研究課題/領域番号 |
23K02952
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
岩男 芙美 中村学園大学, 教育学部, 助教 (00781030)
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研究分担者 |
木谷 秀勝 山口大学, 教育学部, 教授 (50225083)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 女性 / 女の子 / カモフラージュ / 身体感覚 / 関係性 / ICT |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症 の女児を対象とした予防的支援プログラムの開発,評価方法の確立,支援者への情報発信を目的とした研究を行う。青年期の女性ASD者への研究実践から,身体感覚と自分らしさの表現を軸に,同じ特性をもつ仲間関係の中で自己理解を深めることの有効性が示されている。こうした支援は彼女たちが周囲への違和感を持ち始める児童期から開始し,ゆるやかな関係性を構築していくと良いと考えられる。本研究では①思春期以前から支援を開始し,②表現手段としてICT機器も活用しながら,③身体感覚に関する自己理解と自分らしさの表現を軸としたプログラムを展開し,ゆるやかな関係性を作る支援により二次障害の予防を目指す。
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研究実績の概要 |
女性の自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder:ASD)児は、社会的場面で「大人の言うことをよく聞く女の子」「おとなしい」 などと評価されるために,年少時には本人が抱える困難が明らかになりづらい。しかし幼少時期からの過剰適応の結果,学童期以降,高次な対人関係が必要になると,様々な症状のために支援機関に繋がることが増える(山内ら,2013)。またしばしば「カモフラージュ(ASD特性を有する人々が社会的場面で自身の自閉特性を小さく見せるようにとる方略;Lai et al.,2011)」を取りやすいという指摘もある。 本研究では,女児を対象とした予防的支援プログラムの開発を目指す。筆者らのこれまでの研究および青年期の女性ASD者への実践から,身体感覚と自分らしさの表現を軸に,同じ特性をもつ仲間関係の中で自己理解を深めることの有効性が示唆されている。同時にこうした支援プログラムは本来,彼女たちが周囲への違和感を持ち始める児童期から開始しゆるやかな関係性を構築していくことが肝要である。そこで,①二次障害の好発時期である思春期以前から支援を開始し,②表現手段として ICT機器も活用しながら,③身体感覚に関する自己理解と自分らしさの表現を軸としたプログラムを展開し,ゆるやかに仲間関係を構築する支援策により二次障害の予防を目指す。 2023年度前期にプログラム内容の倫理審査や参加者募集を実施し,後期には全6回のプログラムを実践した。5名のASD女児が参加した。2024年度秋に学会発表を行う予定で2023年度末に実践成果をまとめ,同時に,保護者へのフィードバックを遂行している。本研究に先行して試行してきた研究成果について論文投稿し,2024年3月発刊の『心理劇研究』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に予定していた研究課題はおおよそ達成することができた。ASDの女児を対象としたグループプログラムを実践することができ,保護者フィードバックを遂行中である。同時にここで得られた成果については,学会発表の準備中である。グループでは,参加児童同士がICT機器を用いながら生き生きと自己表現し,関係性の発展も見受けられた。参加児の参加の様子を鑑み,特に身体感覚に関するプログラム内容については当初と異なるものになることもあった。また,プログラム評価に関して,より有効な手段があることが予測された。これらの点に関してはさらなる検討が必要となる。それでも次年度での新たなセッション実施も既に計画が進んでおり,データの追加が期待できる状況である。 加えて過年度,試行的に実践していたプログラムについて論文投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の実績をふまえ,令和6年度はプログラム内容を改善し実践する。特に,①身体感覚に関するプログラム内容と,②プログラムの有効性の評価に関しては,さらなる検討が必要である。①についてはより当事者のニーズに即したものにする必要がある。そのため,今年度試行した際の参加児の行動観察結果や保護者インタビューなどを通してこれらを把握していく。②に関しては,青年期の女性ASD者への調査等も通して検討していく。 もう一つの視点として,支援者側の意識調査も必要である。令和5年度グループ参加児の多くは所属学校学級の中で「大きな問題なく」過ごしていると教師から報告されることがしばしばあったが,これらは当人の努力によるところも大きく,「カモフラージュ」によるところもあると推察される。令和6年度は,「カモフラージュ」と支援者側の認識との関連の調査も進め,さらなる実態把握を行っていく。
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