研究課題/領域番号 |
23K02853
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
橋本 剛明 東洋大学, 社会学部, 准教授 (80772102)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 不公正 / 被害者 / 抗議(プロテスト) / 被害者支援 / 被害者非難 / 心の知覚 / 集合的抗議行動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、不公正の被害者が個人的、あるいは集団的に示す「抗議」が、第三者からどのように評価されるかを検討する。抗議の内容や発信方法に応じて、人々から好意的に捉えられる場合もあれば、利己的な動機が推論されてかえって否定的な評価につながる場合もある。本研究では、本研究では、抗議行動が、抗議者の心的特性の知覚や動機推論に与える影響を検討することで、抗議がもたらす社会的な影響やその機能について明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、不公正の被害者が示す「抗議」の効果を解明することを目指すものである。 2023年度には、まず抗議という題材に関する既存知見を精査することで理論的基盤の構築を進めた。抗議行動には、個人や集団による訴訟、デモ、ストライキなど、さまざまな形があるが、報道やルポ、文献を整理しつつ、社会心理学の研究知見と照らして、抗議者の心理についての系統的特徴の把握を目指した。その結果、不公正の知覚、集団や規範への同一視、抗議の有効性感覚などが、人や集団を抗議に駆り立てる主要な動機的因子であることがわかった。 そして、当該年度中には、被害者による抗議に向けられる人々の態度を検討するため、2件の実験を実施した。ひとつめの実験では、大学生265名に事故や傷害事件の架空事例を呈示し、被害者への印象評価を求めた。事例のなかで被害者が主体的な抗議の意志を示すことは、人々の共感や同情を促進していた。その一方で、抗議は、被害者が「か弱くない」という印象も強めており、それが、被害者に情緒的サポートを提供しようという意図の低下をもたらしていた。つまり、被害者による抗議は、被害者への受容的態度を醸成しうるが、場合によっては被害者支援を抑制する働きを持つといえる。この点をさらに検討するため、一般サンプル500名を対象に追加実験を実施した。この実験では、被害者への支援意図に加えて、支援の必要性や有効性の認知についても測定しており、理論の精緻化が可能となっている。このデータは、現在分析を行っているところである。 本プロジェクトの成果は、日本社会心理学会第64回大会にて報告された。加えて、当該年度には2篇の共著論文が刊行された(Shimizu, Hashimoto, & Karasawa, 2023; Numata, Asa, Hashimoto, & Karasawa, 2024)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、研究遂行に関わる基盤的知識の獲得・整理を目的として、個人・集団による抗議の検討に資すると考えられる先行研究を幅広く収集、精査した。そして、被害者が個人として行う抗議に対する人々の態度を検討するためのふたつの実験を実施した。これらは、当初より研究計画に組み込まれていたものであり、想定通りに進捗している。翌年度に、検討対象を集団的な抗議に広げて研究をさらに展開していくための下地ができあがったという点でも、本年度の遂行は評価できるものと考えられる。 ただし、翌年度に実施を予定していた研究課題として、ソーシャルメディア上のテキストデータ解析があるが、2023年に旧ツイッター(現X)のAPI利用規定の変更と有料化がなされたたため、当初の計画通りの実行は困難となる。この点についての方策を検討することが求められる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度に得られた知見を基盤に据えて、抗議行動への態度の規定因の検討をさらに進める。特に、抗議が個人によるものか集団によるものであるかの違いや、発信されるメッセージ内容およびフレーミングの効果について、実験的に検証する。 一方で、当初計画されていたソーシャルメディア上のテキストデータ解析については、旧ツイッター(現X)のAPI利用規定の変更および有料化がなされており、予算の枠内で遂行することが困難となった。代替的な方針として、テキストデータの定量解析は行わず、代表的な事例の収集と記述的分析にとどめ、得られた洞察を調査や実験につなげていくことを計画している。
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