研究課題/領域番号 |
23K02875
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
辻 弘美 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (80411453)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 創造的思考 / 実行機能 / 注意切替 / 思考の柔軟性 / ユーモア理解 / ユーモア / 注意の切り替え / 遊び |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、幼児期からの創造的思考が遊び活動の中でどのような形であらわれ、発達していくのかを2つの問いを通して明らかにする。 ①創造的思考の基盤的資質や能力は、どのような形であらわれ、創造性に結びつくのか。 ②幼児の創造的思考は、ユーモア遊びを中心とした教育環境の中でどのように育つのか。 創造的思考の基盤の一つには、実行機能の中でも情報を柔軟に処理する力が重要であると仮定し、情報処理の柔軟性に共通するユーモア理解との関係からその発達をとらえる。ユーモア要素は、創造的思考の育ちを援助する鍵となると仮定し、ユーモア遊びプログラムを通した会話的やりとりの介入効果を検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究は,幼児期からの創造的思考が遊び活動の中でどのような形であらわれ,発達していくのかを明らかにする。2023年度は,創造的思考の基盤的資質や能力は,どのような形であらわれ,創造性に結びつくのかの問いを検討するために,創造的思考の基盤となる資質とスキルとして,実行機能とユーモア理解を変数として測定した。これらが,創造的思考の要素となる柔軟的思考と関連性するかを検証した。実行機能は,幼児の性格特性のうち開放性を媒介変数として柔軟的思考と関連することが明らかとなり,これらの成果は,国際心理学会(ICP, 2024)発表論文として採択された。 これらの知見から派生した研究として,若年成人を中心とした大学生を対象としたオンライン調査を実施し,予備調査においては国内の学会で発表した(日本発達心理学会,2024)。ユーモア理解や表出と認知的柔軟性の関係性を性格特性を踏まえたモデルを仮定し検証した。ユーモア理解は,外向性および認知的柔軟性を介して有意な予測変数であることが明らかとなったのに対し,ユーモア産出は,認知的柔軟性を介さず,外向性と開放性によって予測されることがわかった。ユーモアの理解と産出の特徴が,性格特性と認知的柔軟性の両者を踏まえて明らかになり,この成果についても,国内外の学会(ICP, 2024)での発表として採択された。 ユーモアを介した遊びプログラムの構成を保育現場の教員と進めながら,ユーモア理解の発達の特徴をとらえた。ユーモア理解の測定に言語反応と視線注視の指標を用いた結果が,国際行動発達学会(ISSBD,2024)での発表として採択された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
創造的思考の基礎となる資質とスキルとして実行機能,ユーモア理解,開放性を測定し,これらが直接的,間接的に創造的な成果・産物と関連するかを検証した。創造的思考の成果として,あいまい図形の解釈を用いて実験を進めた結果,仮説通りの結果得られたことから,順調に進展しているといえる。 2024年の創造的思考を育む教育環境づくりの下準備としては,2023年に対象となる教育機関(こども園)においてユーモアを育む遊びについて6回の研修を行い,実践者とともに教育活動プログラムの基礎を作った。2024年度の園での教育活動としてユーモアを用いた遊びを通して子どもが受けた保育者からの語りかけとやりとりを記録する方法は,当初購入予定のデバイスとシステムの構築が,想定以上の価格上昇によって難しくなり,変更が必要となった。やりとりの質を定量化しフィードバックする機器LENAシステムを使用せずに,保育者が子どもとのやりとりの内容を活動記録として当該教育機関(こども園)にある記録デバイスを用いて残し,その記録を保育者とともに振り返る中でフィードバックをすることとした。この変更を踏まえて,2024年度の年間にわたる教育活動プログラムの実施とフィードバックを研修に組み込んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年は,2023年に準備を終えたユーモアを育む遊びを用いた教育活動プログラムに沿って,実践者とともに,園でのユーモア遊びを通してみられる変化を記録していく。記録を共有し保育実践者とともにユーモア遊びの振り返りを行う。活動の記録を量的,質的な視点から分析し,保育者のかかわりと,子どものユーモア理解と産出の変化を検証する。 2023年の研究を通して,2つの追加研究の方向性が見えた。一つは,追加研究として成人のユーモア理解と産出に性格特性や認知的柔軟性がどのように関連しているかについてのモデル検証を行ったことである。今後この研究成果を踏まえて,成人における柔軟な思考の成果として,「あいまい図形」の解釈の過程について検討を進める計画を立てている。もう一つは,ユーモア理解の発達の特徴を3歳未満の乳幼児を対象に,視線データを収集し,そのデータを緻密に解析することである。 研究成果の公表としては,国際学会で2023年度に得られたデータ分析結果の発表を3本行うことが決定している。
|