研究課題/領域番号 |
23K03006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
川崎 勝義 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (20339526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 予期的負の対比 / 予期 / 報酬比較 / 行動抑制 / 対比 / 道具的行動 / 脳内メカニズム / 予期的対比 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトは少し後に来る大きな報酬のために、すぐにもらえる小さな報酬を我慢することができる。そのためには予期、報酬比較、行動抑制が脳の機能として必要だが、これらが脳の中のどこで、どのように行われているのかを明らかにすることが本研究の目的である。ラットの「予期的対比」現象はそのためのモデルであるが、我々はこれまでヒトのモデルとしてよりふさわしい、何かの目的のために行われる「道具的行動」と呼ばれる行動においてこの現象を確認してきた。本研究はこの行動モデルにおいて、脳の免疫組織染色、脳損傷、脳機能の一時停止などの手法を用いることで関与する脳のメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
ヒトは後の楽しみのために現在の楽しみを控えることがある。この行動には予期、報酬比較、行動抑制などの機能が関与している。ラットのAnticipatory Negative Contrast(ANC)は、後に甘い水が得られるとき、その前のあまり甘くない水の摂取が抑制される現象で、ヒトの予期的場面での行動抑制モデルと考えられる。この行動の理解のため、その脳内機序解明は重要である。しかしANCは、飲水のような行動そのものが目的である完了行動でのみ研究され、レバー押しのような目的達成手段である道具的行動では研究がないため、ヒトのモデルとしては不十分であった。完了行動と道具的行動では関与する脳内メカニズムが異なるからである。我々はこれまで道具的行動でのANC存在を明らかにし、関与する脳部位を示唆してきたが、それぞれがどのような役割を持っているのかについてまで追求してこなかった。本研究では、これを明らかにすることを目的としている。 本研究において,ANCはラットのノーズポーキング(NP)行動において確認されている。ラットは3分間の1stコンポーネント(Comp),休憩,3分間の2ndCompからなるセッションにおいて実験された。1stCompでは全てのラットが3回NPをすると1粒の報酬餌が与えられるが2nd-Compにおいて実験群では1回のNPに対して報酬餌3粒が与えられる。統制群については1st-Compと同様であった。すると実験群では1st-CompにおいてNP抑制が見られ,ANCが認められた。これが完了行動と同様のANCであるのかを確認するためにComp間の休憩時間(Comp間間隔)を5秒から180秒まで変化させてANCの強さを確認したが,完了行動によるものと同様な変化は認められなかった。また,これらの行動現象を担う脳内メカニズムを探るべく,現在脳内のc-Fos発現を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまでの研究で明らかになった現象の確認を行いながら,脳内メカニズムを検討する準備を整えることとしてきた。我々は道具的行動におけるAnticipatory Negative Contrast(ANC)の存在を明らかにしてきたが,これまでに報告されてる完了行動におけるANCの性質と異なる可能性を示していた。コンポーネント(Comp)間間隔による影響がその1つである。完了行動においては,Comp時間が長くなるにしたがってANCの行動抑制が小さくなる傾向にあったが,我々が検討した道具的行動ではこうした現象は認められず,用いたComp間間隔によって行動抑制の大きさが異なることはなかった。これが何を原因とするものなのか,またこの違いが何を意味するものかは慎重に検討する必要があるため,今回再確認したものの結果は同様であった。また脳内メカニズムを検討するため,関与する脳部位の特定のためにc-Fos発現を検討中である。これらのことは当初の計画の中に織り込み済みであり,現在のところ計画通り進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度,これまでの研究結果を再確認すると同時に,脳内メカニズムを検討する準備を進めてきた。ほぼ予定通り準備を進めることができたと考えている。今後,現在進行中のc-Fos発現の確認をよく検討し,対象となる脳部位を特定した上で,脳内特定部位の損傷実験や,機能停止実験を試みたいと考えている。 2024年度においては,特定された脳部位のうち1つに対して薬物による損傷実験を行う予定である。特定の部位に対してNMDAなど特定脳部位の神経細胞のみを損傷できる薬物を微量投与し,その後これまでと同様道具的行動におけるANCが発現するかを検討する。また,その結果によっては,ANC発現後に脳内損傷を行う実験も計画したいと考えている。 また,脳の報酬比較機能なども検討するため,ANCのみでなく,継時的対負の比効ども検討する予定である。継時的負の対比では,毎日行うセッションにおいてセッション後半(例えば11日目以降)で得られる報酬が減少する際に起こる現象で,これまでに得られた報酬と比較して現在得られている報酬が低い場合に一種の情動反応によって引き起こされる現象だと考えられる。こうした行動変化を確認しながら,対象となる脳部位の機能がどのようなものであるのかを確認していく予定である。
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