研究課題/領域番号 |
23K02471
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
山下 浩之 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (10781099)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 自然災害 / 橋渡し / 基礎的な原理 / 流水作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,初等中等の理科教育における「流水作用」の基本的学習内容と,学習指導要領が示す「(流水作用の学習内容と)自然災害との関連」に視点を当て,両者が連続的であることを学習者が理解することを目的とする.この前者の原理と後者のふるまいを橋渡しに関しては,再現性の高いモデル実験開発を行い,流水作用の基本的な学習内容を基にした知識の延長線上に自然災害が位置づけられるようにする. 河川は地質や地形など地域特性が極めて強いが,努めて一般化できるようなモデル実験開発に努める.自然災害が発生しやすい,支流と本流の合流部や狭隘な部分は電磁流速計を用いて工夫を施し,学校現場で十分に評価が得られるようにする.
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研究実績の概要 |
近年,自然災害による被害が全国的に多発していることにより,平成29年小学校学習指導要領(理科編)では「自然災害との関連」が位置づけられた.しかしながら小学校の学習内容で扱う「流水の原理」と自然災害による被害の状況や実態は,扱う水量の極めて大きな違いにより,両者の相関関係をイメージするに至る指導および教材は必ずしも確立されているとは言い難い.小さなスケールを扱う小学校での理科学習は,流水の幅が多く見積もっても数cm程度であり,一級河川のような川幅数十mの河川での自然災害との相似な関係に言及することは様々な意味で困難をきたす.例えば流水実験に用いる泥や砂の堅さ(あるいは固め方)や粒度,勾配のつけ方や水量のコントロールの仕方などは小さなスケールになればなるほどそれらは大きな影響を及ぼし,偶然性が実験結果を支配してしまう場合は決して少なくない.学校現場では児童自身によってコントロールされた実験が好まれる傾向があるため,スケールの小さい教材を教師が数多く準備するという方向に導かれやすい.「流水の原理」と「自然災害との関連」はこうした学校現場の現状を考えると,乖離していく危険性があり,そのギャップを埋める「橋渡し」が求められることになる. 今回の研究テーマは,「流水の原理」として侵食・堆積・運搬作用を児童に学ばせる際,水の速さや量については細かくコントロールした状況を再現した際のデータを用いて「流水の原理」と「自然災害」との関連が整合的に説明できるようにするためのモデル実験開発である.さらにこのモデル実験開発をどのように用いればさらに教育的効果が得られるかを追究する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小流路(川幅約10 m~15 m程度で両岸の水深が0 m,すなわち側面がコンクリート等の人工物に接していない流路)では既に電磁流速計を用いて流速を測定し,流速が増す中央部の水深と流速との関係はほぼリニアな直線が得られることがわかっている.ところが都心部に多いU字溝に接している流路では径深が大きくなるため流速もそれに伴い大きく,中央部のみならず,断面積のどの部分を抽出しても前者の小流路ほど差は得られず,標準偏差は前者よりも小さい値を示した.このように流速は流路の形状にも大きく依存していることがわかった.ただ,これまで学校で採用される実験のスケールではの小ささから流速測定がなかなか困難であり,データが得られにくかった. 現在,3軸電磁流速センサーを用いてさらにスケールの小さい小流路(川幅30 cm~50 cm程度)での流速の変化を測定している段階である.今回用いている3軸では流水の上下方向の動きを追跡することができるため,理科学習で用いられているようなスケールの小さい流水でも測定は可能である.川幅や形状,径深等を独立変数としてより多くのデータを収集している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,まず流速の数多くのデータの収集が求められている.様々なケースでのデータ収集は今後の方向性に必要不可欠である.特にU字溝でのデータは防災の観点からも極めて重要であると考えており,今後,河川の形状による比較をデータによって充実させていく. 次に,データの分析を行いながら,同時に「流水の原理」を学習する際の教材のあり方に言及していく.例えば「橋渡し」が可能なスケールとはどの程度のスケールが適切か,授業での提示の方法は,複数のモデルの提示なのかあるいは単独モデルの提示が適切なのか,さらにその場合,様々な地域の状況を加味したモデルとはどのようなモデルを選択すべきなのか等も教育的問題に言及していく.「流水の原理」と「自然災害」の「橋渡し」モデルは必ずしも収束する方向ではなく,むしろ状況に応じた拡散方向へ進むではないかと考えている.いずれにしても教育現場での活用を第一において研究を進めていく.
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