研究課題/領域番号 |
23K03016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
菅 理江 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (10342685)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 刻印付け / 記憶 / 固定化 / 初期学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は「初期学習における記憶表象の形成プロセスを解明する」ことである。より長い接触時間がもたらす学習強度の向上は何に基づくのか、中途半端に覚えている状態で同じものに晒された結果、再認が起きたうえで情報が追加(アペンド)されるのか、上書き(リライト)されるのか、行動と組織学的なアプローチを用いて検討する。臨界期をもつ初期学習の記憶の形成プロセスは言語獲得などの学習臨界期をもつ現象の解明に役立つ。発達初期の経験(発育環境)が潜在的に成熟後の行動に影響を与えるメカニズムの解明につながり、社会性の発達などヒトの豊かな育成という側面の基礎的な知見が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究の大きな目標は「初期学習における記憶表象の形成プロセスを解明する」ことであり、初期学習の学習強度によって、新しい経験が学習にどのような影響を及ぼすかをヒヨコの刻印付けを用いて検討している。学習に関連する脳の可塑性は、刻印付けの獲得と維持に必須の脳部位であるintermediate and medial mesopallium (IMM)の即初期遺伝子の発現で検討した。 今年度は刻印付けが起こることが確かめられている比較的短い暴露時間(30分)で学習を行った後、十分な固定が起きた後に新しい経験を与えた場合どのような変化をもたらすのかを検討した。刺激は3DCG動画を用い、赤い箱が回転する刺激(R)と青と黒と白の円筒が回転する刺激(B)を用意した。刺激提示以外の時間は暗い育雛器にて個体ごとに隔離された。刻印付け後24時間においては、行動としては、排他的な既知刺激への偏好が示される。IMMでの即初期遺伝子発現の検討では、記憶の固定化が終了した学習後24時間時点で、既知刺激の再提示(RR)、あるいは新規刺激の提示(RB)を行い、1日目に刻印付けの手続きを行わなかった2つの対照群、2日目に初めて刻印付け刺激を提示した群(DR)、まったく刺激提示を行わなかった群(DD)と比較した。刻印付け時早期に学習依存的に発現する即初期遺伝子c-fosのタンパク陽性細胞の数をIMMで比較すると、実験群と左右の相互作用が有意に認められた。IMMの左右の機能差は既に知られているが、学習獲得時のc-fosの発現では左右差が見られないことがわかっている。今回の実験では学習後固定化した後に新しい刺激を提示された場合は、新規に学習するケースと異なるIMMの働きがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は行動実験とサンプリングした脳の免疫組織化学を実施したが、脳組織薄切用のクライオスタットの故障と行動実験装置拡張のため輪回しを一台外しての実施だったため、予定よりはサンプル数が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、行動実験装置の拡張と自動化をすすめており、これにより行動実験のスピードは上がると考えられる。記憶の固定後の即初期遺伝子発現のパターンがわかってきたので、それに合わせた形で、固定前に新奇刺激を提示した際の変異の比較を行動と免疫組織化学的手法の両面から検討していく予定である。
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