研究課題/領域番号 |
23K02477
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
渡部 竜也 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10401449)
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研究分担者 |
中原 朋生 環太平洋大学, 次世代教育学部, 教授 (30413511)
小貫 篤 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60965375)
橋本 康弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (70346295)
三浦 朋子 亜細亜大学, 法学部, 准教授 (70586479)
星 瑞希 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90966508)
岡田 了祐 富山大学, 学術研究部教育学系, 准教授 (80757287)
岩崎 圭祐 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 助教 (20962921)
井上 昌善 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (10824104)
堀田 諭 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (90865445)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 評価 / 市民性育成 / 学力 / 社会科 / 論争問題学習 / 真正の評価 / 公的論争問題の議論学習 / 主権者教育 / 議論のファシリテート |
研究開始時の研究の概要 |
公的論争問題の議論に参加する生徒についての評価規準・基準は、教室がかかえる問題状 況、議論内容が生徒たちに与える影響や生徒たちの議論内容への当事者意識の有無、生徒たちの学力や性格などによって戦略が柔軟にとられるべきである。何が理想的な評価規準・基準となるかは教室の生徒たちの性質や彼らが埋め込まれている社会的文脈とからめながらケーススタディによって議論されるべきである。先に理論を構築して、それを学校現場に当てはめる「演繹的アプローチ」ではな、学校現場の実例を積み重ねて、文脈に合った理想の評価規準・基準や教師のファシリテーションを明らかにしていく「帰納的アプローチ」を採用する。
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研究実績の概要 |
本年度は初年度でもあり、①教師の行為や周囲の生徒との関係が教室での議論に与える影響についての世界的な研究動向と、②社会科における真正の評価についての世界的な研究動向をまとめることに重点をおいた。 前者①の研究の中で特に注目したのは、Jane C. Lo (2022) Making Classroom Discussions Work, Teachers College Press.と、Elizabeth G. Cohen & Rachel A. Lotan (2014) Designing Groupwork: Strategies for the heterogeneous classroom, Teachers College Press.と、Jennifer Hauver James (2019) Young Children's Civic Mindness, Routledge.の3冊である。これらはいずれも、教師以上に生徒の議論支配の方が生徒の議論参加への萎縮の原因になることを指摘しており、生徒への議論支配を抑制するためにも、議論に参加する姿勢についての評価観点を評価項目に加えることを主張するものあった。 後者②の研究で特に注目したのは、David Sherrin (2020) Authentic Assessment in Social Studies, Routledge.である。シェリンの研究は真正の評価論とMI(多重知能理論)の融合を試みることで、文脈や子供の特性に応じて評価課題や評価観点を変えることを主張しつつも、しかしながらしっかりと民主的な社会の形成者・主権者育成に貢献するという社会科のねらいは外さない議論を展開しているところに特徴がある。特に勉強を苦手とする生徒たちの議論や活動への参加という観点から同書の考え方に注目した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎文献を集めて、その整理をすることを本年度は目的としていた。これについては概ね目的を達成できたのではないかと思われる。予定通りの遂行ができた要因は、共同研究者を増やしたことにある。特に、シェリンの研究に関しては、すでに真正の学び論や評価論で共同研究をしてきた埼玉学園大学の堀田諭先生と共同研究をする形に改めた。その結果、早くも初年度に、シェリンの研究と我が国における意義について、全国社会科教育学会の自由研究発表にて紹介することができた。
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今後の研究の推進方策 |
高校現場で議論支配をする高校生を対象に調査した以前の筆者の研究を踏まえるなら、議論態度を評価観点としていたずらに設定することは、議論支配する生徒の機嫌を損ねてしまい、またそうした行為を教師の横暴もしくは教師の価値態度の押し付けと彼らがみなしてしまう可能性があると言わざるを得ない。おそらく、議論に参加する姿勢を評価観点に加えるためには、事前にそうした態度を評価することの必要性を生徒たちに理解させておく必要がある。そこで筆者が注目したのが、ジェイソン・ブレナン『アゲインスト・デモクラシー』(勁草書房、2022年)において示した、民主主義が成功するための5つの条件である。少数の優秀な人間による議論支配は、こうした5つの条件を阻害してしまい、議論の生産性を大きく損ねることになる(ブレナンの議論を使えば、議論支配の問題性を明瞭に説明できるのである!)。議論支配を試みる生徒向けに、ブレナンの議論や、筆者が実際に現場で観察した記録を活用して、一部学生による議論支配が生じた教室は、概ね議論が盛り上がらず、生産性が低下することをわかりやすく示すことのできるプログラムを開発することを今年度は試みてみたい。
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