研究課題/領域番号 |
23K02634
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
市川 尚 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40305313)
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研究分担者 |
後藤 裕介 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (40454037)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エージェントベース社会シミュレーション / 論理的推論 / アブダクション / 科学的手法 / 情報教育 |
研究開始時の研究の概要 |
エージェントベース社会シミュレーション(ABSS)は,科学的・論理的思考を形成する演繹推論,帰納推論,アブダクションの3種類の論理的推論の特質を有する.本研究では,高等学校において,科学的手法を用いて問題を解決する能力を育成するために,ABSSを3種類の論理的推論の学習に活用した効果を検証し,その教授法や学習環境を提案することを目的とする.3年間の計画として,教育実践を行いながら実証的に研究を進める.
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研究実績の概要 |
高等学校では,総合的な探求の時間などにおいて,科学的な手法を用いて問題を解決する能力を育成していくことが重視されている.科学的に問題を解決していくには,仮説形成・検証を適切に行うために,科学的・論理的思考を形成する演繹推論,帰納推論,アブダクションという3種類の論理的推論を行う能力が必要となる.他方で,教科「情報」や「理数」において,科学的に問題を解決していく道具として,シミュレーション技法の学習や活用などが示されている.本研究ではエージェントベースのシミュレーション(ABSS)という,自律的な意思決定を行うエージェントの行動ルールや,エージェントや環境との相互作用をモデル化する手法に着目する.本研究の目的は,高等学校におけるABSSを活用した3種類の論理的推論の能力を育成することの効果検証と,そのための教授法や学習環境を提案することにある. 2023年度は研究期間の1年目であり,先行研究の調査を中心に進めた.数学や理科教育,探究活動における仮説形成や推論に関する教育実践研究,論理的推論を扱うシステムの開発研究など,先行研究の整理を進めた.また,ABSSと推論に関わる先行研究の調査を進め,ABSSが帰納推論と演繹推論の両者の特質を併せ持つことや,アブダクションも扱いうることについて理解を深め,どのように授業実践を行うのかの設計や学習環境について検討を行った.あわせてフィールドとして協力をいただける高校の選定を行った.授業の方法は,モデルのパラメータ調整やシナリオ分析に関する課題を通して,どのように仮説を検討したのか,自分が行った推論は3種類のどれに当てはまるかなど,論理的推論に関わる思考のプロセスを詳細に記述してもらうことを想定している.3種類の推論の分析方法をガイドとして提供することや,事例課題を複数用意して徐々にガイドを減らしたりしていくような工夫も検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である2023年度の申請時の計画は次の3点であった. (1)仮説形成・検証,3種類の論理的推論について先行研究を調査する.(2)高等学校の課題研究等をフィールドにして,申請者らが実施してきたABSSによるCOVID-19の課題解決の取り組みをベースに教育実践を行い,3種類の論理的推論が体験的に学習されるかを検証する.(3)ABSSによる推論手法の効果的・効率的な教授法や学習環境について設計を行う. 以降に,これら3点について,研究の進捗状況を述べる. (1')科学教育の先行研究を中心に,仮説形成・検証の研究を調査した.たとえば,数学や理科教育,探究活動における仮説形成や推論,仮説実験授業などが挙げられる.また,3種類の論理的推論のそれぞれについて調査を通して理解を深め,ABSS上での論理的推論の扱いを検討した.(2')ABSSを用いた教育実践を高校生に対して実施したが,推論の導入までには至らなかった.一方で,次実践フィールドの選定などを行い,高校教員の協力のもとで,次年度に高校での教育実践を行うことになった.(3')次年度に実施する教育実践について,先行研究の調査(1')や(2')での内容を踏まえながら,設計に着手した.また,ABSSのシミュレーション環境について,NetLogoの利用可能性について検討した.
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今後の研究の推進方策 |
先に示したように,研究の進捗が若干遅れ気味である.初年度は,従来から行っていたABSSの教育実践(大学に高校生が来て行う特別演習)に論理的推論の内容を追加して試行する予定であったが,実施の日程的な問題もあり,実現しなかった.一方で,新規にフィールドを確保することができ,高校の授業の中で実際に授業を行うことが可能となり,実践研究の準備は整いつつある. 今後は,論理的推論の授業をより具体的に設計し,次年度の早めの段階で試行を従来の実践の場で実施し,それを改善した上で,再度の実践を高等学校の授業として行うことを考えている.また,シミュレーション環境の選定が完了していないため,専用言語を用いるNetLogo環境か,Pythonで可能なシミュレーション環境とするか,現場教員の意見を聞きながら検討し,それに基づき,実践で利用する教材を開発していく.
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