習者を対象として,その疾患特性と神経生理学的基盤に立脚した教科指導法を検討することを目的とする。とくに学習が困難とされる小中学校理科について,学びやすい実験・観察教材を開発しテキスト教材をUD化することとする。
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研究実績の概要 |
本研究は発達障害を示す小中学生のうち自閉症スぺクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder, ASD) を有する児童・生徒を対象として,通常学級および特別支援学級における教 科指導上の困難を解決し学習環境を改善することを目的とする。このため,(1) 発達障害者と定型発達者が同一の教室環境下で学ぶことが難しい教科のひとつとされる理科について,ASDの学習者にとっての教科教材の特性と問題点を明らかにすること,(2) ASDの特徴のひとつである感覚過敏に着目し,そのうち視覚過敏または聴覚過敏を伴う 発達障害児・生徒にとって刺激を低減する条件を精査し,それに適合する実験・観察教材およびテキスト教材を開発すること,(3) 発達障害児と定型発達児が同一環境下で学習できるよう,ユニバーサル・デザイン (UD) のコンセプトに則って実験・観察教材およびテキスト教材を整備し体系化すること,(4) 本研究によるUD化教材と指導法を出版し,特別支援学級ならびに通常学級を担当する教員に広く情報提供を行うこと,を目標とする。 とりわけ感覚過敏については,これまでの応募者らの可視化・可聴化技術とそれらの教材化の蓄積を活用して,ASDの学習者が的確に認知できて学び易いものにすることとする。 本年度は従来の理科教材のUD面での課題を明らかにするため,理科を指導する小学校教員および中学校教員の協力を得て,問題点の抽出を口頭での聞き取り調査およびアンケート調査により実施した。また生理的測定の環境を構築するため脳波測定装置を導入し,関連機器を整備するとともに調査用紙を作成した。さらに所属機関の倫理審査を受審し,研究実施のためのハード面,ソフト面の環境を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではASDの小中学生を対象に,理科授業における実験・観察において感覚過敏に伴う学習上の困難を解決し,教科内容に対する理解を深めつつ学習環境を改善することを目的としている。本年度は (1) 理科を学習する際の問題点を明らかにするために,研究協力者 (小学校・中学校教員) を確保し,対象となる児童・生徒の行動特性などを把握 するとともに,教科指導上の問題点を把握した。同時に理科教材の視聴覚特性とその問題点を整理し,ASDの学習者に適するよう改変しUD化を図る道筋を検討した。(2) 次に対象者の学習状態・認知状態を評価する方法を確立するため,脳波計を導入して測定環境の構築を行った。評価のための生理的測定は頭皮上脳波のうちアルファ波成分とシータ波成分を抽出して認知負荷を計算することとした。また対象者の口述解答による評価法として理解度・学習到達度テストと心理尺度のアンケート調査法を検討した。(3) 以上の開発システムを少数のモデル学習者を対象として試行し,教材と評価法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況を踏まえて,次年度以降は次のように研究を進める予定である。(1) 30名程度の大学生をペイドボランティアとして確保し,被験者ごとの認知特性を心理尺度等により数値的に評価するとともに,被験者の脳波を測定し,認知特性と脳波のパワー比変動および領野間の結合・脱結合のダイナミクスを検討する。その際に感覚過敏の過多についても検討することとし,提示刺激に対する応答特性と集中度および理解度が向上しているか調査を行う。その際は生理的指標である認知負荷の著明な低減を目標とする。さらに認知負荷についての心理物理学的な検討を行う。(2) 加えて,理科教材のうち,とくに図表やグラフの表記・表現や,文章表現のUD化を検討する。テキスト教材のUD化の有効性については 2025年度の児童・生徒対象の実践において検討する。
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