研究課題/領域番号 |
23K02955
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
羽間 京子 千葉大学, 教育学部, 教授 (60323383)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 保護観察 / 仮釈放 / CFP / アセスメント / 再犯予測力 / リスク・ニード・リスポンシビティ(RNR)モデル / RNRモデル適合性 / 犯罪・非行 / リスク・ニード・リスポンシビティモデル適合性 / 再犯 |
研究開始時の研究の概要 |
犯罪をした人の再犯抑制のために、Risk-Need-Responsivity(RNR)モデル(Bonta & Andrews, 2017)に準拠すること、つまり、①再犯リスクに応じた密度で(リスク原則)、②動的犯罪誘発性要因に焦点づけ(ニード原則)、③反応性の高い方法で(リスポンシビティ原則)、処遇を行うことが有用だとされる。同モデルを踏まえ、法務省保護局は、保護観察の新たなアセスメントツールを開発・施行した。同局と協力し、本研究は、同ツールによるアセスメントに基づく保護観察の実施計画及び処遇内容とRNRモデルの適合性、それらと再犯の関連を分析し、より効果的な処遇のための留意点を明らかにする。
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研究実績の概要 |
1.法務省保護局から、保護観察の新たなアセスメントツール「保護観察におけるケースフォーミュレーション(Case Formulation in Probation/Parole: CFP)」の第二次試行(2019年4月~翌年9月)結果の情報提供(個人情報削除済、以下同じ)を受けた。試行では、全国のCFP試行保護観察官の担当事例を、従前ツール実施群とCFP実施群に割り付けた。第二次試行で改訂されたCFPの再犯予測力検証のため、従前ツール実施群446人(大人175人、少年271人)とCFP実施群769人(大人337人、少年432人)につき、従属変数を開始後2年間の再犯、独立変数を①従前ツール実施群は同ツール静的リスク、②CFP実施群はCFPの保険統計的再犯リスク、動的犯罪誘発性要因、動的保護・改善更生促進要因とし、大人と少年別にCox回帰分析を行った。従前ツール静的リスクは大人では再犯を有意に正に予測したが、少年では有意に予測しなかった。CFP実施群は、大人で保険統計的再犯リスクと動的犯罪誘発性要因が正の、少年で保険統計的再犯リスクが正の、動的保護・改善更生促進要因が負の有意な再犯予測因子だった。改訂CFPの再犯予測力が確認された。 2.同局の許可と保護観察官等の協力を得て行った、CFPによるアセスメントの事例研究成果を発表した。CFPにより、動的二要因の包括的把握と実施計画への反映ができ、ケースフォーミュレーションを通し、より個別的な処遇方針等が得られることが示された。また、多くの事例で外傷的体験の心理的影響が非行や犯罪に関連しており、その理解と慎重な対応が必要とされた。 3.同局提供資料により事例研究を行い、再犯抑制に有用とされるリスク・ニード・リスポンシビティ(RNR)モデルと、保護観察の実施計画や処遇の適合性の評価基準を検討し、CFP実施群について評価結果のデータ化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際的に、犯罪をした人の再犯抑制のために、RNRモデルに適合した処遇を行うことが有用であるとされる。RNRモデルは、①再犯リスクに応じた密度で、②動的犯罪誘発性要因に焦点づけ、③反応性の高い方法で処遇を行うことを推奨している。法務省保護局は、RNRモデルを踏まえてCFPを開発し、二次の試行を経て施行した。本研究の目的は、CFPによるアセスメントを実施した事例について、保護観察の実施計画及び処遇内容とRNRモデルとの適合性、さらに、それらの適合性と再犯との関連を分析し、より効果的な処遇のための留意点を明らかにすることである。 まず、我々研究チームは、第二次試行において改訂されたCFPの再犯予測力を検証するため、1,215人(従前ツール実施群446人、CFP実施群769人)の保護観察開始後2年間の再犯データを収集し、それぞれのツールの再犯予測力を、大人と少年別に分析した。その結果、従前ツールよりも、改訂CFPのほうが再犯予測力を有することが示された。加えて、CFPによるアセスメントにかかる35件の事例研究成果をまとめ、CFP使用の意義と留意事項を抽出・考察し、発表した。さらに、事例研究を通じて、保護観察の実施計画及び処遇内容のRNRモデル適合性の評価基準を検討し、その検討結果を踏まえ、CFP実施群769人について、同モデル適合性の評価結果のデータ化を進めた。 以上のことから、本研究課題の進捗状況は、「(2)おおむね順調に進展している」と言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、次の二点を計画している。 1.2019年4月以降のCFP第二次試行の対象となった人について、さらに保護観察開始後3年間の再犯データを収集し、第二次試行におけるCFPの再犯予測力を検証し、成果を公表する。 2.保護観察官等の参加を得て、CFPに関する事例研究を継続し、保護観察の実施計画及び処遇内容のRNRモデルへの適合性を評価する基準について検討を続ける。また、第二次試行のCFP実施群における、保護観察の実施計画や処遇内容のRNRモデル適合性の評価結果のデータ化を更に進め、分析を行う。
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