研究課題/領域番号 |
23K02858
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 誠子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (20633655)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 仮説的判断 / 直観的判断 / 課題解決 / 大学生 / 概念変化 / 既有知識 / 誤概念 / 思考過程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,教授による概念変化を促進・抑制する学習者要因について検討するものである。誤概念修正の教授ストラテジーの有効性は学習者のもつ誤概念の「強さ」により異なることが先行研究により示されているが,誤概念の強さとは何によって規定されるのか,そしてなぜ誤概念の強度によって有効な教授ストラテジーが異なるのか,それらの心理的メカニズムについては未解明のままである。本研究はこの問題について,事前段階における誤反応の一貫性,およびルールに基づく仮説的判断と既有知識に基づく直観的判断の思考過程の側面から検討する。さらに,それらの研究結果を踏まえ,望ましい思考過程を促すための教授ストラテジーを提案する。
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研究実績の概要 |
本研究は,概念変化の促進・抑制に関わる学習者要因について,事前段階における誤反応の一貫性,およびルールに基づく仮説的判断と既有知識に基づく直観的判断の思考過程の側面から検討するものである。2023年度は,課題解決における判断変容の困難さについて学習者の思考過程の側面から再検討した。具体的には,条件づけのコイ課題(舛田,2021;手叩き音にコイが近寄る行動について,レスポンデント条件づけとオペラント条件づけのうちどちらによる行動形成かをたずねる問題)における大学生の判断を取り上げた。 先行研究(舛田,2021; 佐藤,2022)では,上記の課題に対して「レスポンデント条件づけ」と判断する学習者が少なくないこと,その判断にはパブロフの犬に関する学習経験が影響していることが示されている。これを思考過程の側面から捉え直すと,パブロフの犬に関する既有知識から課題の表面的特徴に着目して「レスポンデント条件づけである」とする直観的判断に飛びつき,授業で学んだ条件づけの知識が後付け的に使用される「自己完結的推論」(佐藤・工藤,2021)が生じていると考えられた。そこで,条件づけに関する知識を使用した課題解決を促す方策として,はじめに対象となる行動の種類を判別させ適切な仮説的判断をさせること,そのうえで「行為の主体者」から「行動の制御者」へ視点を変換し行動形成のメカニズムを説明させることを試みた。大学生を対象とした授業実践の結果,コイ課題での適切判断の割合が先行研究よりも上昇し,さらに行動形成メカニズムについても適切な説明を行っていた者が多かったことが示された。この結果から,概念変化プロセスにおいてまずは適切属性に着目した仮説的判断をおこなうことが重要になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事前段階における誤反応の一貫性と教授ストラテジーの効果との関連については,収集したデータを量的・質的の両側面から再分析しその結果を研究会で報告した。研究会での検討結果を踏まえ,内容を論文にまとめている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は思考過程の側面から検討をおこなったが,仮説的判断においては(未知事例あるいは新規の文脈において)教えられた知識を使用して判断することが求められるため,知識使用に対する学習者の認識的信念が大きく影響する可能性がある。知識をどう捉えるかといった学習者の知識観についても検討をおこなうことが求められる。
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