研究課題/領域番号 |
23K02377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 神戸親和大学 |
研究代表者 |
金山 健一 神戸親和大学, 教育学部, 教授 (80405638)
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研究分担者 |
竹内 和雄 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10639058)
栗原 慎二 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80363000)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ネット依存 / ゲーム依存 / 児童生徒 / キャンプ療法 / 縦断的追跡調査 / キャンプ / 縦断的研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「ネットやゲーム依存の児童生徒が参加した、教育モデルのキャンプ療法の縦断的評価」を明らかにし、医療モデルのキャンプ療法による治療ではなく、教育モデルのキャンプ療法の確立を目指す。以下、3点を明らかにする。
Ⅰ基礎調査…ネット・ゲーム依存の児童生徒が参加したキャンプ療法の効果の検討。 Ⅱ縦断的調査…キャンプ療法に参加した児童生徒の9年間の縦断的調査。 Ⅲ海外実地調査…海外で実施されているネット依存改善のキャンプ療法の実地調査。 以上の研究から、ネット・ゲーム依存の対応を、医療モデルによる治療ではなく、教育モデルによるキャンプ療法での改善方法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、「ネットやゲーム依存の児童生徒が参加した、教育モデルのキャンプ療法の縦断的評価」である。 本研究の調査対象の小中高校生は、不登校、朝起きられない、昼夜逆転、友達がいない、発達障害などの課題を抱え、学校生活、日常生活に支障がでていた。 本研究では、「一時的にキャンプ療法でネット・ゲーム依存は改善しても、継続的には改善できるのか?」という「問い」がある。そこでキャンプに参加した児童生徒が、日常生活に戻ってからのネット・ゲーム依存の状況の縦断的調査を実施した。 (1)基礎調査…ネット・ゲーム依存の児童生徒が参加したキャンプ療法の効果の検討した。本研究の教育モデルのキャンプとは、対象者は小中高校生の集団で、大学生ピアサポーターが、リアルな体験活動やピアサポート、カウンセリングを通して、自己開示、他者理解、相互理解も促進された。カウンセリングを実施するモデルであり、成果を上げることができた。また、大学生がロールモデルとなり、参加者は「あんなお兄さん、お姉さんになりたいな」というモデル像が確認できていた。 (2)縦断的追試調査…キャンプ療法に参加した児童生徒の縦断的追跡調査を実施した。 2016~2022年までのキャンプに参加した児童生徒41人がアンケートに回答し、回収率は63%であり、未回答者は改善できていない可能性がある。各調査項目の改善率は下記の通りである。①日常生活(キャンプ直後79%、現在89%)、同様に、②寝る時間64%、70%)③イライラする(68%、75%)、④保護者との関係(71%、75%)、⑤学校生活(68%、92%)、⑥学校への登校(64%、84%)、⑦成績や勉強(57%、72%)、⑧ネット利用時間(66%、62%)、⑨ネットへの課金(79%、84%)、⑩心の状況(77%、79%)であった。教育モデルのキャンプは一定の成果があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 基礎調査…ネット・ゲーム依存の児童生徒が参加したキャンプ療法の効果の検討 本研究では、Young K(1998)が開発したインターネット依存を測定するDiagnostic Questionnaire for Internet Addiction(DQ)(8項目)を用いた。調査協力を得た小学生(4~6年生)、中学生、高校生は合計24,727人、また、その保護者、合計3,516人である。ネット依存傾向にある小学生(4~6年生)は15.3%、中学生23.0%、高校生29.6%であった。家でのネット利用時間とネット依存傾向では、4時間以上のネット利用で依存傾向が急増することが判明した。動画視聴、オンラインゲーム、SNSは、どれも依存傾向を高めることが明らかになった。また、ネット依存傾向の児童生徒は、家庭での携帯電話・ゲームの利用のルールがない傾向があることが確認できた。 (2) 縦断的調査…キャンプ療法に参加した児童生徒の縦断的調査 縦断的調査の結果は、①日常生活、②寝る時間、③イライラする、④保護者との関係、⑤学校生活、⑥学校への登校、⑦成績や勉強、⑧ネット利用時間、⑨ネットへの課金、⑩心の状況で改善が良好であった。しかし、この横断的調査のアンケート回収率は、63%と高くはなく、未回答の児童生徒、保護者は改善できていない可能性が高く、再調査が必要である。 (3) 海外実地調査…海外で実施されているネット依存改善のキャンプ療法の実地調査 コロナ禍のために、海外で実施されているネット依存対策のキャンプ療法は、海外からの視察を受け入れる状況ではなかった。そのため調査研究も実施できていない。日本でもコロナ後は、ネット依存対応のキャンプは中止が多く調査ができなかった。今年度は、日本国内、海外の調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年5月現在、サイニーの論文・書籍検索は「ネット依存」817件、「ゲーム依存」259件、「キャンプ療法」は25件、「ネット依存・ゲーム依存・キャンプ療法」は僅か2件と、この分野の研究はまだ萌芽期であることがわかる。 医療モデルのキャンプでは久里浜医療センター、教育モデルのキャンプでは、秋田県教育委員会の「うまほキャンプ」、神奈川県教育委員会の「チャレンジ・ライフ・キャンプ」などがあるが、コロナ禍で中止になったキャンプもある。日本では実践事例が少なく論文もわずかで、効果測定・プログラムの確立も十分とはいえない。また、海外のネット依存に対するキャンプ療法の動向の報告も少なく、ネット依存のキャンプ療法の研究は世界的にも萌芽期であるといえる。 そこで本研究では、「ネットやゲーム依存の児童生徒が参加した、教育モデルのキャンプ療法の縦断的評価」で、教育モデルのキャンプ療法の確立を目指す。「ネットやゲーム依存改善のキャンプ療法は一定の効果はあるが、効果の継続のためには何が必要か?」という「問い」を立てている。キャンプに参加しただけでは、ネット・ゲーム依存は改善できない。キャンプは、プレキャンプ(6月)、本キャンプ(8月)、フォローアップキャンプ(11月)の3つがある。8月、本キャンプでのネット・ゲーム依存の改善の動機づけを、11月のフォローアップキャンプまで家庭生活、学校生活で継続できるかどうかが、改善の分岐点であることも明らかになり、効果的なペアレントトレーニングの在り方も研究対象としている。 課題としては、縦断的調査で確認できた対象数が63%と低く、未調査の対象者はネット・ゲーム依存が継続し、不登校、引きこもりになっている可能性もあり、引き続き調査を継続する必要がある。何が要因・問題で、ネット・ゲーム依存が改善できないのかを明らかにしたい。
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