研究課題/領域番号 |
23K02847
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
保坂 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00364042)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 子どもの貧困 / 支援者コミュニティ / 語りの媒介 / 気づき / コミュニケーション・スタイル / きかずに聴く / 子どもの貧困支援 / 子どもの居場所 / フィールド調査 / ナラティヴ・アプローチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、さまざまな背景から困窮状況におかれている子どもたちの現状と課題を明らかにするために、子どもたちとどのようにコミュニケーションをとることが求められるのかについて、支援現場の取り組み実践から探究しようとするものである。調査では、支援実践現場Oにおける継続的なフィールド調査を実施するとともに、子どもと支援者とのかかわり場面の映像データの記録・分析をもとに、困窮状況にある子どもたちと関わる際のコミュニケーション・スタイルの特徴を明らかにする。子どもたちとのかかわりのヒントとしてより広く知られることで、困っていることに気が付かれていない多くの子どもたちに、支援の手が届くことを目指すものである。
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研究実績の概要 |
初年度は、これまで継続的に続けてきた困窮する子どもたちがやってくる食堂Oにおけるフィールドワークを中心に、その他、いくつかの支援現場、とくに「聴く」実践を行っている場において、そのかかわり方に着目してきた。社会的弱者に位置づけられ、さらに家庭背景などによって困っている子どもたちは、正面から尋ねられても決して「助けて」と言うことはない。それは、「援助希求性の弱さ」として指摘されていることであるかもしれない。しかし、フィールド調査のなかでみえてきたのは、語る側の子どもの語る力の弱さだけではなく、語ることそのものへの抵抗感、そしてまわりの大人への不信感が強いということであった。したがって、子どもたちとの信頼関係構築のもと、「きかずに聴く」というスタイルが有効であることが示されたとともに、それが、ひとりではなく、子どもを取り囲むまわりの大人の連携によって可能になることがわかった。 たとえば研究の中心となるフィールドにおいては、子どもたちの様子を店主やスタッフは何日か観察し、スタッフが感じる「違和感」を確認し大人で共有する。そして、子どもが傷つくことがないよう、子どもの様子について知る必要があることを少しずつ探っていく。同じ服ばかり着てくる子どもには、1週間ほどたってから「その服お気に入りなの?」と声をかけてみる。子どもが大切にしている世界を壊さないように、子どもが安心できる関係をゆっくり構築する。まずは、この場所が子どもを脅かす場ではないことを示す必要がある。そのために、子どもたちが生きている現実に迫り、そこからどのような世界をみているのかを想像し、スタッフ間で共有しながら、子どもたちとのかかわり方を探っていることがわかった。それは、スタッフ間での対話から読み取ることができ、とくに有効であったのは、顔が浮かぶ子どもとの経験、子どもについての語りを共有することであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心となるフィールドにおける調査は、順調に進んでおり、かかわりのあるスタッフの語りデータやかかわりの場面の記録を収集しつつ、分析、考察を進めている。かかわりだけではなく、子どものまわりのおとなとの連携(コミュニケーション)が不可欠であることから、大人の連携に着目するとともに、他の支援現場でのフィールドワークを継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
食堂Oでのフィールド研究は引き続き実施しながら、子どもを介した外部との連携の在り方に着目するとともに、他の支援現場にも目を向け、そこでのかかわりについても調査、分析を進める予定である。食堂Oでのフィールド調査をもとに、支援者が子どもたちとのかかわりをどのように認識し、さらにそのほかのかかわりのある大人たち(保護者や学校の教員など)とのかかわりをどのように認識しているのかが、子どもとのかかわりに大きく影響していることがわかり、支援者および子どもを取り囲むおとなのコミュニケーションがカギとなっていることも示された。したがって、支援者がそれぞれについて、どのように位置づけかかわっているのかについて、ポジショニング理論にもとづき、さらに考察を進める。 2024年度は、2023年度にデータ収集を行い、データの分析および考察を進めた成果について、国内外の学会等にて発表予定である。これらの成果を踏まえ、本研究助成最終年度のまとめに向けて、必要なデータ収集を引き続き実施するとともに、困窮する子どもの支援現場において「気づき」をもたらすコミュニケーション・スタイルを支える関係構造について、モデル提示を試みたい。
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