研究課題/領域番号 |
23K02773
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
渡邉 大輔 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (90636193)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 分子模型 / モデル / 化学変化 / 化学教育 / 化学変化の過程 / 視覚 / 力覚 |
研究開始時の研究の概要 |
化学変化における結合の再編成の過程を、VR技術を駆使して視覚的・力覚的に体感させる分子模型システム教材を開発する。化学は「物質における電子の科学である」といわれ、あらゆる化学の領域で電子のふるまいを探ることが重要である。しかしながら、化学変化は複数の階層にまたがるため、従来の分子模型では「分子中の原子のくみかえ」のプロセスを表現していない。物理的模型の材料的制約によって、電子レベルで反応の過程を教授できておらず、各反応を羅列的に暗記させる状況が続いている。本研究により、新しい表現が可能となり、化学教育研究におけるカリキュラム・教育内容・教材を「電子のレベル」で再構成する教育の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
従来の物理的な分子模型では材料の制約により「固くて不変な原子」を前提とせざるをえない。そのため変化のプロセスを表現するには、変化の過程のあらゆる局面で多くの連結部を切り原子を外したり入れ替えたりしなければならず、もとの分子の炭素骨格を崩してしまう。そこで本研究では、化学変化(分子中の電子の相互作用による原子のくみかえ)における結合の再編成の過程を、VR 技術を駆使することによって視覚的・力覚的に体感させる分子模型システム教材の開発を目的とする。 この目的を達成するために(0)高校化学教育の教育内容を見直し、(1)教育内容の課題に照らして「表現としてあるべき姿」を固め、(2)「重要な反応」に限定して静電ポテンシャルマップ(EPM)の情報を集め、(3)VR で実現可能な「技術的要件を定義」して具体化する。 (0)については「複雑な炭素化合物でも反応中心を特定し反応の規則性を予言できる」=「“原子の電子”が“分子の電子”になり“分子中の電子豊富な部分”と“別の分子の電子不足な部分”が反応して“分子中の原子”にくみかえがおこる」を教育目標と定めた。(1)については分子模型の科学論的・科学教育論的吟味を行い、その妥当性を化学的知見から裏付ける作業、とりわけ「エネルギー反応図」と「吸引力」との関係を整合的に理解する検討を進めた。(2)視覚表現については、静電ポテンシャルマップの利用を念頭に、最も重要な反応についてのEPM情報を収集する予備的作業を進めた。力覚表現については、機械設計・機械システムの立場から、専門家の協力・アドバイスを受け、「表現としてあるべき姿」と「あるべき仕様」の往還を重視した、具体的な検討に着手した。今後(3)の検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は先行研究の評価(到達点と課題)を中心に行い、残存課題と対応方針について検討を進めた。 先行研究では、デバイスへの入力要件より使用ソフトが制限される、(テスト時の)引力/斥力は単一かつ不可変での表現、視覚及び力覚デバイスは3次元表現可能だが反応体験は2次元といった特徴がある。一方で、構造論と反応論の表現が分離されれており、既存ソフト・デバイス使用による仕様制限といった課題が見られる。そのため、構造論のモデルの限界により反応論が十分に表現し切れていない。 これに対して本研究課題では、1)視覚と力覚の表現差、2)反応論の表現について検討を進めた。今後分子模型システム教材を拡張していく事が出来るかの鍵は「表現方法の進捗」と「実現する視覚、力覚要件の整理及びソフト・ハードの確立」にあると考えられる。表現方法のあるべき姿とは何かを固め、それぞれの設計要件となるあるべき仕様を固める事が必要である(要件定義)。要件定義に向けた必要な項目だしを表現方法に合わせて構想する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
化学変化(分子中の電子の相互作用による原子のくみかえ)における結合の再編成の過程を、VR 技術を駆使することによって視覚的・力覚的に体感させる分子模型システム教材の開発する。化学変化の教育内容の課題に照らし「表現としてあるべき姿」を固め、生徒に教えるに値するもっとも重要な反応に限定し、VR でどのように実現可能かを考慮した形で具体化を目指す。 一方で、本システムを運用する上で、開発・市販されたデバイス・ソフトにより本研究で表現可能な内容は変わりうる。表現としてあるべき姿を固めつつ、現時点で利用可能なデバイス・ソフトの利用可能性を評価し、本研究の目的を達成する。
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