研究課題/領域番号 |
23K02881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 九州ルーテル学院大学 |
研究代表者 |
久崎 孝浩 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (70412757)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 内受容感覚 / 認知的共感 / 他者の心の理解 / 心拍センサー / Rピーク同期 / 他者視点的な心の理解 / 鏡像自己認知 / 情動調律 / 情動鏡映 |
研究開始時の研究の概要 |
2歳頃には他者視点的に情動・欲求を理解するようになることが知られている。その発達には,自分の情動-内受容感覚への覚知が強くなって,また安定した自己認識の獲得によって,情動等の心は自他で異なる場合があることに気づくことが関係していると考え,本研究はそれを実証する。また,内受容感覚への覚知と安定した自己認識の発達には母子相互作用の在り方が関係していると考え,母親の情動調整や情動鏡映の影響も検討する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績は,関係する先行研究をサーチして内受容感覚が他者の心の理解に寄与する可能性を検討したこと,また乳幼児用の内受容感覚感受性測定プログラムを検討したことである。 科研費申請当初は,内受容感覚感受性が子ども自身の知覚・認知や感情の主体的感覚を支えて他者とは異なる自己の感覚をもたらすものと想定し,他者の心の推測(認知的共感)の発達には直接関与しない(むしろそれは客体的自己意識がもたらす)ものと考えていた。しかし,近年の先行研究レビューを重ねるうちに,内受容感覚感受性そのものが他者の心の推測の発達に直接的にも関与する可能性を考慮する必要性を感じるようになった。具体的には,他者の心の推測においてその心の内容が本当に他者の心的状態に適合しているかを検証する際に,予測される内受容感覚が貢献しているのではないかということである。自己の内受容感覚に基づく心や行動の動きを経験的によく理解している内受容感覚感受性の高い子どもは,他者の置かれている状況と様子から他者の内受容感覚をも予測して,推測した他者の心の内容がその内受容感覚と適合しているかを検証して,より正確に他者の心の内容を推測しているのではないかという論を現在展開している。この論は,「内受容感覚と共感・心の理解の関係に関する理論的検討」という題名で所属機関の紀要にまとめた。 一方,乳幼児用の内受容感覚感受性測定プログラムは2023年度中においては,どのようなデバイスやセンサーを使うかの検討で終わり,プログラム作成・試験に至らなかった。今後は,指に装着する赤外線タイプの心拍センサーから得た心拍データをArduinoで読み込み,Ardinoからシリアル通信でPCに送り,PC上のpythonでリアルタイムにRピークを検出することで,Rピークに同期・非同期させる画像刺激を乳幼児に提示するシステムをまず制作する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度は特に内受容感覚感受性測定プログラムの開発と客体的自己意識測定方法の開発が目標であった。特に内受容感覚感受性測定プログラムは本研究の要であるため,開発と試験を早急に進めなければいけなかったが,そのようにならなかった理由はそのプログラムに必要なデバイスやセンサーとして何が適切かを具体的に検討できなかったためである。乳幼児に装着する心拍センサーとして医療用のものも想定されるが,高額であり乳幼児に装着するには違和感を感じさせて自然な計測が困難になる可能性がある。文献やインターネット上の情報をサーチしたが,中々適切なセンサーが見つからず,そのセンサーを組み込んだ測定プログラムの開発に進めなかった。しかし,概要にも示したように,適切な心拍センサーを見つけ,2024年度はそれを組み込んだ内受容感覚感受性測定プログラムの開発に着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は内受容感覚感受性測定プログラムの開発に着手する。具体的には,以下の手順で進める予定である。 ①脈拍センサーとArduinoを購入して,心拍データをArduinoで読み込み,Arduinoからシリアル通信でPCに送ったシグナルをそのPC上でpythonを使ってRピークを検知できるかを確かめる。そのためには,Arduinoに脈拍センサーと連携するためのライブラリをインクルードする。また,PCには,Arduinoから送られてくる心拍データをバッファリングしてRピークをリアルタイムで推定するためのpythonコードを記述し,Rピークが実際に特定できているかを検証する。 ②すでに購入しているTobii製アイトラッカーで乳幼児の視線位置を連続的に検知するためのpythonコードをそのアイトラッカーに接続しているPCに記述し,視線検知が正常に行われているかを確認する。 ③心拍のRピークに同期させて画像刺激を変化させるpythonコード,乳幼児の視線位置がその画像刺激の座標領域に入ったときに画像刺激が別の画像刺激(乳幼児にとっての報酬刺激に入れ替わるようにするpythonコードをPCに記述し,そのとおりになるかを検証する。合わせて,画像刺激提示開始から画像刺激を注視するまでの時間や報酬刺激が出現するまでの時間を記録するpythonコードも組み込んで,その時間計測の正確さも確認する。 ④心拍のRピークに同期して変化する画像刺激と非同期で変化する画像刺激を同一画面に提示して同期する画像刺激に視線を向けたときに報酬刺激が出現するためのpythonコードを組み,大人や乳幼児を対象にして精確な視線位置計測や時間計測が可能かを検証する。
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