研究課題/領域番号 |
23K02756
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
人見 久城 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (10218729)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 理科 / ものづくり / 授業研究 / 理科教育 / 学習指導 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,理科における「ものづくり」活動の学習過程の内実を明らかにし,理科に応用的・技術的な内容を導入することの意義を明確にすることを目的とする。具体的には,次の3点に焦点化する。(1)理科における「ものづくり」に関して,学習内容や指導方法に対する教員の意識や指導観などを調査し,「ものづくり」の指導に関する課題を具体化する。(2)科学と技術的内容の融合を積極的に取り入れたアメリカのSTEM/STEAM教育プログラムを分析し,理科における技術的内容の扱いや指導方法の特質を探る。(3)(1)(2)の知見を踏まえて,適切な学習内容と指導法略の最適化を図り,質の高い指導方法を提案する。
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研究実績の概要 |
第一に,理科におけるものづくり活動の事例分析をおこなった。事例として,アメリカ・ボストン科学館で研究開発されたEngineering is Elementary,およびEngineering the Futureに注目し,その単元構成や指導方法の特徴を分析した。いずれのプログラムにも共通する特徴として,①エンジニアリング・デザインの過程を学習の基盤に置き,その過程そのものの理解を目指すように設計されていること,②科学,数学等にかかわる知識は,テーマにかかわる問題解決の中で随時学習するようになっていること,の2点を確認できた。特に,特徴②は,基礎・基本の理解から応用へ向かう日本の理科カリキュラムとは異なる考え方であることから,日本の理科におけるものづくり活動の指導方法に対する示唆になりうることを確認した。 第二に,理科授業の中でSTEAM(スティーム)教育を展開するための教材事例を創案し,実践を通してその効果を検証した。実践内容は,中学校理科「地球と宇宙」単元において,学習内容と技術(Technology)の要素がつながっていることを生徒へ知らせることをねらいとしたものづくり活動の導入である。その結果,生徒がものづくり活動に取り組むことは,モデルの有効性や限界に気付かせることに有効であることを確認できた。 第三に,小中学校教員への聞き取り調査を通して,理科の探究活動とものづくり活動の関係を考察した。その結果,探究活動のテーマが日常生活や実社会でのニーズに起因する場合,応用的側面が強くなり,探究の内容が複合的となる傾向が指摘された。この点に関しては,ものづくり活動の展開に対して肯定的な動機付けになるとともに,自然科学に沿ったアプローチが希薄になるという懸念にもつながるという,2つの見方が指摘された。ものづくり活動の導入と展開を検討する上で,重要な示唆になることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理科におけるものづくりの指導方略の検討を目的として,研究の第1年次である令和5年度は,(1)ものづくり活動の指導上の示唆を得るためのアメリカの科学教育プログラムの特徴の分析,(2)STEAM(スティーム)教育に沿うものづくり活動の実践とその評価,(3)理科教員への聞き取り調査を通した理科の探究活動とものづくり活動の関係の考察,に取り組んだ。 研究(1)として,令和5年度は,アメリカ・カリフォルニア大学で開発されたプログラムに注目する予定であったが,当該資料の入手が困難なため,令和6年度に分析を計画していたボストン科学館の科学教育プログラムの入手に切り換えた。その結果,同館の2つのプログラムを入手でき,その単元構成や指導方法の特徴を分析し,共通する特徴を抽出できた。得られた知見を,日本理科教育学会関東支部大会において口頭発表した。研究(2)としては,中学校理科における一事例を創案し,実践を通してその効果を検証した。得られた知見を,理科教育研究誌(中学校教育フォーラム;大日本図書,計6ページ)に発表した。 研究(3)としては,小中学校教員への聞き取り調査をもとに進めた。一定の知見は得られたが,成果発表までは至っていない。聞き取りの人数や内容を拡充させて,次年度も継続する予定である。 令和5年度に予定した研究内容の一部は達成できたものの,新型コロナウィルス禍の影響により,アメリカへの渡航調査は断念せざるを得なかった。授業の参与観察などは,当初の計画に照らして若干の遅れが出ている。令和6年度の研究内容として,(1)ものづくり活動の事例の更なる創案と評価,(2)アメリカにおける科学教育プログラムの分析等を進めていく予定である。(2)については,実施可能であれば渡航調査をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究内容として,(1)ものづくり活動の事例の更なる創案と評価,(2)アメリカにおける科学教育プログラムの分析等を進めていく予定である。 (2)については,実施可能であれば渡航調査をおこなう予定である。 (1)については,これまでの実践例をふまえ,ものづくり活動の指導における改善点を検討し,最適化に沿う指導方略を策定していく。従来の指導方法であった応用的なものづくりの方向を踏襲するとともに,探究型のものづくりを指向した学習の展開を検討していく。(2)の事例としては,令和5年度までに分析したアメリカの初等中等科学教育プログラムの他に,イギリスのプログラムの数事例を入手済みであるので,それらも分析対象に含めていく。 STEAM(スティーム)教育が日本の学校教育に様々な形で導入されつつあるが,その指向する方向が理科のものづくり活動に沿うものか否かは議論が分かれている。理科のものづくり活動の最適化の枠組みを整えることが本研究の主眼であるが,得られる知見が先の議論に若干でも関連させることが,学校現場のニーズや悩みに応えることにつながると考えられる。令和6年度も,小中学校教員への聞き取り調査や授業の参与観察を進めることで,本研究の充実を図っていくつもりである。
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