研究課題/領域番号 |
23K03003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
今井 章 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (80211754)
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研究分担者 |
高橋 啓介 愛知淑徳大学, 健康医療科学部, 教授 (80236273)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 固視微動 / 静止網膜像 / トレモア / フリック / ドリフト / 低視力 / 眼球運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,人の固視中に観察される微細な眼球運動(固視微動)をデータとして取り出し,その固視微動データに追従して変化する視覚刺激を提示し,固視微動の機能的意義を特定することを目的とする。固視微動にはフリック,ドリフト,トレモアの3種類が区別されるが,特性の異なる各々の固視微動を個別に遮断・増幅するフィルターをかけられる装置を用いて実験を行う。初年度から第2年度までに,視覚健常者を対象に,個々の固視微動を順次,遮断・増幅させて知覚的世界の変化を調べる。最終年度では,低視力者を対象として,健常者との比較を試みる。健常者との比較に基づき,低視力者の視覚機能回復についても手かがりとなる知見を得る。
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研究実績の概要 |
本研究では,人の固視中に観察される微細な眼球運動(固視微動)をデータとして取り出し,その固視微動データに追従して変化する視覚刺激を提示し,固視微動の機能的意義を特定することを目的としている。 本年度では,フリック,ドリフト,トレモアの3種類の固視微動を個別に遮断・増幅するフィルターをかけられる装置の開発を行った。機器製作を担う松本電子部品担当者と数回の打合せを行い,今年度はフィルター部分を実現する機器を開発した。 研究対象である固視微動の特性は以下のようである。フリックは1―5秒に1回,持続時間25ミリ秒(周波数としては20 Hz)程度で生ずる偏位角1―20分くらいの急速な運動である。ドリフトはフリック間にみられる偏位角5分程度の非常にゆっくりとした0.1―2.0Hzの変動である。トレモアはドリフトに重畳して生起する20―100 Hz程度のランダムな振動成分である。開発されたフィルターは,フリック用として,20 Hzおよび25 Hzの周波数帯域成分を除去する機能,ドリフト用として,0―2.0 Hzの周波数帯域成分を除去する機能,トレモア用として,20―100 Hzの周波数帯域成分を除去する機能を実現させた。 さらに,視覚刺激を提示するため,32×32 mm(一辺16ドット)の大きさの赤色LEDによる刺激提示装置を作成した。このLED提示装置に視覚刺激を提示し,視覚刺激が眼球運動に追随して提示できるかを予備実験的に検討し,眼球運動に応じて提示された視覚刺激が移動することを確認した。 ただし,視覚刺激を完全に眼球運動に追随させるには校正精度がまだ低いため,今後,刺激提示装置までの観察距離,提示する刺激の大きさ等の調整が必要なことが確認された。また,このLED提示装置には現在,文字「A」のみを提示しているが,令和6年度中には様々なタイプの刺激を提示できるようにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
眼球運動を取り出し,それにフィルターをかける装置については概ね予定通り進められている。一方,眼球運動に追随させて視覚刺激を提示する刺激提示部の開発が,当初の予定より2ヶ月程度,遅れている。初期的な視覚刺激提示装置は開発済であるが,様々な刺激パターンを提示して,眼球運動に完全に追随して微動する刺激部の完成には至っておらず,進捗状況としては「やや遅れている」とした。 ただし,令和6年度の6月までには,所期通りの刺激提示部が完成する予定であり,これまでの遅れは充分,取り戻せることが見込めるため,R6年度中には概ね順調に研究が進展すると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
眼球運動を取り出し,それにフィルターをかける装置は完成していることから,令和6年度の6月までに,眼球運動に完全に追随して微動する刺激を提示できる刺激提示部を完成させる予定である。 この刺激提示部が完成次第,(1)フィルターを全くかけない場合に実現される静止網膜像を提示して,この場合の刺激観察による視覚的見えの変化をまず調べる。(2)次に,トレモア,フリック,ドリフトのそれぞれを個々に遮断した場合の見えの変化を検討する。(3)さらに,トレモア,フリック,ドリフトを組み合わせて遮断した場合(組合せ数としては4パターン)の見えの変化を検討する。
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