研究課題
基盤研究(C)
本研究フェーズでは,アファンタジアおよびそれらに近似する状況のものに焦点化してその認知多様性を反構造化インタビューによって整理し,さらに発話内容をもとに近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy, NIRS)により脳機能の側面から認知科学的に明らかにする。その上で,美術教育上の表現や鑑賞における困難性を概略的に明示し,思考を視覚化するAIなどを用いたアプリケーションを実装し,個別最適化した指導法の開発を行いその有用性を検証する。
2023年度のPhase1ではアファンタジアにおける認知多様性を半構造化インタビューによって明らかにし,心的視覚イメージを持たないものがどのように外界を捉えるのか明らかにすることを目的とした。そこで、金沢工業大学および徳島大学にて156名を対象にVVIQテストによるスクリーニングをおこなった。その結果アファンタジアの出現率は1.92%(4%の出現率:髙橋 et al.2023)にとどまり18-80のスコアの中で正規分布するはずの中央値も67(45~48程度:髙橋 et al.2023)と上振れした結果となった。一方でVVIQのスクリーニングからは、心的視覚イメージ能力の比較的高い集団であっても、これまで見たことのないイメージを想像する・創造する高度な処理では約20%程度がまったく視覚イメージを想起しないということがわかった。この点に関して視覚イメージを生成できない割合はより上振れする可能性が大きい。さらにPsi-QおよびVVQを加味し視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚,身体感覚,感情, 言語の8因子をアファンタジア群から2名、VVIQ中得点群、VVIQ高得点群からそれぞれ2名の合計6名で使用するモダリティーを調査したところ、アファンタジア群では多感覚アファンタジアタイプがいることが示唆され、全体的に多様なモダリティーで想起する値が低く、また全く視覚モダリティーを使用しない群では特に身体経験など触覚的な経験、または音声などの得意とするモダリティーを中心に使用して眼前の世界をプロセスしていることが伺われた。さらに美術への自信に関してはVVIQ高得点群からアファンタジア群に掛けて傾斜的に自信が下がる傾向が見て取れた。また、アイコニックなものから詳細へ詰めていくような場合にはChatGPTのDALL-Eによる描画サポートが有効であることも示唆された。
3: やや遅れている
髙橋の報告にあるようにVVIQのスクリーニングでは中央値が45~48程度になることが想定される。VVIQのスクリーニングの総数が156名に止まったこともあり、2023年度では中央値が67にとどまった。実際に徳島大学の総合科学部では上振れしていることもあり、その結果について次年度で推論を立てるとともに、500-700名程度のアンケート調査を再度実施しクリアにして研究を前進させることとした。
まず500-700名以上の規模でVVIQのスクリーニングを行うために参加学生に実験参加の謝礼をつけ2024年当初の収集を行う。また、調査結果をもとにインタビューを行い8つのモダリティーの因子をもとにどのようにプロセスをしているのか明らかにし、時間的猶予があればNIRSによって脳機能的実証データを収集する。
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美術教育学
巻: 44 ページ: 155-166