研究課題/領域番号 |
23K02578
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
木村 あやの 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (00527575)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 感覚過敏 / 感覚低反応 / 疲労感 / 大学生 / 自閉スペクトラム / 当事者 |
研究開始時の研究の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)は不安障害等メンタルヘルスの問題を併存しやすい。不登校やひきこもりとの関連も指摘され,その支援は喫緊の課題である。DSM5で初めて,ASDの中核症状として感覚過敏/鈍麻等が追加されたが,感覚の問題は本人も周囲も気付きづらく,日本での研究蓄積もまだ浅い。そのため,心理社会的問題として捉えられていたASDの困難の背景に,感覚の問題が隠され見過ごされている可能性がある。そこで本研究において,ASD当事者の感覚の問題に関わる生活上の困難とニーズについて,定量的研究と定性的研究の2つの手法を用いて解明し,二次障害予防および共生社会の創造に貢献する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、知的能力障害を伴わない自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders:ASD)者の抱える困難や社会との関わりの現状について明らかにするために,日本人ASD者が自身の経験について執筆した著書を執筆者の世代別に3分類し,生物・心理・社会的側面から整理し、その内容を学会誌に投稿するに至った。具体的には、1962年から2002年までに出生した著者26名(男性12名,女性14名)によって執筆された51冊について内容を分析した結果,ASDやその他の障害に関連する法整備状況や社会状況がASD者の生活に影響を及ぼしていた。感覚等、生物面の特徴についてはすべての世代で社会における理解が不十分であり,適応努力による心理的負荷がかかっていることが明らかとなった。 また、大学生256名を対象として、視覚と聴覚の特徴(過敏・低反応)が疲労感に及ぼす影響について調査を実施した。疲労感を目的変数、感覚の特徴、大学生活上の困難さ、通学時間、アルバイト状況、睡眠時間、睡眠満足度を説明変数として、強制投入法による重回帰分析を行ったところ、疲労感に対して一定以上の説明率を示し、大学生活上の困難さ、睡眠満足度、感覚の特徴が疲労感に影響を及ぼしていた。さらに媒介分析から、感覚の特徴が直接的に疲労感に影響を及ぼすとともに、大学生活での困難を媒介してより疲労感を強めることが明らかとなり、感覚の特徴に対する支援が重要な課題であることが示された。研究の遂行の他、小学校および中学校の教員を対象とした講習会講師を担当し、研究成果の社会還元活動を行うこともできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビュー調査の準備段階において、分析プロセスにおいて生成されたカテゴリーを発展させ、体系化された仮説を構築するために、有効な対象者を選んでデータを収集する理論的サンプリングを行えるよう、精緻なインタビューガイドの作成と協力機関の選定の調整に時間を要したため、令和5年度中にインタビュー調査の実施に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、令和5年度の研究成果を学会大会および論文として発表するとともに(投稿済)、成人以降に診断を受けたASD者を対象としたインタビュー調査の実施を進める。ASD当事者による著書分析による感覚の特徴を含めた自己理解プロセスの質的研究結果を活かし、インタビュー調査を遂行する。インタビュー内容の解釈や今後の課題を明確にする中で追加の調査が必要となった場合には速やかに実施する。
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