研究課題/領域番号 |
23K02683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 江扶 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40524294)
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研究分担者 |
島田 英昭 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20467195)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 英語学習 / 英語教育 / AI翻訳 / 中間日本語 / 認知科学 / 言語学 / AI / 翻訳 / 英作文 |
研究開始時の研究の概要 |
DeepL等の英語AIツールが実用的になり、英語教育を劇的に変化させる可能性がある。知的さが仕事上の競争力になっている現代では、知的ツールを上手に利用できるかどうかは、仕事の生産性に直結する。したがって、英作文で英語AIツールを用いることを避けて通ることはできない。そこで本研究は、英作文における英語AIツールの用いられ方の実態を解明する。それをもとに、英語AIツールの上手な利用のしかたを提案する。そして、その利用のしかたが効果的であるかどうか、実践的に試すことで実証する。
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研究実績の概要 |
英語AIツールが実用的になり、英語教育を劇的に変化させる可能性がある。その中で本研究は、(1)ライティングプロセスの認知科学的分析、(2)ライティングに必要な文法的知識の言語学的分析、また努力目標として(3)ライティングへの教育的介入を行う計画である。 2023年度は、以下の2点を行った。 第一に、ライティングプロセスの認知科学的分析を行った。大学生を対象に、英語AIツールであるDeepLを利用できる状況で、「あなたの好きな教科は何ですか。理由とともに教えてください」などの内容について、8分間で英作文することを求め、そのプロセスを画面録画により記録した。操作を10カテゴリーに分類して分析した。その結果、日本語から英語への翻訳でAIを使う割合を合計すると、平均的に時間割合で67%程度、回数割合で77%程度であった。また、AIを利用せずに英文を書く割合は時間割合で24%程度、回数割合で13%程度であり、全体に占めるAI利用の割合は高かった。英語から日本語に訳す利用のしかたは5%未満と少なかった。この結果は、2024年度に学会発表予定である。 第二に、ライティングに必要な文法的知識の言語学的分析について、文献調査を行った。日英語では、言葉のニュアンスなどに関する語用論的な違いや情報の伝え方などに関する機能論的な違いなどがあるため、AIツールを使う際にはこれらの差異を言語化できるメタ言語能力が重要となる。具体的には、DeepLで英訳をする前に英語の特徴に合わせた日本語にするというプリエディットをすることで、より正確な翻訳が可能となる。英語の正確性に関しては英語上級者とAIツールでは差がない(もしくは英語上級者の方が優れている)かもしれないが、ネイティブのような自然な英語にするといった流暢性に関しては、英語上級者よりもAIツールの方が優れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)ライティングプロセスの認知科学的分析、(2)ライティングに必要な文法的知識の言語学的分析、また努力目標として(3)ライティングへの教育的介入を行う計画である。 (1)ライティングプロセスの認知科学的分析については、2023-2024年度に実施する予定であるが、2023年度内に1実験を行い、一定の成果を得ることができた。 (2)ライティングに必要な文法的知識の言語学的分析については、2024-2025年度に実施する予定であったが、先行して一定の知見を得ることができた。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ライティングプロセスの認知科学的分析に関連して実験的検討を行ったが、その結果を踏まえ、以下のように当初の方針を若干変更して研究を進める。 プロセスのモデル化については、英語AIのインパクトが増大し続けており、英語AIの普及状況により利用者の利用方略の変化が予想される。たとえば、英語AIの利便性が高まれば、日本語で作文を行い、一度に英語に翻訳するという、本研究ではみられなかった方略があり得る。また、本研究では一定の英語力を持つ大学生を対象としていたが、英語力などの個人内要因も影響するだろう。一方で、一定以上の英語力がある者でも、英語AIを利用することが本実験で明らかになった。以上から、同様の実験を続けるよりも、既存のライティングモデルを拡張する形で英語AIの利用を前提とした認知科学的モデルを構築し、そのモデルの中でプロセスの詳細を明らかにする方針が妥当であると考えている。その場合、当初提案したモデル構築型の実験ではなく、モデルを基盤として、モデルを詳細化してく研究に変化する必要がある。たとえば、そのモデル内で英語AI利用のトリガーが何かを明らかするといった課題が想定できる。当初は実験を予定していたが、調査的手法も併用していく予定である。 (2)ライティングに必要な文法的知識の言語学的分析については、(1)(3)と合わせた上で、よりよいパフォーマンスを得るための介入方法を提案していく予定である。たとえば、ある特定のタスクにおける中間日本語の記述方法について介入し、介入がない場合に比べてパフォーマンスが上がるといった研究を予定している。上記と合わせて、調査的手法も併用していく予定である。
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