研究課題/領域番号 |
23K02374
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
松岡 靖 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (10736648)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 持続可能な社会 / SDGs / 持続可能性 / 社会系教科 / 授業開発 / 構築主義 / SDGs / 社会科教育 |
研究開始時の研究の概要 |
現状のSDGsの達成を目指すESD授業は,持続可能性の低下・喪失した社会構成に関する認識が不十分であり,価値判断させる根拠に課題がある。本研究では,社会系教科におけるSDGsに関する学習内容を特定し,持続可能性の低下・喪失した社会構造をSD概念である環境・経済・社会の3観点から明らかにし,段階に応じた教育内容を開発する。また,持続可能性の低下・喪失した社会を批判的に追究し,持続可能な社会への改善を図る対案を提案する構築型の学習指導論理を明らかにし授業開発を行う。更に,開発した授業を実証的に検討することで社会系教科目における持続可能な社会の担い手となるための資質・能力について解明する。
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研究実績の概要 |
2023年度(初年次)では,「SDGsに関わる構造的な知識をどのように活用し,ESDが目指す資質・能力育成の授業をどのように構成すべきか」といった問いに答えるため,「社会系教科内容とSDGsが対象とする事象に関する検討から学習内容を特定し,SDGsを必要とする社会(持続可能性の低下・喪失した社会)の構造を,環境・経済・社会の観点から明らかにすると共に,SDGsを事例にした教育内容を開発する」ことを所期の目的とした。 学習内容の特定に関しては,持続可能性の維持・発展を可能にした先進的事例であるドイツ・フライブルグを調査し,「環境」面では,環境教育カリキュラムの創出とそれを支えるエコプロジェクトなどの環境保全の取り組みなど,「経済」面では,学校の環境システムへの現地企業の援助と卒業後の進路保障など,「社会」面では、市民のエネルギーのオルタナティブを考える意識の高まりなど,の持続可能性の特徴について検討した。次に,日本社会との比較から,特に環境教育カリキュラムと環境教育を支える市民意識の高まりに着目し,地域の環境素材を事例にしながら,単に地域改善に留まらないグローバルな視点から思考できる学習内容を開発する必要性,また,持続可能性の改善を図る対案を形成させる中で,学習者が自らの態度を振り返り評価する場面を位置づけることの必要性について明らかにした。 以上の検討に基づき,持続可能性に関する問題への態度形成を目指す具体的な学習モデルを提案した。このモデルでは,社会科単独ではなく総合的な学習の時間との関連を図ったテーマ設定による探究型の授業を構成することで,構造的な概念獲得に基づく,学習者の主体的な探究活動を保障する授業となっている。また,教育内容に関しては,グローバルな環境問題として世界の古着問題を学習内容として特定し,学習モデルに基づく単元「本当に大切な国際協力って何?」を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記に区分した理由は次の通りである。 2023年度(初年次)における所期の目的は,次の2点に分けることができる。第1は,社会系教科内容とSDGsが対象とする事象に関する検討から学習内容を特定し,SDGsを必要とする社会(持続可能性の低下・喪失した社会)の構造を,環境・経済・社会の観点から明らかにすること,第2は,SDGsを事例にした教育内容を開発することである。第1に関しては,ドイツ・フライブルグの持続可能性を維持・発展する社会構造を3観点から検討し日本社会との比較から,各観点の特徴と改善すべき点を明らかにしたことが成果として指摘できる。第2に関しては,SDGsの事例としてグローバルな問題である古着問題を取り上げ,具体的な学習内容として開発したことも成果として挙げられる。しかし,1事例の開発に留まり,更に他教科との関連を図った持続可能な社会の形成者としての資質育成に適う教育内容を開発することが課題である。 以上のように,2023年度(初年次)の所期の目的に照らして,成果としては,ある程度満足できるものであるが,課題も残されている。本研究では,次年度にわたって継続して検討することも計画していることから,進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度(初年次)において残された課題に関して研究を継続して行うとともに,2024年度(2年次)における所期の目的は,「持続可能性の低下・喪失した社会を批判的に追究し,構造的な知識を獲得した上で,持続可能性の回復・発展への改善を図る対案を提案する構築型の学習指導論理を明らかにする」ことである。具体的には,持続可能性の低下・喪失した社会構造の形成要因(問題)を批判的に追究する場面と問題を特定した上で形成要因の改善を図る対案を学習者なりに形成させる場面を学習展開上,どのように位置付けるのかが課題となる。また,持続可能な社会構築の担い手としての資質を育成するためには,個々の学習者が自らの価値観に関して振り返り,評価する場面も必要であろう。更に,それらの学習場面を社会科単独ではなく,他教科との関連を図りながら,どのようにカリキュラム構成すべき,研究推進上の大きな課題となると考える。 これらの点に関して,これまでの構築型学習指導の研究成果について再検討すると共に,文献調査と先進地への現地調査に基づき,授業構成論理の明確化を図っていきたい。また,授業構成に位置づく教材に関しては,持続可能性の低下・喪失した状態から回復・発展した事例として食料面,工業面,災害面,観光面などから検討していきたいと考えている。 以上の授業構成と教材の手立てに基づき,構築型の学習指導論理について明らかにしていきたい。
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